第89話 ラビリンス王国に出発ですよ

「また集団が来ますね? でも今度は兵士さん達だけみたい? でも鎧はお揃いじゃないから何だろう、もしかしてヒュドラ退治かな?」


「でもそれならおかしいわよ。この先には国境砦があるだけでしょ?」


「うん。バラマンディ侯爵様も国境砦を慰問に行った帰りだと僕は思っていたんだけど、分かれ道があってその先に街でもあるなら分かるんだけど、そんなのなかった気がしますし」


 国境砦は川を挟んでます。川の向こうはラビリンス王国······もしかして。


「テラ、神眼で鑑定してくれないかな? もしかしたらラビリンス王国から来たのかも知れません」


「え? 何で神眼って知ってるの! 内緒にしてるのに!」


「テラちゃん内緒にしてたの? この前『神眼!』って言ってたじゃない」


「言ってたにゃよ。ライの家で叫んでたにゃ」


 内緒にしてたんだ、そっか普段は『んん~』って言ってましたね、悪いこと言っちゃったかな······。


「ま、まあ良いわ。この先の集団ね、んん神眼~! 帝国の兵士だわ、盗賊に偽装中ね全部で七十六人よ、もしかしたらさっきの侯爵が狙いかもしれないわね」


 嫌われないかな······。


「だ、大丈夫よ、そんな事で嫌ったりしないから! でもこれからも他の人には内緒なんだからね! みんなもお願いね!」


「良かったぁ。ありがとうテラ、大好き! ちゅ」


「――――! にゃぁー!」


「ライは本当にテラの事が大好きね、私も大好きよ♪ ちゅ。ライにもちゅ。リントちゃんもムルムルちゃんも、ちゅちゅ♪」


「仕方にゃいにゃぁ。ちゅ~にゃ」


 みんなでちゅってした後、ぐるぐるをやり始め、魔力回復の魔道具が沢山ある気配を感じましたのでそれをこっそり収納。間違っていたら後で返さないといけませんが、今はとりあえず預かっておきましょう。


 後、百メートルほどでぶつかりますが気絶するものが出始めるのはちょうどぶつかる頃ですかね。


 そして······。


「おい貴様。この道を貴族の馬車は通ったか?」


「隊ち――頭、そんなの痛め付ければすぐに吐きますぜ」


 隊長って言いかけましたよね。


(ラ、ライ、あのね、さっき言おうとしてたんだけど、ちゅってするのはね、こ、恋人とか、ふ、夫婦でするものなの)


 だったら良いよね♪ テラは僕のお嫁さんになってくれるんでしょ? だったら問題ないですね。あっ倒れだしましたよ。


「おい! どうしたんだ何倒れて······」

「なっ! お前もか! おい気付けを持ってきて······」


「おじさん、何だか人が倒れてるようですが?」


 よし、残りの人は一度ギリギリで止めて、話を聞いてみましょう。


「なっ! 行軍が早すぎたか! あの辺り入隊間もない――何でもない! 何があったか調べろ!」


「朝に何か悪い物でも食べてしまったのでしょうか?」


 隊長さんの横にいたおじさんが、倒れた者の方に駆けて行きました。


「そんな事は貴様には関係無い。貴族が通ったか通ってないかだけを喋れ!」


「通りましたね」


「くくくっ。ならば奴らは卵を追ったヒュドラの向かう街と我々との間にいるな。よし、貴様は持っている物を全て我々に差し出しどこえなりとも去れ!」


「ん~。僕達の物を奪うと言うことですか?」


 ぐるぐる再開と、収納です!


「命があるだけありがたいと思え! さっさと――何! これは······」


 ドサッ


「盗賊で間違いないようですし、もう良いですね、ぐるぐる再開! 全部収納! 盗賊は捕まえるものなのです。サーバル男爵領の開拓を頑張ってくださいね♪」


 ドサッドサッ、次々と気絶するパンツだけのおじさん達、最後の人も倒れましたからカヤッツにお願いしに行きましょうか。


「ライ、女の人がいるから、その人は上着も着せてあげて、流石に可哀想よ」


「ん? テラがそう言うならみんなに着せちゃおうか?」


「雌だけで良いにゃよ。雄は放っておけば良いにゃ」


 とりあえず女の人には上着を着せて、お屋敷に転移しました。


「ライ坊っちゃんまたですか? ライ坊っちゃんが通った道からは盗賊がいなくなりますね、くふふ」


「本当はいない方が良いんだから。それにこの帝国の人達は、バラマンディ侯爵様を狙ってたみたいだから父さんとも相談してね」


「ほう。今度は帝国のですか、······分かりました、詰問もその辺りを入れておきますね」


「じゃあ冒険の旅に戻りますね。転移!」


 パッ


「ふむ。帝国がバラマンディ侯爵様をねぇ、確か侯爵様は近隣国の輸出入の担当でしたか、っと私が悩むべき事ではありません私は私の仕事をしなくては。よし、奴隷の魔道具を嵌めとりあえず起きるまで放置で良い! 作業にかかれ!」


はっ!はっ!



 街道に戻った僕達は、その日の夕方には国境の砦前にある小さな町に到着しました。


 明日はついにラビリンス王国です。早速明日の手続きをしてしまいます。


 朝一番に橋を渡れるようにしておかないと、物凄く沢山の方が行き来しますので、手続きの順番待ちが朝からだとお昼を回るかもしれないと言いますからね。


「はい、大丈夫ですね、明日の朝も夜明けと共に門が開きますので。早めに並ぶ事をおすすめします」


「はい。分かりました、ありがとうございます」


 通行許可証をもらい、橋を見ると門はまだ開いています。ですが向こうには宿が少ないそうで、既に満室との連絡があったそうなので今夜は渡りません。


 門前の手続き所を離れ宿を探しますが、すぐに見つかります。何てったって宿だらけで、呼び込みが沢山いますからね。


「中々良い宿みたいだね、門から目と鼻の先ですし」


んん神眼~。そうね、悪い称号持ちはこの宿にはいないわね」


 テラが小さな声で僕の耳元でささやいてくれました。


 ありがとうテラ。でも一応気配は探っておくね。


(そうね、あの時みたいになることもあるだろうから用心はしておくべきね)


 そして夜も更け、国境の小さな町が眠りにつきました。


 翌朝、心配したような事は起こらず静かな夜でした。


 まだ外は暗いのですが、階下では動き出す気配がしていますので僕達も着替えを済ませて朝ごはんをいただきました。


 朝ごはんを済ませ外に出るとパラパラと門に向かう人達がいますので僕達ももうすぐ開く門に向かいました。


 そして日が登り始め、ギギギギと音を立て門が開き橋を渡るため動き出しました。


 さあ、ラビリンス王国に乗り込みましょう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る