第42話 あるぅ~ひぃ~♪ 森の中ぁ~♪

 腰高の草が両脇に生い茂る獣道、大人二人がギリギリ並んで通れるくらい少し広くなった小道を進んで行きます、たぶん開拓村の人達も何かを取りに来ることがあるのでしょうね。


 そして森の中は木漏れ日が差して森の外より涼しくて良い感じです。


「そうだ、テラ、何か用事があるって言ってたよね? それって森の中でしょ?」


「そうよ♪ だいぶ前に栄養をあげた木の様子を見たいの♪ その子も団栗の木みたいに沢山栄養を欲しがる子だったから大きいわよ♪」


「へえ~♪ それは楽しみだね♪ どんな実があるんだろ、食べれると良いよね~♪」


「ん~、どうかしら? あの時は確かリンゴみたいな果実を乗せてた記憶があるからもしかしたら食べれるかもね。何個か貰えるように私がお願いしてあげるわ! ムルムルの分も貰うから心配しないでね♪」


 座ってるテラが、ポムポムとムルムルを優しく叩き、ムルムルは、ぷるぷる震えています。


「あはは♪ ムルムルも嬉しそうだね。ん? 魔物がいる、······それに、人の気配も! テラ! 走るからこっちへ!」


「うん! ムルムル! ライの手のひらに移動よ!」


 ぷるぷる!


 手のひらを上に向けた所へムルムルが、みにょ~んと伸びてテラごと移動して来たのを胸に引き寄せ、走る速度を上げます。


 小道からはずれ、鬱蒼うっそうとした草をかき分けていましたが邪魔で仕方がありません、木の枝に飛び上がり枝から枝に飛び移りながら、現場に急ぎます。


「見えた!」


「ライ! ヤバいわよ! 早く倒しなさい!」


「ウインドニードル! いっけぇー!」


 沢山のウインドニードルを浮かべた瞬間に、オークに向けて発射!


 シュパパパパパッ!


「いやぁー!」


 あちこち服が剥ぎ取られながらも逃げ惑っている女の子に、ガバッと両手を広げながら覆い被さろうとしていたオーク達の眉間にウインドニードルが突き刺さり、後頭部へ抜けて行きました。


 それを残りのオークにも一匹一発ずつ撃ち込み、オーク達はビクンッと痙攣けいれんした後その場に崩れ、動かなくなりました。


「ライ! まだまだ集まってきているわよ! 大丈夫なの!」


「うん! 任せて、収納! そして土魔法!」


 十匹ほどいたオークを収納し、女の子の足元から土魔法で太い柱を作り持ち上げ、僕も女の子の横に木の枝から飛び乗りました。


「大丈夫だよ。動かないでじっとしててね。まだまだオークが集まってきているから」


「ひっ、ひゃい!はいっ! うぎょきましぇん!動きません!


 足元が持ち上がった拍子にしゃがみこんでしまった女の子は僕の足にしがみつき、ガタガタ震えていました。


 ムルムルとテラを肩に戻して、女の子の頭をナデナデしながら、集まってくるオーク用に、ウインドニードルを大量に浮かべながら、広範囲の魔力をぐるぐるさせていきます。


 僕が作ったこの柱にたどり着く前に動きが鈍り、そこに向けてニードルを発射して行きます。


 森の奥から次々とこちらに向かって走って来ます。


「ライ! あの一番奥ってオークキングよ! 気を付けて! 手前にジェネラルと回復魔法を使うヒーラーもいるわ!」


 テラは少し止まって、何かを考えているようです。


「あれ? そんなのライのぐるぐる使えば特殊スキルがあっても魔力が乱されて発動しない?」


「う~ん。今集まってきているオーク達はもうぐるぐるしているから、まともに魔力を使えないから、魔法もスキルもたぶん使えないと思うよ?」


 ウインドニードルを放ち、倒れたら収納を繰り返しています。


「それに、打ち止めかな? だんだん奥から出てくるオークがいなくなってきたしね。オークの王様は最後にして、一気にやっちゃいますね~、ほいっと!」


 ウインドニードルを、オークの頭の高さに作り、一気に放ちました。


 シュパパパパパッ!


