第77話 ゴブリン村長ふたたび?

「それじゃああの気絶した人をお屋敷に連れて行ってからゴブリン討伐へ向かいましょう♪」


「そうねライ。奴らは放っておけないしそうしましょう。プシュケもゴブリン討伐頑張るのよ」


「はい!」


 リントのギルドカードはやっぱり持ってられないので僕が収納に預かり、先ほど気絶させた人攫いを確保しに向かいました。


「おっ、登録は終わったかい?」


「はい。無事に終わりましたよ。あの、その方を家に連れていった方が良いですよね?」


「だよなあ。さっきからも何度か揺すったりはしているんだが目を冷まさねえからなあ」


「では僕が連れていってきますね。転移を使えばあっという間ですから」


「おおー! 良いじゃねえか! かの賢者様がお得意としていた魔法。羨ましいねえ。じゃあ頼めるか? 俺達ももうすぐ引き上げようと思っていたからな」


 樽から注いでいますが、もうチョロチョロしか出ないようですから、お酒も無くなりそうですね。


「ですよね。では連れていきます。今夜もお仕事頑張ってくださいね。転移!」


 パッ


「おおすげぇ! 本当に消えたぜ!」



 お屋敷の門近くに転移した僕はカヤッツに人攫いを任せギルドに戻りました。



 パッ


「うおっ! な、なんだもう戻ってきたのか! ふぃ~、転移ってのは心臓に悪いな。くははは」


 くふふふ。目を真ん丸にして驚いていますね。でも流石なのはお酒は一滴もこぼしていないところですね。


「はい。ちゃんと別の方に任せてきましたのでもう大丈夫です。では僕達はゴブリンをやっつけてきますね」


「ああ。気を付けてな、門を出て北にある森が一番狩り易いだろうな、だがあそこはそこそこデカイ村ができてた筈だからあまり奥には行くなよ」


 おお。それはゴブリン村長がいるのですね、分かりました。

 飲むのを再開しましたが、僕達の事を心配もしてくれるよいパーティーのようです。


「はい。では行ってきます」


 ギルドから出て街の門をくぐり北の森でしたので街道を北に向かいます。


「ライ、何匹倒せば良いのですかね? 五匹で一回の依頼達成と言ってたけれど」


「そうですね、結構沢山だと思いますね、僕とフィーアは薬草採取を一日一回の達成で結構な回数をこなしましたからね」


 でも、薬草採取の依頼より、討伐ですからもしかして少ない回数でランクが上がるかもしれませんし、ゴブリン村とオーク村もあれば良いのですが。


「でもライってばさっき聞いたゴブリン村をやっちゃうんでしょ? ならすぐに上がるんじゃない?」


「え? そうなの? 私にもできるかな?」


「プシュケは攻撃魔法できれば風かな、火魔法だと森を焼いてしまうかも知れないからね」


「分かりました。村の時も火は物凄く注意して使っていましたから任せて下さい! バンバン倒して二日で私もEランクに上がるのですよ!」


「リントはどうするにゃ? 風魔法にゃら撃てるにゃよ?」


「そうなんだ! なら結構余裕かもしれませんね、魔力は僕が補充しますから魔力切れの心配もありませんし、今日の内にゴブリン村をやっちゃいましょうそうしましょう♪」


「頑張りますよー!」


「やっつけるにゃー!」


 街道を一時間も進まない内に森が見えてきました。

 でも、左右にありますね······

 森を分けるように街道があり、どちらも北の森なのですが、まあ僕には関係ありませんね。ぐるぐるっと気配を探るために索敵範囲を広げていきます。


「んとありました! ありましたがこれは、両方にありますね、ゴブリンだと思う集まりが左右にありますよ」


「ちょうど良いじゃない、両方に行って倒しちゃえば、ほらほら場所が分かったなら早く行って倒せば良いのよ」


「うん。そうだね、おっと、オーク村も発見。じゃあ今日は、ゴブリン村とオーク村を潰して、明日はまた別の魔物を探しましょう!」


「「おー!おーにゃ!」」


 そして転移で最初に向かったのはオーク村です。何故なら一番数が多かったので、お昼の休憩までに終わらせる予定です。


 森の中に転移して村を覗くとやっぱりオークは崖の裂け目を使い、村を作っていましたので、その崖の上に僕達はさらに移動して崖の端まで行き地面にツノガエルのシートを敷いて下を覗き込むように寝転がります。


