第131話 森の中のお屋敷

「少年。これは全冒険者ギルドに通達せねばならない。それからギルドが無い小さな村にまでも。よく届けてくれた、帝国がこんな事を、······ヒュドラとファイアーアントの騒ぎはそういう事だったのか。隙を突きバラマンディ侯爵を暗殺。ヒュドラとファイアーアントで兵力が減ったところに食料支援と言いながら高値で売り、最後は攻め入ると。そして今回のダンジョンか」


「はい。そのようですね。僕はこの後村や町に知らせながら帝都にも行かねばなりません」


「そうだな、兵が動き出せば町や村から徴収があるだろうし、人も金もな。それともう一つの教国絡みの人攫いだな」


「はい。帝都にはその事で。内緒ですが王様から手紙も預かっていますしね」


 僕は口に人差し指を当てて『しぃ~』と。


「くくっ。承知した。『内緒』だな。分かった、大陸全土の冒険者ギルドに緊急事態の報告だ、早馬を出して知らせに回るとしよう。遅くとも今月中にはこの大陸は知らせる事が出きるだろう」


「はい。よろしくお願いいたしますね。では僕は先を急ぎますね」


「ああ。気を付けてな、小さなSランク冒険者。ギルドも急がせてもらう」


 冒険者ギルドをでて帝国側の門へ向かいます。


 門についても朝の混雑は終わった後ですから並ぶ事もなく通り抜け、本格的に帝国に踏み入りました。


「じゃあ走るからテラを掴んでてねムルムル」


「お願いねムルムル! うん、準備終わり! ライ進めー!」


「おおー!」


 帝都に向かう街道を馬車より早く走り、追い抜かしていきます。


「そろそろ休まないの? パン食べながら走ってるけど」


「んぐんぐ。ぷはっ」


 ジュースでパンの残りを流し込んでお昼ごはんの終了です。


「うん。もう少ししたら森に入らないといけないからね。森の奥にたぶん村かな? 三十人くらいの反応があるんだ。そこもついでに行っておこうと思ってね」


「ふーん。なんでまたそんな森の中に。方向は?」


 テラが聞いてきましたから僕は斜め右前を指差しました。


「そっちね。んん~神眼! はぁ~、ライ残念だけど村人じゃないわね」


「え? そうなの? 知らせに行かなくても良い感じかな」


 もしかしたら冒険者達が大物を狙ってそこで野営しているのかもしれませんね。


「まあ、捕まえておくのが良いわね、そいつ達の近くには魔物もいないみたいだからぐるぐるしちゃいなさい。人攫いよ」


「そうなの! じゃあ捕まえてお屋敷かな? それとも次は中々大きな街ですからそこで引き渡しても良いのかな」


「そうね、でも人材は沢山いた方がお義父様も助かるからお屋敷ね」


「そうだね、でも捕まってる人はいないのかな?」


 もしかしたらいるかもしれないけどテラならそこも見てるから大丈夫かな。


「大丈夫よ。称号の無いやつはいないから」


 それを聞いてぐるぐるを始め、街道が下りになり、遠くに街が見えた頃、森の中の人攫い達は全員気絶してくれました。


「じゃあ人攫いに向けて転移するね、転移!」


 パッ


 転移してきたそこは、広く森が開けていて、その中央に古いですが頑丈そうな石造りで、小さいですがお屋敷があり、所々崩れている小さな木の家もありますが手直しすればまだまだ現役で使えそうな家です。


「ほとんどみんな中にいるね、見張りで外にいたのは一旦ここに集めて~、転移!」


 パッ


「パンツは残してだよね。収納!」


 外にいた者達は一旦ここに集めておいてお屋敷の中に行きましょう。開いたままの扉から入ると椅子からずり落ちて、床に寝転がる十人の方がいました。


「ほとんどここにいるわね、後は二階よ」


「うん。じゃあ収納! 転移!」


 持ち物や服は外の見張りと同じ様に収納して外に転移。そしてホールの真ん中にある階段を上って一つずつ部屋を確認していきます。


「ライ宝箱よ! って収納しておいて後で見ましょう。んん神眼~。良いわね罠は無いわ」


「テラ。先でも良いよ、まだまだ気絶からは起きないからね。ほら開けよう」


 ムルムルをいつも通り左手首に乗せ変えて、腰の高さほどある宝箱に手を添えて。


「せーの」


 カチャと開いた宝箱の中身はほとんどがお金でしたが、ポツポツと宝石も入っていました。


「うんうん。これなんかテラの髪の毛の色にそっくりで綺麗だよ」


「良い色合いね、でもそっちの水色のはムルムルと同じ色だわ」


 ぷるぷる


 しばらく宝箱で良いのがないか見たり、またムルムルの王冠用の腕輪もありましたので、ムルムルにあげるとそれまでつけていた王冠が消えてしまいました。


「ムルムル! あなた収納を覚えたのね!」


「凄いよムルムル!」


 ぷるっぷると自慢気です。


「うん。ちゃんとスキルがあるわね、前代未聞よ? スライムが収納スキルを習得するなんて。それに魔力もぐるぐるし始めてるわね」


「うん。ちょっと前から少し動いてるかなって時はあったけど今はちゃんと動いてるもの」


「流石私の騎獣よムルムル。どんどんスキルを覚えれば最強のスライムになれるわよ」


 ぷるっぷる


「くふふふ。良いね、よしこの部屋はこれで終わり、さっさと終わらせちゃおう」


 その後も五つの部屋を一つずつ見て回り、人攫い達を裸にして外に集めていきました。全員を集め終わった後、うちのお屋敷に一度戻って引き渡してから、残りの地下室なども調べることになりました。


「ライ。この部屋だけ魔法で鍵が掛かってるわね、それも相当複雑よ、普通の人はこんなの開けられないわよ」


 お屋敷の地下を調べていた時一部屋だけ鍵のかかった部屋がありました。さてさてどんなお宝があるのか楽しみです。

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