第2話 夏野菜カレー

 仕事が終わった帰り道、住宅街を歩いていたらカレーのにおいがした。今夜はカレーにしよう。そのにおいを嗅いだ瞬間にそう決めた。カレーのにおいを嗅ぐともう口の中はカレーのことでいっぱいなのだ。

 ラーメンや甘いものもそうだけど、なんでこう一度思いついたらそれを食べるまで食べたい気持ちが収まらないんだろう。なんて考えながら家のカギを開ける。


「ただいま」


 誰もいないけれどなんとなく習慣で言ってしまう。荷物を置いたら手を洗って冷蔵庫の中を確認する。豚こま、玉ねぎ、にんじん以外にもなす、かぼちゃ、ピーマンがあった。そうだ、今夜は夏野菜カレーにしよう。

 夏野菜カレーは好きだ。特にかぼちゃが入ったものが最高。かぼちゃがとけてドロドロになった、ちょっと独特な甘さがあるカレーがまたいいのだ。

 そうと決まれば早速作っちゃおう。すでに研いであったお米を炊飯器にいれてスイッチを押す。これでよし。エプロンをして包丁とまな板をだして準備は完了。


「サラダも作ろうかな」


 カレーだけではさみしいからサラダも作ることに。レタスときゅうり、カニカマを冷蔵庫からだす。冷凍庫から冷凍コーンを出して水の入ったさらに入れて解凍してざるで水を切る。

 レタスは小さくちぎり、きゅうりは斜め切りにして洗う。深いお皿にレタス、きゅうり、コーンと手で割いたカニカマをサラダに盛り付けたら完成だ。ラップをかけて一度冷蔵庫へ入れる。


「さて、カレーを作りますか」


 夏のカレーは気を付けなければならない。夏のカレーはウェルシュ菌が繁殖しやすいため、大量には作らずでなるべく一度で食べきらなくてはならない。食べきれない場合は小分けに保存する必要がある。ウェルシュ菌は熱に強いため、加熱したからといって安心はできないのだ。そのためなるべく食べきれる量を作ろう。


 玉ねぎをくし切り、にんじんはいちょう切り、なすは乱切りにしてピーマンは四方に切り、かぼちゃはぶつ切りにする。ちょっと大きめの鍋に油をしいて火をつける。温まったところで豚こまを入れて炒めていく。色が変わったところで野菜を全部いれて軽く火をとおす。

 軽く火をとおしたら鍋に水とローリエをいれて沸騰するまで待つ。沸騰して灰汁がでてきたら灰汁をお玉で取り出す。この作業がまた暑くて嫌になる。灰汁をとったら野菜に火がとおるまで待つ。


「そろそろいいかな?」


 にんじんをお玉で取り出して菜箸で火がとおっているか確かめる。うん、いい感じ。ローリエを取り出し、一度火を止めてカレールーを入れる。かき混ぜてルーが溶けたら再度火をつけて弱火で煮込む。スパイシーないい香りがキッチンに広がる。

 ピーッと炊飯器がご飯が炊けたことを知らせてくれたので、煮込むのやめて皿を出す。皿の半分にご飯を盛り、反対に夏野菜カレーを盛り付ける。そして最初に作ったサラダもだして夕飯の完成だ。ちょっとだけ残ったカレーは小さめのタッパーに入れて冷房の効いた部屋で粗熱がとれるのを待つ。


「いただきます」


 まずはサラダにドレッシングをかけて食べる。きゅうりがみずみずしくて美味しい。あとカニカマが色味もいいし塩気が少しきいていて良い。そして今日のメインの夏野菜カレーを頬張る。うん、これこれ。このかぼちゃの甘さがいいんだよね。あとなすとピーマンの食感もいつものカレーと違ってまたいいんだ。

 そんなことを考えながらついがつがつ食べてしまう。そして一皿食べ終わった後、小分けにしていたカレーを盛り付けてつい食べてしまうのだった。美味しいからしかたないよね。


 しかしそんな考えで食べ過ぎたため、次の日体重計に乗って後悔するのもまたいつものことなのだ。

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