第17話 生存報告

 受け付けをしてくれた方は、この宿のご主人だった様で、お客様に食堂へ戻って貰い、僕達は、コンメルさん、ご主人さん達二人に経緯いきさつを話しました。


「では、テラさんは植物に力を与えて旅をしていて、偶々たまたま今日テーブルに飾ってあった花に力を与えたら、こうなったと?」


 ご主人さんは木を見上げながら、つぶやく様に聞いてきました。


「そうなの、普通ならここまで大きくはならないのだけど、この子は元気が良すぎてね、本当にごめんなさいね」


 テラは僕の手のひらの上でペコペコ謝っています。


「ご主人、これは好機ですな、一夜にして育った木があるお宿として、看板になりますな、あっははははっ♪ これはそうです、私は行く先々で、喋ってしまうでしょうな、いや~羨ましい、客が後を絶つことが無いでしょうな♪ あははははは♪」


「あっ! そ、そうか、コンメルさん、沢山の場所で喋りたくなる様に口の滑りを良くしませんとね、確か良い酒がありますね、あははははは♪」


 コンメルさんのお陰九割、残りの一割を僕達とテラも一緒に謝って事なきを得ました。


 その後いただいた食事は大変美味しく、メインは鹿のシチューそれはもう美味しく完食しました。


 そして今は、皆でお風呂に入っています、テラの講習会が湯船の中で、始まり始まり~です。


「良く聞いてね、二人共、男性と女性はお互い裸を見たり見せたりは、しちゃ駄目なの、そうね、見せても見ちゃっても良いのは、同性、夫婦とか恋人同士だけよ、特に女性は簡単に裸を見せちゃ駄目なの、分かった!」


(まあまあ、そうなのですわね、だとすれば、ライにしか見せてませんので、問題ありませんわね、うふふふ)


「でも、家ではメイドさん達が一緒に入ってきてたよ、兄さん達もフィーアも皆が一緒に」


 泳いだりしたよね、またやりたいなぁ~♪


「あっ、私は女性としか入って無かったです、ライが初めてですね、私とは違って、おまたにぴょこんっと付いていたのでビックリしました」


「僕は見せっこしたりしたから女の子がどんなのか知ってたよ、それに僕が兄さん達に勝てたんだよこれ、メイドさんも大きい方ですと言ってました、えへへへ」


 立ち上がり、ぷるんぷるんと回してあげる。


 一緒にお湯をぐるぐるさせて、ムルムルとムルムルに乗ったテラを、ウォータースライダーさせてあげる。


「まあ! スゴいですわ!」


「ひゃっほ~い♪ じゃなくて! ライお湯は良いけどそこをぐるぐるするのは止めなさい! ティも、そんなに顔を近付けないの! はぁぁ、どう言えば分かってくれるのかなぁ~、この子達に教える自信が音を立てて崩れて行ったわ、ムルムル、出ましょうか······」


 ぷるぷる


 二人だけになった後も、お風呂からは楽しそうな声が響いていました。


『すご~い♪ ぷにぷにですよ♪ あっ! 少し硬くなりました♪ 面白いですね♪』


『でしょ~♪ それにこの先っちょが······』


「ねえムルムル、私は教えたわよね、なのに、もうお手上げよ、結婚でもなんでもして貰うしかないわね、寝ましょう」


 ぷるぷる



 お風呂から上がると、テラはムルムルベッドで大の字で寝ています。


「あはは、待たせてしまったみたいだね、ハンカチのお布団をかけて上げよう」



 そして僕達も眠りにつきました。







「あふぁぁぁ、朝ですね、ムルムルが枕にされてますね、ティ、ムルムルが潰れていますよ、くふふふ」


「あはぁふぅ、おはようございます、あらムルムルさんがほっぺに、うふふふ」


 うつ伏せに寝ていたティが起き上がると、ほっぺに付いたままのムルムルが、ぷるぷるポヨンと元の丸い形に戻りました。


「あら、テラ師匠はライの胸の上に寝てますね、


 視線をティから胸に移すと、大の字に僕の胸の上で寝てました。


「あははは、じゃあ、起きて出発しようか」


「は~い♪ テラ師匠、朝御飯食べて出発ですよ♪」


 もそもそと起き出し、僕のパジャマでヨダレを拭きつつ手櫛で髪の毛を整えたテラ、まあ、良いですけどね。


「おはよ♪ 今日も元気に行きましょう!」


 何食わぬ顔で、そんな事を、あははは。


「よし着替えて、朝ごはんからだ!」


「「分かりましたわ♪早くしなさいよ♪」」


 着替え終え、食堂へ。


 朝ごはんは、猪肉のベーコンと腸詰、ふわふわ玉子に、サラダでした。


 テラはサラダの小さなトマトを頭に乗せ、むむむ~、とすると、枝葉が伸び沢山のトマトが鈴なりに······ご主人に引き取って貰いました、オマケでオークも二匹提供してきました。


