第54話 お引っ越しです ③
「よし成功だ············なっ! こ、ここは!」
僕達も一緒に転移して、村の近くの木の枝に僕達。そして村の入り口前の六人。
「おい! なぜ村に戻ってるのだ!」
「まさか転移先を間違えたのか?」
「そんな······俺は確かに昨日の夜営地をイメージして目標にしたんだ······」
「なにをやってるんだ! 手ぶらで帰ってきてどうする! さっさと夜営地に戻るぞ!」
「無理だ! 魔力が足りない! あの町の近くからここまで飛んで気絶してないのは不思議だが今は良い。だが今からもう一度戻るのは魔力が足りない! 絶対無理だ!」
ぐるぐるで魔力を補充すれば出来るのにね♪ あっ、一人木が変わっている事に気がついたようです。
僕が育てた木を指差しながら少しぷるぷる震えています。
「なあ······おまえ達、俺には御神樹様が違う木になってるように見えるんだが······」
「何を馬鹿な事を言ってる! 今はそれどころ······嘘だろ」
「くふふふ。驚いていますね。この六人はあの騒動の前に村を出発したようですね」
ある程度離れていますので大きな声を出さなければ大丈夫です。
「そうね。それでどうする中の様子も見ておくなら、御神樹様に転移すれば村全体を見る事ができそうよ」
「僕は別に良いかな。プシュケは?」
「私も特別見たいとは。あっ! 私の家も持っていけますよね? それを頼めますか?」
「そうだね、プシュケの父さん母さんもサーバル男爵領に向かっていますもんね♪ よしそれなら御神樹さんの枝にお邪魔して、収納しちゃいましょう♪ 転移!」
パッ
僕は目視で確認。そして一番下の枝に転移しました。
「みんな集まってるね? あの日からずっとここにいるわけ無いはずだけどなにをしてるのかな? ひとつの家族っぽいのをを取り囲んでるみたいだけど」
「あら、赤ちゃんがいるわ」
大人の男女が二人ずつと赤ちゃんが抱っこされて舞台の上で取り囲まれています。
「囲まれているのは村長ですね。それから村長の奥さんと、息子夫婦ですから、あの子が産まれそうだった赤ちゃんみたいですね」
「ふ~ん。でもあの赤ちゃんって周りの大人より魔力が凄く多いよね? まあプシュケよりは全然少ないけれど。ねえテラはどう思う?」
「
テラは耳たぶを掴んで身を乗り出しながら下を覗き見て笑っています。
「
「あの赤ちゃんもエンシェントエルフよ。こんなに短い期間でエンシェントエルフが産まれるなんて······何か起ころうとしてるの?」
おお。プシュケと同じエンシェントエルフちゃんなんだね。
「産まれたばかりなのに可哀想ね。周りの雰囲気に怯えているわよあの子」
その様ですね。少し具合が悪そうな気がします。
「ライ。プシュケの家を収納して、気に食わないけどあの子の家族ごと連れて行きましょう。ついでにプシュケのご両親の居場所は探れる? まだ森からは出れてないと思うんだけど」
「ちょっと待ってね。家はあれだったよね、収納! そうだ、じゃあ連れてくなら村長の家は?」
「······そうですよね。赤ちゃんは可哀想ですよね······じゃあ家族はいた方が良いですから。よし、赤ちゃんのためだよね。ライ、家はあの一番大きな家です」
「ごめんね。色々気持ちは複雑だけど、赤ちゃんのためにここは我慢してあげて。収納!」
悔しそうな顔をしたプシュケをなでなでしながら村長の家を収納し、次はプシュケのご両親を探します。
下では村長の家がいきなり無くなったため騒ぎだしていますが、今はプシュケの両親が向かった方に魔力を広げ、気配を探します。
すると沢山の魔物に取り囲まれた中にいて、今にも魔力が無くなりそうな二人を見付けました。
「あわわ! これはいけません! まとめて行きますよ! 転移!」
パッ
僕達と村長家族をまとめて、二人の元に転移しました。
「あわわ! 怪我してます! 血だらけですよ! 大丈夫ですか! 全開でいきます! 回復!」
「私を庇ったの! お願い助けてあげて!」
アレスさんが奥さんのディオネさんを庇って腕に深い傷を負ったようです。
それを治すため、取り囲む魔狼達からぐるぐる魔力を集め回復させていきます。
「魔狼がこんなに。ライ、大物がいるかもしれないわよ!
