第174話 虐(しいた)げられた王様

 僕は王様が出てくる前にソファーから立ち上がり、他国と言う事もあり、立ったままで大丈夫です。


 ですが、王様は特に何も無かったのですが、一緒に入ってきた白いローブを着た二人はと言うと。


「不敬な! なぜ跪き、頭を床につけておらんのだ貴様は!」


「我らの前に出る時はそのように待てとなぜ躾ておかん! 貴様も不敬罪だ!」


「何を言っておる、この者は他国からの使者、我が国、いや、教会の法には縛られておらん。逆にお前達が他国に使者として行ったなら、そのように跪き、床に頭をつけるのか? やらんだろう?」


「ちっ、糞ジジイが」


 ええ~、王様に舌打ちするなんて、不敬罪ですよね!? それに糞ジジイがって悪口まで!?


「えっと、王様。この方達が王様に向かって舌打ちするのは不敬です。それに『糞ジジイが』と聞こえました。見ていた私は大変不快になりましたよ。教国の王様は一番偉いのですよね? 私ならすぐにこのお二人に罰を与えますが?」


「なんだと貴様は! おい! 誰かおらぬか! このガキの首をすぐにハネるのだ!」


「くくくっ、ははははっ、その通りだ。お前達はいても話のじゃまだ。出ていくか大人しく部屋の隅にでも跪いておれ。王命だ」


「貴様は! 生かしてもらっている分際で、我らに跪けと言うのか!」


「もうこんな糞ジジイの見張りなどやってられるか! 皆の者出てこい! このガキもついでに殺ってしまうのだ!」


 そこで動いたのはメイドさん一人ですからすぐにぐるぐる~、ほいっと! ちゃんとパンツとシャツは残しましたよ。そして転移!


「――? なぜ誰も飛び込んでこない! 早く来んか!」


「あっ、そうですね、先に、ぐるぐる~、ほいっと!」


 ローブを着た二人を気絶させて魔道具も収納。そして崩れ落ち、カツラも魔道具だったみたいで、無くなりハゲに、体型も魔道具で変えていたようで、がっしりした体型だったものが、ガリガリさんとぷよぷよさんへ変わった二人に奴隷の魔道具を嵌め、少し魔力を戻して起こしてあげ――。


「し、少年、これはいったいどういう事だ?」


 王様が二人を起こす前に聞いてきましたので。


「この二人は世間を騒がせている人攫いの一味ですね。僕はその方達を捕まえにここまで来ています。たぶん教皇って方が一番悪者です、それにこの二人でこのお屋敷にいた悪者は全員捕まえましたから安心して下さい」


「ライ、手紙は残っていないの? あれでほとんど分かるんだし」


「あっ、確かまだあったはずです」


 収納から手紙を出してまだ十通ほど残っていましたので、その一通を王様に渡しました。


「ふむ。拝見しよう」


 王様はその場で封を切り、手紙を取り出し読み始めました。


 その間に僕は二人を起こしておきましょう。


「起きて下さい。つんつん」


「ライ、どこで拾ってきたか分からないけど、それは何?」


「これですか? ぬふふふ。初めて倒したゴブリンさんが持っていたこん棒ですよ。あっ、ちゃんと洗って綺麗にしてありますから大丈夫です。つんつん」


「ああ、記念の品なのね、なら良いわ。そんなので戦ってたかと思って心配したじゃない」


「その頃にはウインドアローが撃てましたからね、フィーアもたぶん同じようなこん棒を記念に残していますよ?」


 くふふ。これを見せた時、凄く欲しがっていましたからね。


「んがっ!」


「ぶひっ!」


「あっ、起きましたね、命令です。僕達の言う事を聞いて、嘘は付かないで正直に喋って下さいね。後、逃げたり悪い事は禁止です」


「なぜ私は床に寝ておるのだ!? なぜそんな事を聞かねばならん! 不敬罪だ! おい! まだ来ぬのか!」


「おいお前なぜ裸なのだ? それに偽装が取れておるぞ? ······わ、私もではないか!」


「うるさい! あなた達! 無駄な口は開くな! 見苦しいから部屋の壁際で跪いて私達が良いと言うまで黙ってなさい!」


「「?!?!」」


 二人は無言で、驚いた顔をしながらノロノロと立ち上がり、素直に入口近くの壁に二人して大人しく跪きました。メイドさんは近付いてきた二人を避けるように、素早く動き、離れていきました。


「ったく。あっ、メイドさん、ごめんなさいね、あなたはこっちに来ておきなさい」


「ごめんねメイドさん。王様はまだ手紙読むのに時間かかりそうですね、お茶を頂けますか? 王様もよいしょ、は~い座って下さいね~」


「ライったら、まあ気付かず座ってくれてるから良いけど、一応王様なんだからね」


「くふふ。うん。じゃあお願いします」


 もう一人の持っていた毒は、収納しちゃってますから王様に飲ませても安心です。


 お茶を入れてもらって、一口。······あまり良いお茶じゃないかも知れませんね、香りが少ないですね。


 王様なのに、お茶もですが、着ている物も、あの二人のローブの生地とは違い、目の粗い生地を使っています。


 そして靴は······とても王様が履く靴とは思えないほどのボロです。


(ねえテラ、もっと王様っぽい服を持ってるんだけど)


(良いんじゃない? 相当しいたげられていたようだし、そうね、まずシャツは真っ白の物が良いわね、下はそうね、そこそこのおじさんだから濃いめの青ね、靴はあるの? 艶がある黒色が良いんだけど)


 僕はテラの提案を元に、王様の服を収納したと同時に着せて、後は小物ですが、とりあえず色々と机の上に、出しては入れを繰り返します。


(······おうかん······おおさまだから)


「ムルムル! 最近喋らないからどうしたのかなって思ってたよ、でもうん。そうだよね、どれが良いかな?」


(······いろいろ······がんばった······これにあう)


 ムルムルが突起を伸ばし、一つの王冠をつんつんとしました。


 それは金と、白金を使った、豪華ではあるのですが、派手ではない落ち着いた感じの王冠でした。


 他のタイや装飾品もメイドさんと協力しながら着付け終った時、王様が最後の手紙を読み終わったようです。

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