第十七話 あああああ

先日の取材でお世話になったダニーから軍を通して正式な抗議文と緊急要請が来た。


「殿下が煽ったせいでヒュエロが血迷い皇室擁護どころではない邪悪な思想に汚染されてしまった。殿下閣下には責任を取られたし」


プリンセッサーで安定したんかな。

セントラルプリンセッサーうにット

宙に浮かぶホログラマブルインターフェースで原稿を見る。


”姫の涙に真実を見た。少女のサクリファイスに、我々は浅ましく薄汚い正義の所業を死者に捧ぐことになるだろう”


ゲッ


男子高校生か!?

前々世で高校んときカレシ血迷わせてヤクザの事務所タワマンに突撃させた事件を思い出した。


それはともかくサクリファイスてなんやねん。


前々世でダンナが見てたアニメかなんかでたしか・・・


「この私がッ!・・・たかが少女一人の犠牲に救われるだと?!バカな!!ウッキーwwww」


て発狂しておさる状態になってしまった謎シーンがあって、そのセリフの”犠牲”て部分にアテられてたっけ。


うー、ギセイつってもあたしのあの言葉なんて自己犠牲にアヘアヘ酔っぱらいまくって股間をこすり上げながら絶叫してるようなもんじゃん。苦痛をすこしても快楽方向へコンバートするための自己催眠・・・催淫?作用はあるかもしんないけど「実はあたくし、全人類の為に犠牲になってるんですのよ?www」なんて自己中妄想、サイコパスくらいしかようせん(出題難度:関西語検定六級)わマジで。


「えーと、あなたのヒュエロは先天的な共感性欠落障害の恐れがありますので社会復帰にはあなたのたゆまぬアイが・・・」


ダニーにはあたしの人生の幕引きを任せてんだから一応の礼儀だけは尽くしとかんとな。





それから二日と数時間後、傷は跡形もなく消えてリハビリは体と脳の繋がりをテストするだけ、という数秒で終わりあたしは原隊に復帰した。


「ハマミ、聞いたぞ」


ブリーフィングに向かう途中、ルフィと合流し再会のキスも短く問い詰められた。


「どれだけ心配してくれたのかは、今夜ベッドで教えて」


そう詰問を遮り、いつのまにか並んで歩いてたジュリアンと三人で大部屋に入る。


「遅いぞ。座れ」


マシュー大尉?!憧れのキミじゃんラッキーwww

なんか視線に熱を感じる・・・あたしの魅力に気づいたのかな?


敬礼し席へと急ぐ。

なんか男や女からの視線が暑苦しい。お祭りでもあんのか。

せかされるように各々空席へと収まる。


「よし、先日盗まれたリーゼ二機の奪還及び民間人犯人の捕縛、エンリカ脱走兵の処刑、あるいは引き渡し要求作戦をこれより開始する」


は?エンリカが??

ウソでしょ?!あたしのおっぱいが・・・・・


時系列ごとに事変の悉くが箇条書き・・・読み上げられてゆく。


はぁ~、あたしが襲われてる時同時に襲撃があったのね。

失神したあたしが発見された時間みると、肛門から掻き出した内臓をじっくり刻みながらメディアに映像をうpるくらいの時間は充分あったくさい。


おしりがキュッとなった。


「作戦は交渉から入る。戦艦ダグザ、ヌアザ二艦により戦力比で圧倒しつつ使者を派遣、これはハマミ中尉にやってもらう。バショク大佐の親書を敵艦隊司令ブルーレットへ手渡しせよ」


えー病み上がりなのにぃ


「ハッ」


ブルーレット置くだけ、とか思い出し笑い暴発で交渉失敗しても知らんぞ。


敵艦隊は巡洋艦1、リーゼ1小隊プラス奪取されたレグナ・ツァイ二機程度の寡兵ということだ。


コッチは戦艦2にリーゼ二個中隊30機なんだからもうスパーンと消し飛ばしちゃえばいいのにあ~~~くそダルい。レグナなんてたかが新型の宇宙戦闘機がそんな大事なんかね・・・メンツだけで戦争やるってか。


それとも私怨でもあんのかな?


そう思いついた途端親書の中身が気になって俄然やる気が出てくる。


「ジュリアン、バルフィンド両中尉には接敵臨界域にて待機、敵の動向とハマミ中尉の如何にて交渉の結果を判断、決裂を確認後は指定の指示書を開封し書かれた命令を遂行せよ」


「ハッ」


「質問があります」


ルフィの物言い。心配が嬉しい。


「後にせよ」


「使者が危険すぎやしませんか」


マシュー大尉が譲るぽい。ルフィ声でかいからな~


「それほどの危険はない」


「相手はテロ屋に裏切者ですぜ、ハマミ中尉が危険すぎる」


思わず見上げ、合わせた視線に庇護の温かみを感じる。

おもわず口が綻び、心配無用と片目を瞑る。


マシュー大尉が置物だったちょび髭少佐に視線を送る。


「ブルーレットは皇室・・・旧連邦軍の帝室顧問を務めていたこともある。皇室尊崇の念にはことかかんよ。そうであるな、ハマミ中尉」


知らねーよ。なんの顧問だっつーの。牛舎か?


「名は始めて聞きますが、皇と帝で室がわやくちゃしてたとき連邦や諸軍閥に顧問や相談役が大量発生したと聞いたことがあります」


「あてになんのか」


「心配しないで」


ウェットなおノロ気シーンに冷やかしの口笛があがる。


「弛緩を引き締めよ、これは実戦である。作戦開始は16時間後、作戦名は《ハマミとゆかいな仲間たち》だ。解散」


グダる。


「おい」「ちょっとまってて」


迫るルフィをキスで遮り、憧れのキミへ向かう。


「マシュー大尉殿~♪」


「中尉か、何か」


「いいんですか?あたし、向こうであっさり殺されちゃうかもですよ?姉君のカタキは・・・」


嘲弄の言葉も尻すぼみに、マシュー大尉の瞳に吸い込まれる。

初めて出会った時からの、燃えるような敵意と凍るような軽蔑の色は皆目消え失せて、深く澄み切ったとび色の瞳には唯々おちょくろうと稚気のはにかみをみせたあたしが映っていた。


美男子だけに、神性すら感じて引き込まれてしまう。


「すまなかった」


「えっ」


ちょび髭にうながされ、マシュー大尉が去ってゆく。







え?何??・・・・・・死ぬの???(誰が??????




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