「ん~、あっ、プシュケにリント、あのみんなより少し大きくて、黒っぽいオークがこの村のたぶん村長だから倒すのは最後にするからね。最初に倒しちゃうとバラバラに逃げちゃうから」


「うんうん。あの黒オーク以外を倒せば良いのですね」


「任せるにゃ、バンバンそれじゃにゃいやつを倒すにゃ!」


 僕はこの村一帯のオークと魔力をぐるぐるさせて魔力をいただき、プシュケとリントにも補充していく準備を進めます。


「よし、準備は良いかな、狙うのは頭でなるべく細い魔法でやるんだよ。お腹は絶対駄目だからね、お肉が不味くなっちゃうから」


はいはいにゃ


 じゃあいきますか。そろそろ気絶するオークも出てきますから。


「うん。せーの! ウインドニードル!」


ウインドアロー!ウインドアローにゃ!


 シュパパパ


 空気を切り裂く小さな音が連続して起こり、見えない風魔法が次々とオークの頭に命中していきます。

 フラフラとその場に倒れたり、崩れ落ちていくオークを次々と収納に入れていきます。


 ですが流石は村長、仲間が倒れて消えていく事に気付いたようです。


「あはは。気付かれちゃいましたね、二人とも村の端の方から倒して下さい。そうすれば森の方を警戒して上を警戒することが無くなる筈ですから」


 二人はウインドアローを撃ちながら頷いてくれて、狙いを外側に移してくれました。

 するとオーク村長は『フゴォーグガー敵敵森森』と指差し叫びました。


 うんうん。フィーアならもう少しちゃんとオークの言葉も理解できるのですが、僕にはこれが限界かな。でも······よしよし作戦成功ですね、その後も倒れていく仲間を自分の近くに呼び寄せ、守りを固めようとしますが上から狙っていますから関係ありません。


「おっ、気絶するオークも出始めましたね。そいつらは僕が魔法を増やしてやっちゃいますからプシュケとリントは立っているヤツをやっちゃって下さい」


 二人とも頷き魔法も増やして撃ち始めました。


 そこからはあっという間に終わりが見え、最後にオーク村長はプシュケとリントのウインドアローがほぼ同時に頭を貫き、ビクンと大きく痙攣した後ゆっくりと前に倒れていきました。


「お疲れ様です。狩りに出掛けている集団もぐるぐるで気絶しましたからこっちに転させますね」


 村から出ていたオークを転移させてきたのですが、一匹また黒っぽいオークがいます。


「黒オークがこれで二匹だね」


「おかしいわね、別にまだ村があるのかしら?」


 テラがそんな事を呟いた事には僕も同意です。


「少し範囲を広げてみますね、ぐーるぐるー」


 どんどん範囲を広げてゴブリン村はもちろん、反対側の森にまで広げていくと、こちら側の森で強い気配が見つかりました。


「テラ、この方向に強い気配があるから何か見てくれない?」


「任せて、あっちね」


 肩の上でムルムルに乗り立ち上がって右手で僕の耳たぶを掴みながら僕が手をのばしている先を見ました。


んん神眼~、嘘、オークキングがいるじゃない。滅多に発生しないのに、ライゴブリンなんて後回しでも良いわ! アレは危険よ!」


「うん。オークキングは始めてです。もうぐるぐるは始めてるから大丈夫、他のオークからここに転移させるからね、プシュケ、リント、今やっつけたより多いから頑張ろう!」


「ひょえぇ。や、やってやりますよ!」


「どーんとこいにゃ! 魔力はたのむにゃよ!」


「うん、じゃあ行くよ。転移!」




 

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