「からの~、収納!」


「ねえライ、オークキングが、「え?」って顔してるわよ······」


 キョロキョロまわりを見渡すオークキングは、いきなりまわりの仲間が倒れ、倒れたと思った次の瞬間に消えてしまった訳ですからビックリするでしょうね♪


「あはは♪ ちょっといじわるだったね♪ ウインドニードル!」


 次の瞬間、眉間を撃ち抜き、オークキングは収納されました。


「よし♪ ムルムルのごはんはもうしばらく狩らなくても十分かもね♪」


「あはは♪ 今の何匹いたと思ってるの、ムルムルでも流石に食べきるまで何年もかかるでしょうね♪ それよりその子の事はどうするの?」


「ん? どうするって? ねえ君、そう言えば何でこんな森の中に? 迷子?」


「い、いえ、迷子違います。この森のエルフの村から追い出されちゃったの、だから外の町に行こうとしていたのだけど、もうちょっとの所でオークに見つかっちゃったのです」


「おお~♪ エルフなんだ♪ 耳が長いからもしかしたらって思ってたんだ♪ うんうん綺麗なお顔もイメージ通りですよ♪ あっ! これは、魔物に襲われる女の人を助けるテンプレなんじゃ!」


 で、公爵令嬢は盗賊の時にティで、達成したのですから、王女様かも!


「て、てんぷれ? よく分かりませんが、助けてくれてありがとうございます」


「ねえ、なぜエンシェントエルフのあなたが村をおいだされるわけ? 普通ならエルフの王になって当たり前の種族よ?」


 おお! もしかして女王様なの!


「えんしぇ? よく分からないですが、私の村はハイエルフの村なので、私だけみんなとは違うのです」


 村なら違いますね、ああ! また駄目な癖が、今はそれよりうつむき加減になり、僕の足に額を押し付けながら話を続けるようとしてるこの子の事を考える時間です。


「なんでも数千年に一度あるか無いかの突然変異のようで、十歳の洗礼の儀式で、私だけがハイエルフじゃないと分かり、いじめが始まりました」


 鼻をすすり、それでも話を続けます。


「みんなとは違っても父さんと母さんがギリギリまで庇ってくれてたの。でも私、外の世界を見てみたくて」


 顔を上げ、見詰めてきます。


「父さんと母さんを説得して出て来たのにオークの群れに見付かって」


「なによそれ! バカじゃないの! エンシェントエルフはその辺のエルフやハイエルフなんかより魔力も素質も何もかも優れているのよ! ライ! この子私の弟子にするわよ!」


「うん♪ 僕もそう思ってた♪ いっぱい凄くなって見返してやれば良いんだよ♪ そうです。僕はライリール、ライって呼んでね♪」


「私はテラよ! そして私の騎獣ムルムルよ!」


 ぷるぷる♪


「ふへ、わ、私はプシュケ、ライ、テラ、ムルムル、よ、よろしくお願いします」


 プシュケは綺麗な金髪を後ろで一つに縛ってとんがり長耳がピコピコ動いています本当に肌も白くて大きく青い目がキラキラ綺麗ですね。


 何だかんだで、ちょうどお昼になったので、足元の柱を消して、地面に降り立ち、服はパンツ以外無事なところが無いのに、怪我がなくて良かったのですが、テラが怒るので、おっぱいが見えたままのプシュケに僕の服を着てもらいました。


「服ありがとう♪ 着替えが入ったリュックも無くしちゃったからお金もないから買えないし、今は裸ん坊でも寒くないから良いけど、どうしようかって思ってた♪」


「はぁぁ、プシュケも、ティやフィーアと一緒ね、ムルムル、私達がライとこの子をまともな大人に育てましょうね」


 ぷるぷる!




 小道に戻り、お茶用に火をおこしてお湯を沸かします。


 献立は、オークの燻製を少し焚き火であぶり、僕が形を作ったパンに挟んでサンドイッチにしました。


 そして、お昼ごはんを食べながらプシュケにも、早速ぐるぐるを教えます。


 まだ魔法などは教わっていなかったので、やり方だけを教え、暇があればやるんだよって言っておきました。


 ムルムルも、「これがお手本!」って感じで魔石を回しています。


 それが前みたいにぐるんぐるんと回すのではなくて、ちゃんと魔力が回り始めています。


 テラは、それを見て、うんうん頷きながらポムポムとムルムルを優しく叩いています。


 プシュケは始めたばかりなので、動くわけありませんが、でもそれだけでは旅がしにくいので、短剣と手槍を持って貰うことにしました。


「うんうん、似合ってるよ、着た感じキツいとか緩いところは無いかな?」


 プシュケは色々体を動かしてたしかめているようで、曲げたり捻ったりしています。


「はい♪ ちょうど良い感じです! 確か冒険者と言うのですよね? ずっと昔に冒険者が、村に来たことがあるらしく、伝わっていた格好がこんな感じって言ってました」


「うん、冒険者だよ。少し先になるけど、町に寄ったときに登録して、パーティーを組もうね」


「はい♪ よろしくお願いします!」


 こうして、テラ、ムルムルに続き、新しい仲間と旅をする事になりました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る