第149話 伯爵家になりました。

 服の袖が、もこもこの毛皮が付いていて、嵌めにくいじゃないですか! 仕方ありません服をパンツ残して収納!


 二人に嵌め、元のアールマティさんの横に戻りました。


「くくっ、私でも真剣に見なきゃ動きが見えませんでしたよ、素晴らしいです、流石剣聖様のご子息ライ君! 良い子だね~」


 そう言って頭を撫でてくれました。


「どうしたと言うのだ! 早くこの二人を殺ってしまえ!」


「ぐずぐずするんじゃありません! すぐに動きなさい!」


「命令です。大人しくして、逃げずに本当の事だけを喋って下さいね、そしてみんなの言う事を聞いて下さい」


「なぜそのような事を聞かねばならん! 貴様達などすぐに――」


 バラクーダ辺境伯は命令した僕を指差し、自分の手を見てしまったのですから気付きますよね。


「いかがなさっ! バ、バラクーダ辺境伯様、その格好は――何っ! 私もではないか! どうなってる!」


 タシンサ男爵もやっと気が付いたようです。そしてあまりに大声を出すものですから、部屋の外に誰か来たようです。


『辺境伯様、男爵様、声が聞こえて来ましたが、どうかなさいましたか?』


 お屋敷の兵士さんのようですね。


(今来ているのはまともな人達ね、放っておきなさい)


(うん。でも入って来そうにないね、入ってもらいましょうかね)


「命令です。兵士さん達に入ってもらって、とりあえず今回の罪を話してもらえますか?」


「なっ、そんな事をすれば――入れ! まずい、タシンサ、なんとかならんか!」


「バラクーダ辺境伯様逃げようにも体が動きません! このままでは教皇様の計画が! あっ――」


『失礼いたします』


 ふ~ん、やっぱり教皇様って言う事は教会のいえ、教国の王様が絡んでいるのですね。


(ねえライ。これってお義父様にも聞いてもらった方が良くない? ほぼ真相が分かるわよ?)


(うん。えっと、父さんの気配は······いました。ですが、王様に、お義父様方達もいますね、母さんもいますし一緒に来てもらいましょう! 転――)


(え? 王様達まで呼ぶの!? それはいくらなんでも――)


(――移! よ、呼んじゃいました!)


 パッ


「どわっ! なんだここは! ってライ! いきなり転移は危ないだろうが!」


 カチャと、父さん達の転移とほぼ同時に執務室の扉が開き、二名の兵士さんが入ってきました。


「あはは······今回の真相が分かりそうだったので、父さん達にも聞いてもらえると早いかなと」


「ふむ。バラクーダ辺境伯か、もう一人は知らんが、タシンサ男爵、と言うことか?」


「はい王様。ヒュドラ、ファイアーアント、国境砦のダンジョン、そして教国の件も絡んでいそうでしたから。初めは父さんだけと思っていたのですが、母さんも王様にお義父さん達もいたので、あっ、宰相さんもいるのは分かったのでご一緒してもらいました」


「くくっ、ライ、私まで呼ぶなんて、良いのか? 公務をしているわけではないのだが、ちょっとフィーアの様子を見に行ったついでに寄っただけだしな」


 フィーアのお義父さんはエプロンをつけたままの格好で来ちゃいました。


「はい。何てったってノスフェラトゥ公爵なのですから、ティのお義父さんのブラフマー公爵と同じですよ?」


 僕と転移で来た方達がお話ししている間、アールマティさんもですが、バラクーダ辺境伯、タシンサ男爵、部屋に入ってきた兵士さん二人はいきなりの事で止まっていましたが、アールマティさんがいち早く回復しました。


「う、嘘ウソうそ! 剣聖様でふっ!」


 うん。落ち着きましょうねアールマティさん。でふっはおかしいですよ♪


「ん? どちらかでお会いしたかな?」


「アールマティさんと言って、帝国のアフラ侯爵さんの娘さんです。父さんの事が好きだというので、奥さんにと思いまして、そうすれば弟か妹がうちに来るのでしょ?」


「ライ、ほらお義父様とお義母様が困ってるわよ、それにアールマティも真っ赤だし」


「え? でもアールマティさんは父さんの事が好きなんでしょ? だったら奥さんに、あっ、そうです、父さんの気持ちを聞いてませんでした! ごめんなさい、父さんに聞くの忘れてました」


「くくくっ。剣聖よ、今後の領地開拓と、今回の件では息子が大活躍であるし、伯爵とは思っていたが、ちょうど良いではないか、アフラ侯爵は帝国でも穏健派で我が国とも良い関係だ。しかも帝国中枢におり、発言力のある人物だ。そこと縁を結べるなら良い事だぞ?」


「あ、あ、あにょ! 痛っ」


「アールマティさん、落ち着いて、舌を噛んじゃいましたね、回復、ほいっと!」


 アールマティさんはあわてて舌を噛んでしまいましたから、回復しておきますね。


「ラ、ライ君、あ、ありがとう。け、剣聖様! ず、ずっと憧れていました! こ、この刀も同じ物を探して使っています! もし! もし良ければ私もサーバルに、サーバルを名乗らせて下さいませんか! お願いいたします!」


(やるわね、アールマティ。まっすぐ言いきったわ、これはここのみんなに気持ちは伝わったわよ)


(うん! ちゃんと伝わったよ)


「あなた。私もそろそろ仲間が必要と思っていましたし、賛成ですわ。アールマティさん。私の事はお姉さんと言ってね」


「は、はい! お姉様!」


「おい、剣聖、ここまで言わせて逃げねえよな?」


「ノスフェラトゥ公爵様」


「はぁ。田舎の領地で広いだけの所だが来てくれるか?」


「はい! よろしくお願いいたします!」


「王様。サーバル男爵に伯爵位を。この場にいる本人以外で貴族が五名おれば略式ではありますが、可能ですよ」


「ふむ。執事で子爵のお前とブラフマー公爵、他国だがノスフェラトゥ公爵、まぁ今はまだ貴族位がある。帝国のバラクーダ辺境伯にタシンサ男爵か、成立するな。よし! 記録せよ!」


「はっ」


 執事さんが胸元から紙を取り出し、ソファーのところにある机でなにか書き始めした。


 それはすぐに書き終え、バラクーダ辺境伯の前に。


「では、こちらにサインをしていただけますか?」


「なぜその様な事を! くっ、体が勝手に――」


 そして次々と、タシンサ男爵、お義父さん達がサインをして、最後に宰相さんも一番下に書き込みました。


 それを王様に渡すと。


「うむ。間違いないな。サーバル男爵」


「はっ!」


 王様が腰から鞘付きのまま剣を腰から外し、父さんは王さまの前で跪きました。


「この場この時よりサーバル男爵を改め、サーバル伯爵とする!」


「はっ! 伯爵として王国、領地の民のためこの身を捧げることを誓います」


そう言いと王様が鞘付きの剣でとんっと父さんの肩を叩きました。


「うむ。頼んだ。よって、アフラ侯爵令嬢との婚姻を認め、祝福する!」


「はっ!」


「あ、ありがとうございます」


 うんうん。良い感じにまとまりましたね。


(ライ。終わった感じになってるけど、肝心なことがまだよ)


(······あっ! そうですよ! 二人の話を聞かないとです!)

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