第42話 「難攻不落の八神城」

お久しぶりです!

新しい小説、

【異世界出身の魔導士は、夢がない】

を新たに描き始めましたので、良ければそちらもよろしくお願いします!


こっちも変わらず連載は続けます!


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「はぁー……はぁ〜あ…」


「2回もため息つくなよ。 なんか俺が原因みたいで凹むだろ」


桃井と映画を見にいってから日が経ち、今日は金曜日の放課後だ。


あれからも桃井は毎日八神にアプローチをしかけた。

だが、全て撃沈。

八神と一緒に帰る事すら出来ずにいた。


失敗続きという事もあり、桃井提案で急遽作戦会議を行う事になり、前回と同じカフェに来たのだが…


来た瞬間に桃井が溜め息を吐き、今に至る。


「だって…はぁ…」


「一回溜め息禁止な」


「……だって、流石に凹みます…」


桃井はかなり参っているらしく、俯きながら話す。


「一緒に帰ってくれないし…連絡先貰おうとしてもはぐらかされるし…如月先輩とは楽しそうに話すし…」


八神は、露骨に桃井から遠ざかろうとしているのだ。

常に笑顔ではあるのだが、線引きをしているのか、桃井がその線を越える事を許さないのだ。


「私…そんなに魅力ないですかね…」


「…お前に問題があるってよりかは、八神の方に問題があると思うぞ」


「八神先輩の方に…?」


「だって考えてみろよ。 あんなイケメンで、いろんな女子からアプローチもされてるのに、彼女居ないんだぞ?

絶対に何か訳ありだろ」


「んー…確かに」


「もし仮に八神が超絶ピュアで、女子と話すのが苦手なんだとしたら話は別だけどな」


「でも八神先輩、女の子が喜ぶ事サラッとやりますし…」


「じゃあ、何か訳ありなんだろう」


「訳ありって…?」


「知らん」


「むぅ…」


桃井は頬を膨らませ、アイスコーヒーを飲んだ。


「なんかここまで露骨に拒絶されると、流石に凹んじゃいます…」


「らしくないな。 お前今までしつこいくらいアプローチしまくってただろ。

しつこいくらいに」


「2回しつこいって言わないで下さい」


「そんなしつこいお前でも、弱音吐くんだな」


「…だって、脈ないですし…」


「ないな」


「うっ…ハッキリ言いますね…」


「最初から分かってた事だろ? いくらお前が他の女子より容姿が優れてても、八神は靡かないって」


「…確かに、柊さんにも靡いてないですしね…」


数多の女子にアプローチされても、決して靡かない。まさに八神は難攻不落の城だ。


「もしかして八神先輩ってホ…」


「辞めろそれはない。 ないと願いたい」


「確かに…」


「…あ、でも八神、唯一親しい女はいるんだよな」


俺が言うと、桃井は目を見開いた。


「え!? 誰!誰ですか!?」


「神崎って言う同じクラスメイト。 アイツとは距離近いな。 休日に2人でゲーセン行くくらいには」


「神崎さん…? あ、もしかしてあの性格キツそうな人ですか!?」


「そうそう」


桃井は様々な女子のデータを持っている。

その中に神崎も入っていたのだろう。


「…神崎さんがそんなに距離が近かったなんて…」


「だからまずは、神崎とお前で何が違うのかってのを考えた方がいいんじゃないか?」


その方が少しは気が紛れるだろう。


そう言うと、桃井は笑顔になった。


「はい! この土日で考えてみますね! 先輩、今日はありがとうございました!」


「気にすんな」


そう言って、俺は桃井と別れた。


帰り道、柊に『桃井とは別れたが、買いたい物があるから少し遅れる』


と連絡し、俺はDVDショップへ入った。


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「おかえりなさい如月くん。 桃井さんはどうでしたか?」


「かなり凹んでた」


「やっぱり…如月くんの話でしか知りませんが、八神さんは手強そうですね」


「そうだな」


そんな会話をしながら、リビングへ向かう。

今日の夕飯は焼き魚らしい。


魚の香ばしい匂いが食欲をそそる。


「そういえば、お買い物ってなんだったんですか?」


「あぁ。 お前この前映画見た事ないって言ってたろ」


俺は、DVDショップで買ってきた、母さんが大好きなめっちゃ怖いホラー映画のDVDを、柊に見せた。


柊はそのパッケージを見た瞬間、怯えた表情をした。


「き、如月くん…これは…?」


「母さんオススメのホラー映画だ」


「ほ、ほらーえいが…」


「嫌なら違うのにするが、どうする?」


一応、万人受けしそうな冒険物の映画も買ってきている。


だが、柊は覚悟を決めたような顔になる。


「こ、こっち…見ます…! 」


「…本当に大丈夫か? 父さんはこれ見て30分でリタイアしたぞ」


「だ、大丈夫です…! きっと…!」


「分かった。 なら風呂上がりに見るか」


「は、はい」


柊は、終始ソワソワしながら、夕飯を食べ始めた。


俺が初めてこれを見たのは小6で、その時は号泣したという事は、言わないでおこう。

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