第23話 目覚めたアルベルトと老婆のキス

 掘り出したアルベルトを、野営地へ持って帰って、水スキルの守護獣ビーストに洗ってもらう。

 生きていたので、イオに回復スキルを使ってもらった。


「効いてないのか?」

「スキルは効いてるにゃ!ただ何度もかけないと起きないにゃ」

「レオさん、イオさん。あれ?セリスちゃんは?」

「セリスは一度、魔術師本部へ戻るそうだ」

「あんなに小さいのに、すごいですね。

 それより晩ご飯が出来ましたよ」

「やったにゃー!」


 白いネコミミをピンッと立てて、イオはあっという間に、ご飯を食べに走っていった。

 王国の兵糧ひょうろうと騎馬族の持ち寄った食べ物が並ぶ。


「ご飯美味しいにゃ!今日はラカータの味にゃ!」

「イオ、味の違いが分かるのか」


 俺はそこまでグルメではない。

 辛いとか甘いの違いは分かるが、スパイスの細かな違いは分からなかった。


「コアから出てきたヤツだが、ここでは面倒を見きれない」


 俺のそばに来た、ストレの首領が言った。


「南の森に行くといい。あそこは薬作りの名人がいる」

「王国で買う薬には劣るが、無いよりはマシだ」

「遠すぎて、俺たちが手に入れるのは、めったにないけどな。

 騎馬族の商人たちが仕入れてきたりする」


 ハリブの首領が言った。


「確かに、ラカータとハリブは南の森から一番遠いですね」

「だからジゼルが、各村をおとずれるようになったのは、とてもありがたいんだ」


 なるほど、と俺は納得する。


「でも、南の森は遠いからなぁ」


 俺が悩んでいると、突然まぶしい光がさした。


「はーい!セリスの出番ですね〜!」


 バーンと登場したセリス。

 やっぱり魔術師は変だ、という村人の声はセリスには聞こえなかった。



 翌朝、戦いの後始末を首領たちにまかせて、転移魔法で南の森の入り口までやってきた。

 薄暗くてジメジメとした森は深くて、うっかり迷い込むとあっという間に、出られなくなるような場所だった。


「魔術師でもここには入らないよ」


 セリスが怖がりながら教えてくれた。

 ジゼルが迎えてくれた。


「ジーウェイくんのお手紙で、許可は取れていますの。

 私のお師匠さまのところへ、案内しますわ」


 イプラの村は、木の上に騎馬族のテントがはられていた。


「どうなってるんだ」

「日当たりが悪いので、上にお家をつくるんですの」

「場所でだいふ違うんだなぁ」


 キョロキョロと見まわす俺に、ジゼルが照れたように笑った。


「レオくん、二人きりだとデートみたいですわね」

「あたしらもいるんだけど」


 リーベラとフェイジュンが、ジトっとした目でジゼルをみる。


「私もいるわよ!」


 セリスが手をあげる。


「イオもいるにゃ!」


 アルベルトを運びながら、イオも主張した。


「ここですわ」


 ある木の前でジゼルは止まった。


「ヒマリア、お師匠さまに来ました、と伝えて」


 ジゼルの肩にいた、カナリアの守護獣ビーストが羽ばたく。

 すぐに縄ばしごが降ろされた。


「これをのぼるのか?」

「そうですわ。久しぶりだと、腕がパンパンになりますの」

「えええ、私はムリ。魔術師だから、体力無いよ!」

「高いところはちょっと……」


 セリスとフェイジュンがためらった。


「何でもできるフェイジュンが、意外だなぁ」

「馬より高いところにのぼらないので……」


 フェイジュンには下で待ってもらって、俺たちは縄ばしごをのぼった。


「よう来たね。こっちにおすわり」


 ジゼルの師匠に、アルベルトを診てもらった。


「だいぶ、良くなってるよ。さすが神獣さまのお力だ」


 老婆はうんうんとうなずいた。

 その後、すごくクサい薬を自分の口にふくみ、アルベルトに口移しで飲ませた。

 俺は見ていて吐きそうだった。


「ばあさんとキスとか、気持ち悪い……」

「いつ見ても強烈ですわ」


 リーベラも吐きそうだ。

 ジゼルは苦笑いしていた。

 俺とリーベラが口元おさえていると……。


「オェェェ!」


 アルベルトはすぐに目を覚ました。

 しばらくして、混乱しているアルベルトから話を聞く。

 やってきたイプラの首領が、俺に言った。


「タウロケに治癒に効く温泉がある。

 治癒ついでに、腹を割って話してこい」


 滝のように上から流れる温泉は、岩場を掘った大きな穴に溜まっていた。


「意外に浅いな」


 座るとアバラあたりまでの深さだ。

 じんわりと体をほぐすような気持ちよさがある。


「レオ、変わったな」


 アルベルトがぽつりと言った。


「そうか?」

「お前は、もっと弱虫だったのに、すごくたくましくなった」

「俺はお前の下につくだろうな。……一生の屈辱だ」


 アルベルトは悔しそうだ。だが、どこかスッキリしている。


「王国を潰すぞ。あいつらが俺にやったことを、ぜんぶやり返してやる。

 王も父上もみんな殺してやる」


 アルベルトの目は本気だった。


「殺すのはどうなんだろう……俺は王国のスキル至上主義を破壊したい」


 俺の言葉を、アルベルトは鼻で笑った。


「きれいごとを言うな。皆殺しにして、ようやくスタート地点だ」

「炎スキルの名家は、みんな残酷ざんこくだな」

「お前ら水スキルの名家が、真面目すぎるだけだろう」

「なんだと?」

「やるのか?」


 そのまま俺らはつかみ合ってケンカした。

 まるで守護獣ビーストを得るまえに戻ったみたいでなつかしかった。


 ◆◆◆

 王国へ向かいます。

 読んでいただきありがとうございました。 


 続きが気になる!イオは食いしん坊!?と思われましたら、

 ↓★評価とフォローをお願いします!↓

https://kakuyomu.jp/works/16817139556723122966/reviews


 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る