しょうもない言葉
はぁー。
うまかった。
昼飯が、幸せだと午後からの仕事のモチベーションあがるわ。
りーちゃんと出会って、あんなうまい飯食えて、俺は幸せものだ。
「崎谷、ちょっといいか」
「なに?」
「あのさ、掃除のブーとそんな関係なの?」
今井は、誇らしげにスマホの写真を見せてきた。
さっき、自販機で話してた時のやつだった。
「だったら、なんだよ。今井に関係あんのかよ」
「別に、ないよ。ただ、崎谷。デブ専だったんだなーって思って」
「人を見かけで判断するのやめろよ。仮にも、俺達40前の大人だろ?」
「だからなに?偉そうに説教する気?自分が、カッコいいからってブーと付き合って株あげてんの?」
「意味がわからない。そんな話なら、俺、仕事に戻るから」
今井は、俺の腕を掴んだ。
「崎谷のせいで、ブーが、いじめられるって考えた方がいいぞ」
そう言われて、俺の胸はざわついた。
俺のせいで、彼女がいじめられるって考えた事なかった。
はあー。駄目だ、駄目だ。
今日は、早く終わらせよう。
俺は、なるべく早く仕事を終わらせた。
誰にも会いたくなくて、急いで車に乗った。
車で、りーちゃんの家の下にやってきた。
プルルル
『はい』
「ついたよー。今日は、早く終わったから」
『行けません』
「体調悪い?今日、滑ったから痛めたとか?腰痛いって言ってたよね?マッサージしてあげようか。これでも、
『いらないです。』
「そんな事言わないでよ。せっかく仲良くなれたと思ったのに…」
『もう暫く会えないです。ちょうど、三連休だったのでよかったです。』
「どうして、そんな風に言うの?」
葉月さんが、泣いてるのがわかった。
『ごめんなさい。私…。これ以上過ごしたら、崎谷さんに迷惑かけます。』
「迷惑なんてかかってないよ」
あっ!俺は、今井の言葉を思い出した。
俺が、関わることで葉月さんがいじめられるって事なのか…。
「俺が関わるの迷惑だよね。ごめんね。考えなしに近づいて。だけど、楽しかったんだよ。葉月さんが作るご飯も美味しいし。一緒に食べるのも楽しかった。ごめんね。」
葉月さんが、泣いてるのがわかった。
「やっぱり、部屋に行っちゃ駄目かな?俺、葉月さんを幸せにしてあげたい。」
『私も楽しかったです。お二人と過ごす時間。幸せな時間をありがとうございました。』
プー、プー
電話が切れてしまった。
俺は、その場にしゃがみこんだ。
彼女の顔を見て、嫌だと言われたいと思った。
俺の人生を否定しなかった彼女の人生を幸せなものにしてあげたかった。
ブー
(408です。)
葉月さんから、メッセージが届いて俺は、彼女の家に行ってしまった。
ピンポーン
ガチャ…。
「ごめん。来てしまって、ごめん。」
「崎谷さんが悪いわけじゃありませんよ」
「振り出しに戻ったね」
「これを、渡そうと思いまして」
葉月さんは、タッパーを渡してくれる。
「晩御飯に、ぶり大根作りました。どうぞ、美陸君と食べて下さい。」
そう言われて、葉月さんの顔を見た。
「頬なんでそんな赤いの?」
「風邪気味だから、早く帰って下さい。」
家に入ろうとする葉月さんの腕を掴んでしまった。
「イタっ」
葉月さんが、そう言って手を離した。
「葉月さん」
「お茶いれますよ」
そう言って、葉月さんは家にあげてくれた。
「お邪魔します。」
俺は、リビングのすみにある仏壇に手を合わしにいった。
葉月さんは、お茶をいれてくれた。
「腕、見せてくれない?」
「えっ?」
葉月さんの長袖の腕を捲った。
「これ、誰かに掴まれたの?」
「あの…。何とか撃退したので、大丈夫です。」
葉月さんは、そう言った。
「撃退?」
「折り畳みの杖持っていたのと、防犯ブザーで助かりました。」
「りーちゃん、誰かに襲われそうになったの?この頬も…。」
真っ赤に頬が腫れてる。
「足が、歩けなくならなくてよかったです。」
そう言って、笑う。
頬に
「俺のせいだよね?」
葉月さんは、目を合わせずに首を横にふった。
「関係ないです。」
「何もされなかった?本当に」
「大丈夫です。かずさんが、気にする事ではありませんから」
「本当に、大丈夫だった?」
「大丈夫って言ってるじゃないですか」
葉月さんが、震えている。
「今日は、俺の家に行こう。用意して」
「嫌です。」
「お願い、心配だから」
俺の言葉に、葉月さんは渋々用意をしてくれている。
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