 今夜の夕ごはんはオークステーキになる事でしょう。


 今夜の夜営地は、僕の人攫いにあった場所を越え峠の山頂の予定で進みます。


「もうすぐ山頂の夜営地に着くよ」


「思ったより早く着きますわね、馬さん後少し頑張って下さいね」


 軽快に進み、まだまだ明るい時間に到着しました。


「ここですね私が人攫いにあった場所ですわ、流石にもう、兵達はいらっしゃらないですわね」


 辺りを見渡してみても、まだまだ早い時間に着いたため僕達以外は誰もいない、馬車を進め広場の端の方に場所を決め、馬さん達を馬車から外し、水や飼い葉を与えてブラッシングしました。


 すると、林の中から騎士の鎧を着て兜まで被り、剣を仕舞いながら出て来ました。


「ん? なっ! お嬢様! お嬢様ご無事でしたか! 怪我などはありませぬか!」


 騎士さんが僕達がブラッシングしているところに凄い勢いで、駆け寄ってきてティにだろうね、呼び掛けています。


「あら、ステファニーではないですか、貴女は残っていましたのね、私はこの通り怪我などはしていませんわ、このライに助けていただきましたの」


 おお! ティの護衛をしていた人なんだね、これはキチンと挨拶をしておかないとですね。


「初めまして、サーバル男爵家三男、ライリール・ドライ・サーバルと申します、ライとお呼び下さい」


「剣聖様の御子息様! は、初めまして、ステファニーと申します、シャクティお嬢様の侍女兼護衛をしております、この度はお嬢様を助けていただき誠にありがとうございました」


 兜を脱ぎ、ふぁさっっと金色のストレートヘアが武骨な鎧に降り注ぎ、戦乙女ヴァルキリーの様な印象に変わりました。


「ステファニー、貴女だけが残っていますの?」


「はい、この場は私だけでありますね、他の者は、隊の隊長は公爵様に報告を上げ、王都方面や、隣国方面に散り、公爵領からは応援のため、各街道を虱潰しにお嬢様を探しに出ております」


 そんなに沢山、でも公爵令嬢だものね、当たり前かもしれません。


「もしかしたら、すれ違っていたのかもね」


「そうですわね、ステファニー、皆に連絡は出来ますか? 無事を知らせておきたいのですが」


「はい、すぐに魔道具にて公爵様に連絡を入れたいと思うのですが、あのですね、魔力が、食事をするために狩りに出たのですが上手く行かず、魔力だけが消費されまして今使うと気絶をしてしまいます、あはは」


 あはは、狩りのため森に入っていたのですね。


「僕が、魔力を流しましょうか、喋るのはステファニーさんがやっていただければ大丈夫ですよね?」


「は、はい、助かります、ではこれを持ち私の方へ向けてお願いいたします」


 魔道具を預かり、ステファニーさんに向けて魔力を込め始めました。


「はい、お願いしますね」


『誰だ! シャクティが見つかったのか!』


「はっ! ステファニーであります、シャクティお嬢様を保護してくださった方と今ここにいらっしゃいます、怪我もなく、元気なご様子、今お声を頂きます! お嬢様、お願いいたします」


「お父様、シャクティですわ、ご心配をお掛けしてごめんなさい、私はライ、サーバル男爵家のライリール様に助けられ、今そちらに帰る途中ですわよ」


『おお! シャクティ! 良かったぁぁ~! それにサーバル男爵家だと! 剣聖殿の息子か! ライリール殿だな、でかした! ステファニー、その者も一緒にこちらに案内を! 今いるのは峠の山頂だろう、すぐに早馬を出す、明日の朝には到着するはずだ! それまでの護衛を頼んだぞ! ひゃっほ~い♪』


 あははは、楽しそうなお方ですね。


「うふふふ、お父様ったら」


「あはは、いつものお元気が出たようで安心しました」


 その後まだ魔力を流したままだったのですが。


『サーバル男爵へ連絡を! お礼を言わねばならん! 出向くか?』


『あなた、それだとご迷惑になりますわよ、まだお呼びになった方がサーバル男爵様のご負担になりませんわ』


『うむうむ、そうしよう♪ 奴には助けて貰ってばかりだったからな、ここらで恩も返したい、今回助けてくれたのは三男と申しておったな、ん~、婿』


 そこで、向こう側が、魔道具を切り替えた様です。


 貴族同士、仲が良かったようですし、もしかしたら、お父さんと会えるかも知れませんね。


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