第219話 教会を覗きに行きましょう

「それでだな。ダンジョン攻略の報酬なのだが、一度に払えと言われると無理なのだ」


「そんな事ですか? どうせ一度にもらっても、そんなに使いませんから構いませんよ」


「それはそうだ。完全攻略の黒貨十枚、発見の黒貨一枚もあるからな。助かる」


「では、ギルドカードに入れておきますね。ライさんのカードに入れておけば良いですか? それとも三人で分けて入れましょうか?」


「ライのところに入れておけば良かろう。そのくらいは私のところにも入っているからな」


「「え?え?」」


 アミーが買うのはほとんど食材だけみたいですし、ずっと長く冒険者をしているみたいですから貯まったのでしょうね。そう言えば僕もあまり自分では使ってませんね。


 まあ僕の場合は領地をもらった時のために貯めておけば良いですよね。


 そしてギルドカードを返してもらい、教会はどうなったのか見に行く事にしました。


 教会の場所を聞いて大通りを進んでいると、ちょうど街の中心くらいに広場があって、そこに真っ白な壁の大きな建物がありました。


「ここが教会のようですね、誰でも中には入れるのでしょうか?」


「大扉開いてるし、大丈夫なんじゃない。入ってみるの?」


「はい。テラにも助けてもらいたいのですが」


「はぁ、見て教えれば良いの? でもライ、こないだ冒険者ギルドで捕まえたヤツらがいたでしょ? ヤツらはこれまでやって来た事を衛兵に言ってるはずよね? それなら今は衛兵の詰所に沢山捕まっているはずだけど······まあ見るだけ見てみましょうか」


「そうじゃのう。テラ様の言う通りじゃが、普通に教会の服を着た者達がおるな」


 そうなのですよね。見たところ、教会の入口には二人立ってますし、普通の人も出入りしてますね。


 僕達はまっすぐ教会ヘ進み入口を入――。


「君達、冒険者のようだがここの教会は初めてかな?」


 ん? 教会の入口に立っていた二人の内の一人が話しかけていました。


「はい。初めてですね」


「でしたら回復魔法かな、こちらの扉じゃなくて、あっちの回復をしてくれる入口に回って下さい。こちらはお祈りをする方の入口ですから」


「入口が分かれているのですか?」


「はい。ここの街はダンジョンがありますから冒険者の利用が多くて祈りを捧げる方達と、回復を求める方達と分けたのです」


「おお、それは考えましたね。じゃああっちですね、ありがとうございます」


「いえ、ですが今日は回復術士の方は少ないかも知れませんね。昨日ですが司祭様と一緒に来た衛兵が司教様を含めた方達を連れていかれたので」


 おお、衛兵さん達、頑張ったのですね。


(その様ね。まあ一応覗いて、見るだけ見ましょう)


(うん)


「そうなのですね、分かりました。いなかったら仕方がないですよね。それでは行ってきます」


 大きな扉から、十メートルは離れた場所に、こちらも二人の見張りが立っていました。


 良く見ると、二人いる向こう側に列ができていますね。


(ライ、今さらっと教会全体見てみたんだけど、まともな称号の人しかいないわよ。奴隷の魔道具嵌められてるけどね。今話しかけてきた人もそうね、犯罪者はいないし、魔道具を外しちゃっても良いんじゃない? ほら、腕輪が見えるでしょ?)


「え?」


(そうなの!? じゃあ外してしまいましょう、ぐるぐる~、ほいっと!)


 入口に立っていた合わせて四人から奴隷の魔道具を、まずは外しちゃいます。


 たぶんすぐには気が付かないかもですが、一人でも気が付けば騒ぎだしそうですし。


 中の人達からも、魔道具の魔力を見付け、外して収納していくと、回復をする側から声が聞こえてきました。


『おい! 奴隷の魔道具が消えたぞ』


『本当だわ! ってこんなゆっくり回復してたら間に合わないわ、回復魔法! ヒール!』


『スゲーぞ! 傷口がもうふさがった! どうなってんだ、今までと速さが違うぞ!?』


『当たり前だ、オラ達はわざと半分直すだけとか、血止めだけ、骨折なら少しだけくっつけるとかだけしかやるなと奴隷の魔道具で縛られてただよ! もっと救えた者達がおったはずなのに! クソっ! よし、全員見てやるだ!』


『金も大銀貨、じゃなくて銀貨で十分よ。はい。次の方来て下さい』


「ふむ。目の前にいる患者の事は、奴隷じゃなくなったと気が付いても治してくれるみたいじゃな。じゃが、立っておった者達や、最初の入口からはどんどん人が出ていくのう」


「ですね。良い人達で良かったです。んと、教会ですし、テラ――」


(また麻薬なんて無いよね? 人攫いをしてるとか?)


(大陸が違って、向こうの教会とは別のいもしない神を信仰してるから······無いとは言えないわね。任せておいて、んん神眼~、少しだけあるけど、でも個人で持つには相当多目ね。痛み止めで使っていたのかも知れないけど、一応回収しておいた方が良いわね)


(そうですね。どこにあるの? そうですね、上から見てみましょう。転移!)


 パッ


「浮遊!」


「「きゃ!ぬおっ!」」


「はぁ、驚かさないでよ。まあ見やすくなったけど」


「び、ビックリしたのじゃ」


「あっ、ごめんなさい」


 二人は驚いて、ぎゅって僕に掴まっています。驚かせてしまいましたね。


 さあ、駄目な物は回収しちゃいましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る