「ガルムか。なら大丈夫です沢山やっつけたことありますからね。それよりアレスさん怪我は大丈夫ですか?」
「あ、ああありがとう。もう大丈夫だ」
「おい! ここはどこだ! なぜアレス達がいるのだ!」
あ、そうでした。慌てていてサーバル男爵領に行く時に連れて行く予定が、今一緒に連れてきてしまったのでしたね。
「あ~、あのですね、少し待ってもらっても良いですよね? 先に魔狼達をやっつけちゃいますから。ウインドニードル!」
取り囲む五十匹ほどの魔狼に向けてウインドニードルを浮かべます。
「いきますよ。ほいっと!」
シュッ
魔力切れ寸前の魔狼達には避けることもできず、その眉間を貫いていきます。
「それとガルムさんは~、数キロ先に集まっていますね。と言うよりガルムの方が多いですよ? 倍近く? まあぐるぐるでやっつけちゃいますから関係無いですが」
取り囲んでいた魔狼を倒し収納。
アレスさんの怪我も治りましたが少し血が出すぎたのでしょうね、まだ立ち上がる事はできなさそうです。
魔力の方は魔狼にいただいたものがあったので補充はしておきましたが、体力的に無理ですね。
「おい、ガルムの群れと聞こえたが」
村長が聞いてきた時にはもうガルム達は魔力がなくなり次々と気絶していってます。
「はい。ここにいた魔狼より沢山いますよ。よしよし全部気絶しましたね。じゃあ放っておくのもなんですから倒しちゃいましょう。転移!」
パッ
転移した先は崖があり、周りは木々も無く開けた場所でした。
「へえ。こんな場所もあるんだ。住みかにするには良さそうです。おっと見とれている場合ではないですね。よしやっつけちゃいますよ! ウインドニードル!」
シュッ
動く事もないガルムは抵抗などできないまま眉間にウインドニードルが刺さり、次の瞬間収納して消えていきます。
数は沢山でしたが、すぐに最後の一匹を倒し収納しました。
「よしよし。討伐完了ですね♪」
「まさか······長年我が村を襲いに来て倒しきれなかったガルムの群れをこうも簡単に倒すなんて······」
「村を襲ってたのですかこのガルム達は。そうですね、距離的にはそこそこ遠い気もしますが、ガルムが走れば半日もかからないでしょうね、この距離だと」
「君は何者だ? 転移を時間を置くこと無く何度も使え、風魔法も尋常でない数を撃てる。それにどちらの魔法も詠唱すらせぬまま。少なくとも私達ハイエルフにもできない事だぞ」
僕は旅に出るまで詠唱すらどんなものか知りませんでしたよ。
「あら。その昔、一番最後まで使えていたエルフの一族がそんな事も忘れてしまうほど時は流れた証拠ね。ライが使っているのは古代魔法よ」
テラは前にチラッと教えてくれた事を村長さん達に教えてあげるようです。
「古代魔法? くだらん。古い言い伝えにある発現させるまで早くて数ヶ月、駄目な奴は数年発動しない時間がかかるだけの使えん魔法の事ではないか」
「くふふふ。そうね、時間はかかるわね。そのせいで
「ぬ? エンシェントエルフ! そうだ孫とそこのプシュケもそのエンシェントエルフなのだ! ハイエルフが至高のエルフ族にとってそれ以外が、それも私の子孫で産まれるとは」
村長さんは女の人が抱く赤ちゃんを悔しそうな、辛そうな顔で見ています。
「あははははは♪ ハイエルフの上よ。上位の存在よエンシェントエルフは。ハイエルフが王様だとすると、エンシェントエルフはそれを
「「
皆同時に声をあげ驚いていますね。
「まあ。今はそれより村長さん達の事だけど村に残るの? 今の事を話したとして信じるとは思えないんだけど」
「ぐぬ。魔力の多さで信じる者は······少ないが······いや信じる者はいないか。はぁぁ、確かにその通りだ。転移の時にはすでに長老達の一声で村長を下ろされたからな。戻ってもこの子には穏やかに過ごさせてやる事はできんだろうな。そうか、プシュケ、それにアレス、ディオネ。すまなかった。私はプシュケの魔力の多さに嫉妬していたのかもしれないな」
そうして三人の方を一人ずつ見てから深く頭を下げ謝りました。
「すまなかった」
「村長······」
「ライ、こんな感じで良いんじゃないの?」
「そうだね。じゃあ皆さん。今後住んでもらう場所に行こうと思いますので、そこではエルフ、ハイエルフ、エンシェントエルフに上下は付けずに平等でお願いしますね。良いですか?」
村長家族にプシュケ家族。みんなが顔を見合わせた後、首を縦に振りなんとかなるようです。
そして、サーバル男爵領に転移しました。
そしてそこで待っていたものは······。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます