第203話 魔道具創造者は良い人だったのですね

「それでな、現場で必要になった魔道具をその場で作ったのが運の尽きだな、その晩に上手く作業が進んだ祝いだと酒を飲もうといわれ、眠り薬だと思うんだが、寝ちまった後はこの有り様だ」


「それは、長く不自由な生活だったのですね」


「本当にその通りだぜ。ところで宰相を取っ捕まえるんだろ? それなら協力するぞ、それも飛びっきりの方法がある」


 グランジさんは悪戯っ子の顔で、僕達を見てきました。


「飛びきりですか? ······あっ! もしかして、スキル『魔道具創造』で作った魔道具は消しちゃえるとか!」


 グランジさんは『え?』って顔になりましたので、正解でしょう!


「く、くそ、驚かせてやろうと思ったのによ、まあ良いか、その通りだがそれだけじゃねえんだ。おっと、女の子がいるのにこんな格好はいけねえな。見た目は前と同じにするか」


 そんな事を呟きながら、なんと、瞬く間に服が着た状態現れ、裸ん坊が綺麗な貴族服に変わりました。


「おおー! グランジさん凄いですよ!」


「驚いたわ、凄いスキルね」


「うむ。素晴らしいのじゃ」


「だろ? これでも転生者なんだぜ? って知らねえよな。まあ女神様に生産職で魔道具を作って成り上がりをしたいんだって頼み込んだんだよ」


「あっ!」


(お、思い出したわ! ママのところで土下座しながら物凄い勢いで頼み込んでた人じゃない!)


(おおー! 転生者の先輩ですね!)


(あはは······、まあ、ママのところを通ったなら悪い人ではないわ、あり得ないし)


「まあ、魔道具屋は繁盛していたんだがなぁ。で、宰相をやっつける作戦は?」


グランジさんは前のめりになって聞いてきました。


「まずは僕が魔道具を収納で回収して、一旦僕の父さんのところに転移で避難してもらおうとしていたのですが、グランジさん、もしかして、洗脳を解く魔道具はできますか?」


「なるほどな、あの子供達を救おうって事か? 任せろ、それなら可能だ。あの子達は孤児院から買われて来た子達なんだよ、······そうだな、宰相をやっつけた後は孤児院併設の魔道具屋でも開くか」


 ん~と、それはとりあえず、アマンダさんに協力してもらえれば嬉しいかな、おもちゃとか作ってもらえると良いですよね。


「おっと、後、宰相の奴持ち物は全て俺の作った魔道具だ、全部すり替えることも可能だな、それに、拘束具にもできるから逃がす心配もないぞ」


 そういって、ニヤリと笑う。くぅぅー、良いですね!


「くふふふ。ではまずは宰相さんの奴隷になっている方を正気に戻せるのですから、いつにするかですね。今、僕達はこれを王様に私にいくところだったのですよ」


 僕はカヤッツにまとめてもらった資料を収納から出して、グランジさんに見てもらいました


「これは?」


「これは宰相さん達がやっていた悪さをまとめた資料です」


「ほう、全員知ってる奴だな。こいつら以外をまともに戻すって事か? なら簡単だぞ」


「はい。でもその中にも宰相さんに命令されてやった方もいるかもしれません。なので、グランジさんの魔道具で、自分からやった方と無理矢理やらされた方に分けられますか?」


「簡単なことだな。それに、どうせなら王との謁見にみんな集まってもらわないか? 転移の魔道具だ。それを使えば?」


「くふふふ。グランジさん、やりますか?」


「くふふふ。ライ、やろうじゃないか、面白くなってきやがった! よし、俺はそろそろ戻らにゃならんな、いつもの奴隷の魔道具を作りに宰相の執務室に行った事になっているからよ」


「じゃあ僕達は、とりあえずこのままナガト男爵さんと謁見のお願いに行ってきますから、許可が出るようにできますか?」


「任せとけ、戦闘力はないが、その手の事は誰にも負けないぞ? よし、俺が全ての奴隷の魔道具を解くまでの一時いっときだが、宰相と同じでさらにライを優先で命令の権限が得られるように登録しておく。適当にメイドでも捕まえて、案内してもらえ。今は王にも入ってるからな魔道具が、くくく」


「くふふふ。それは良いですね。おっと急がないとですね、変な書類に署名されちゃう前にやっちゃいましょう」


「おう、まあそんな書類を作ったとしても、なんとでもしてやるさ、んじゃ、また後でな、転移!」


 パッ


「くくく、なんとも賑やかじゃな、ライと息もぴったりじゃ。のう、あやつにはライの領地開拓に来てもらわんか?」


「私もそれを考えていたの、あの能力は素晴らしいわ。また宰相みたいな奴に取り込まれる前に保護しないと駄目ね、しばらくはお父様の領地で、お店でも出してあげれば良いんじゃない?」


「うん。アマンダさんの、孤児院の横にでも作るのが良いかも。くふふふ。カヤッツとマリーアみたいにくっつくかもですよ♪ あっ、馬車が、止まりましたね」


「あら、それは名案ね、アマンダも、おばさんみたいな喋り方だけど、まだまだ二十七歳でしょ、それにグランジは三十歳よ、良いわねくっつけちゃいましょう」


 テラも乗り気ですね、グランジさんも仲間になりましたから、このまま一気に作戦が進む感じです。


 馬車を降りた僕達は、近くにいたメイドさんに、王様との謁見のため来た事を伝え、待合室に通されました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る