一緒にいていいの

目が覚めて、洗面所を使わせてもらった。


冷蔵庫を見つめながら、何とか朝御飯が出来そうな気がしていた。


崎谷さんが、起きてきてしまった。


「座って」


火を止めて、ダイニングテーブルに座った。


美陸君もやってきた。


「昨日、何があったか教えてくれない?」


私は、首を横に振った。


「お願いだよ。知りたいんだ」


真剣な眼差しを向けられた、私は嘘がつけなくて、全部話してしまった。


「酷いよ!そんなの」


美陸君が、私を抱き締めてくれる。


涙がポロポロ止まらない。


「りーちゃん、仕事辞めて一緒に逃げよう」


「そんなの悪いです。お二人の邪魔できません」


その言葉に、崎谷さんが私の手を握りしめた。


「俺達、三人で過ごさないか?俺と美陸は、りーちゃんと一緒にいたいんだ。彼氏にはなれない、でもそれでよくないか?」


「そんなに優しくされたら、甘えてしまうから」


「甘えていいんだよ!僕もりーちゃんの傍にいたいよ。出来ない事沢山ある。だけど、こうやって抱き締めてあげられる。それだけじゃ駄目かな?キスとかその先もなかったら駄目かな?」


「ううん」


私は、首を横に振った。


「それなら、みんなで逃げようよ!新しい場所に行って生きようよ」


「そうしたいです」


私は、ボロボロ泣きながらそう言った。


「じゃあ、そうしよう!朝御飯食べて、仕事を辞めよう」


そう言って、崎谷さんは笑ってくれた。


私は、朝御飯を取りに行った。


「いただきます」


三人で、食べる。


本当に、三人で暮らせるの?


本当に、私もいれてくれるの?


そう思いながら、ご飯を食べ終わった。


「りーちゃんは、どこに住みたい?」


「わからない」


「行きたい場所、言っていいんだよ!」


「この映画の場所…。」


「これ、知ってる!」


「どれ?」


「ここ、海が綺麗だよね」


「これって、誰だったっけ!でも、俳優さんはしってるよ!吉宮凛と鴨池はやてだ!」


「正解!りーちゃん、この場所に行きたいの?」


「うん、小さな田舎町で撮影したって聞いたから…。海が綺麗だった。」


「ロケ地、調べてみたら?美陸」


「うん」


美陸君は、ロケ地を調べてくれていた。


「関西方面だね」


「海が綺麗な場所だな」


「行ってみる?駄目なら、また引っ越せばいいんだし!」


「美陸、仕事は?」


「今日、辞めるって伝えてくるよ!かずくんは?」


「せっかくの休みなのにな!俺もそうするよ!りーちゃんは?」


「私も、そうします。休みなので、事務所に直接行きます。」


「大人が三人も当日に辞めますなんて言ったら怒られるな!」


「そうだろうね」


私達は、笑いながら用意をして家を出た。


崎谷さんは、堂々と私を複合施設に連れてきた。


「じゃあ、またね」


「はい」


私は、社長に辞めたい事を連絡した。


「葉月さん、事務所にきて」


「わかりました。」


そう言われて、電話を切った。


私は、事務所にやってきていた。


「辞めるなら、手続きこれね」


「はい」


何一つ、私は怒られなかった。


期待されてないんだ。


「すみませんでした。」


「クレーム多かったからさ!こっち的に助かったわ」


「そうですか…。」


「荷物は、大事なものあるならとって帰ってよ!ないなら、こっちで処分するし。」


たいした事ない、メモやボールぺンや指定された制服だ。


「ないので、お願いします。」


「じゃあ、来月お給料振り込むので!お疲れさま」


「お世話になりました。」


私は、頭を下げて事務所を後にした。


期待されていないうえに、お荷物だった。


クレームがきていただけの存在だった。


何それ…。


私は、事務所をあとにした。


暫く、歩きながら帰る。


「悲しい顔するなよ」


「崎谷さん」


「また、名字?かずでいいって!」


「どうして、ここに?」


「掃除の人に場所聞いたから」


そう言って、笑ってくれた。


「休みにわざわざ辞めるって言いにきたのに怒られませんでした。」


「いいじゃん。俺なんか凄い怒られたよ!」


「期待されてるからじゃないですか…。私は、期待されていないから…。」


「りーちゃん、お疲れ様」


崎谷さんは、私を抱き締めてくれた。


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