第98話 神器と神様?

「良いなぁ。プシュケ、僕にも持たせてくれない?」


「うん。凄く軽くて羽を持ってるみたいなの。はい」


「ほわぁ。凄く綺麗ですね、それでは貸してもらいまぁぁー! ちょっ、ちょっと待って、重くてプシュケ手は離さないでね! テラこれなに!」


 プシュケが手のひらの上に乗せて前に出してくれましたから、僕は両手で掬うように持とうとしたのですが、ビクともしません。


「やっぱり壊れてる訳じゃないのね、だとすれば、プシュケの先祖にそのシンディと言う人物がいた証拠ね、私が見た限り、連名の者と、その血を引く者に限定されてるし、それしか考えられないわ」


 パッ


「ん? なんや。シンディの杖が動いたから見に来たけど、ふ~ん。プシュケちゃんか、それは君が使うと良いよ、うんうん。そっくりやし。ん? なんやアイツの娘のテラちゃんやん。どないしたん?」


「はぁ、やっぱり来たか。ユタ久しぶりね。まだほっつき歩いてるって聞いたけど?」


「良いやん! ちょっと前までってかまあええやん、それより、ほいっと!」


 突然現れたお兄さんはテラと顔見知りのようです。腰には刀を二本カッコ良さげな刀です。おおー! 神器から感じる力をふむふむ凄く細やかに操作して、杖に何かしていますね。


「こんなもんかな。じゃあテラちゃん俺は帰るよ。せやけど、そっちの子は、あはは。なるほどね、ん~、良いのあったかなナビ? ありがと。はいこれはライ君が使ってね。よし! 今度こそ帰るね~んじゃ~、転移!」


 パッ


 ユタと呼ばれた方は僕に大小一本ずつの刀を手渡し転移で消えていきました。


「あんの新参神の癖にいつもふらふらと! まあ良いわ。プシュケが貰った杖はもうあなた専用になってるわよ。それもこれ以上無いくらいの付与がされてるわね。それにライの貰ったものも同じね、まったくもうーこんな凄いのばかりポンポン造って配り歩くなんて何考えてるのよ!」


「にゃんでリントまでくれたのにゃ? ネックレス風の首輪がつけられてるにゃよ?」


 本当だ。綺麗な首輪、それにも同じ魔力が内封されています。


「アイツは大の猫好きだからね。それにムルムルと私にまでご丁寧に、ライ渡した時目が向いたでしょ、その時につけられたのよムルムルなんて、数段階は階位が上がってるわよ魔石自体を操るなんて、悔しいけど私には真似できないわね」


 本当にあきれ顔でそう説明してくれました。


「まあ良いわ。全員が強くなるんだから悪くはないわね。それにムルムル、スライムの最上位を超えてるわよ。今なら生きたドラゴンだって一呑みにパクってできるかも」


「おおー! ムルムル凄いよ!」


 ぷるっぷる


「ぬふふふ。私の騎獣ですもの! じゃあこんな地下にはおさらばして、一度お屋敷に戻るんでしょ?」


「慌ただしい神様でしたが、そうだね、父さんにファイアーアントを渡して旅に戻ろう。行っくよー。転移!」


 パッ


「到着。父さんは······いるみたいだね」


 気配で父さんがいるのが分かったのですが、僕の部屋に転移して帰ってきて思い出しました。穴を開けたままで出かけたのでしたね。なんとか穴は板で蓋がされていました。


「ライ、土魔法で直せないの? これってあの時の······ライ! ヤバいわ。胡桃が!」


「え? あっー! ど、どのくらい大きくなるの! この前の! 池の横で間に合うか! 転移!」


 パッ


「もう持ってられないわ! お願いライ!」


 もう直径が十センチを超えるくらい大きくなった胡桃をぷるぷる震えながら支えているテラの頭の上からそっと取り上げ、池までは三十メートルくらいのところにポイっと落とすと、一気に根が地面に潜っていったかと思えばずんずん大きくなっていきます。


「ま、巻き込まれるわよ!」


「これは早いです! 予想以上に成長が! 転移!」


 パッ


 屋敷前まで転移で戻り、二百メートル先の胡桃を見たのですが、既に急成長が止まり、先日の御神樹様の木よりも半分くらい小さいですが、それでも大きな胡桃の木が立っていました。


「ライ坊っちゃん、また······」


 後ろから声がかけられました、カヤッツです。


「また立派な木だな。ライはこの屋敷を森にするつもりか?」


 父さんも出て来たようです。


「ごめんなさい、本当ならもっと早くに別の場所へって考えていたのですが」


「ファイアーアントの巣にもぐっていて日の光がなかったから、それで成長が止まっていたのを忘れていて。外に戻った途端に成長が始まってしまったの。本当にごめんなさい」


 テラも肩の上で頭を下げて謝っています。


 ですが父さんはなぜか唖然とした顔を、カヤッツは呆れた顔を僕達に向けています。


「へ? ファイアーアントの巣に? もぐっていただと?」


「はぁぁ、坊っちゃんまた無茶を。何百万匹いるかも分からないのですよ、お怪我はありませんか?」


「はい。全部倒しちゃったので、大丈夫です。誰も怪我はしてません」


「倒した? 全部? おい。出してみろ。それが本当なら国境警備の見直しに待って貰わねばならない」


 そう言うので、テラが耳元で『女王を出しなさい。お土産よ』と言うので、女王を出すことにしました。


「一番大きいの出しますね。ほいっと!」


「ライ大きいって何を出――!」


 ズズンと地響きをさせ女王の胴体と、その手前に頭を出して、後、頭が大きくて牙が立派なやつを数匹出しました。


「······カヤッツ。ファイアーアントの女王蟻に見えるのだが」


「ええ。私にもそう見えますね、それも特大。この大きさの半分くらいの個体が今まで発見された最大のはずです。その個体も倒せなかったはずですが」


「済まないが妻に王城へ飛んで貰わなければならんな」


 えっと、喜んでもらえると思ったのですが······。

 テラ、怒られそうだね。


(ああ! どうしましょう! 嫌われちゃうの! こんな時はどうすれば良いのか分かんないわよ!)


 ちゅ。落ち着いて、僕が説明してみるからね。


(またキスされちゃった! それもお義父さんの前で!)


「父さん、あのね駄目な事したなら謝りますごめんなさい」


 父さんとカヤッツはそろって呆れた顔をして僕達を見ながらこう言いました。


「「良い知らせだぞ良い事ですよ」」


 今度は僕と、テラが驚く番でした。



 

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