7 Early Skirmish.

We are Nobody's

「よーうこそいらっしゃいました‼ 地球最後の楽園、イルミナス・ラストベガスアリーナコロシアムへ‼ 皆さま、アリーナコロシアムへのご参加は初めてでいらっしゃいますか?」

「あぁ、初めてだ。誰でも参加できるって聞いてやって来たんだが」

「んなるほど! ただ、失礼を承知で申し上げますと、当施設はアリーナコロシアムという特性上、怪我や死亡事故等を含む恐れがありまして、適正CDINを提示できない方へのご案内を遠慮させていただいております。皆様、なにかご自身のCDINを証明できる物をお持ちではありませんか?」

「残念ながら、今まで計測する機会が無くてね。提示できなければ俺たちは門前払いなのかい?」

「いえいえ、そのようなことはございません! CDINをご提示できない方にはアリーナ協会で運営されているイルミナス内の小規模な会場にてエントリー戦へ参加していただき、そこで測定された数値を元に、その後条件に見合ったアリーナへご案内させていただくシステムとなっております!」

「なるほど。ちなみに、‟セントラルタワー”への最低参加基準はいくつになっているんだ?」

「セントラルタワー内のアリーナでは、下からコートヤード、マンダレイ、シーザーパレス、ベラージオの四階級に分かれておりまして、最も参加しやすいのは目標CDIN八十のコートヤードとなっています!」

「そいつは良い、八十程度なら楽勝だ」

「それでは、三名様ともエントリー戦へご参加されるということでよろしいでしょうか?」

「私はリベレーターのライセンスを持っていますが、これで良いですか?」

「リベレーター用のライセンスでしたらCDINが登録されていますので問題ございません」

「では、これを」

「はーい、お預かりしまーす」


 そう言ってシャロが一枚のカードキーを手渡すと、受付嬢はそれをカードリーダーに差し込んで、手慣れた手つきでキーボードを叩く。


「シャーロット・チョークス様。えっ、Bクラスリベレーター……? VSOP規定CDIN、数値が……え、えぇ⁉ あ、あの……あのあの⁉」

「私はアリーナへの参加経験はありませんが、エントリー戦に参加する必要はありますか?」

「し、CDIN百以上を提示できる方には自動的に本戦アリーナへご招待することができ、エントリー戦は免除とさせていただきます……。と言うより、チョークス様にはベラージオ以外の全ての階級にお通しすることも可能ですが……」

「おや、ベラージオへ参加できる数値ではなかったようですね」

「い、いえ‼ とんでもございません‼ ただ、ベラージオ級へはイルミナスのアリーナコロシアムで一定の成果を出した闘技者か、別のアリーナで‟クラスマスター”に匹敵する経歴をお持ちの方のみにお通しできる特別な階級でして、決してチョークス様のCDINが足りないということでは……」

「安心して下さい、今回はベラージオに参加することが目的ではありませんでしたから」

「……あの、もしよろしければ、私の方から上層部に掛け合って、特例措置を取らせていただきたいと思いますが……」

「お構いなく。今回はこの二人の成績に合わせた階級に参加させてもらうつもりですので」

「……失礼ですが、そちらのお二人とのご関係は?」

「人数合わせの為に用意したただの行きりですわ。イルミナスでは三人の勝ち抜き戦方式だと聞いていましたので、その数合わせにと」

「そ、そうですか……。コホン! 失礼しました! それでは、そちらのお二方にも身分を証明できる物の提示をお願いします!」

「免許証で良いかな?」

「わ、私は住民登録ライセンスを」

「お預かりしまーす。ダレン・・・バレット・・・・様と、しずく雨衣咲ういさき様ですね。それでは先程お話した通り、お二人のアリーナ参加記録は確認されませんでしたので、これよりCDIN測定を兼ねたエントリー戦に参加していただきます!」

「すぐに試合に出たいんだが、できるかな?」

「直近の試合ですと……一時間後の試合となりますが、いかがでしょうか?」

「そいつは早くて助かる。早速組んでくれ」

「分かりました! それではE-6会場にて二十一時三十分開始のエントリー戦に、ダレン・バレット様と雫雨衣咲様のお二人でエントリーさせていただきます! ちなみに、チーム名はお決まりですか?」

「チーム名?」

「はい。本戦出場の際、チーム名をコールさせていただくことになります! ただ今回はエントリー戦ですので、もしもお決まりでなければすぐに必要というものでもありませんが」

「チーム名、ね……。どうする?」

「では、私の愛するロックバンドから、Qeenクィーンということで」

「待て、そんな大それた名前を高々に呼ばれる資格なんて俺たちには無い。会場からブーイングの嵐を受けるのがオチだぞ」

「ならば、ディープパー――」

「却下だ!」

「そうやって文句ばかり言って……。それでは雫さん、なにか案はありますか?」

「えっ、私……? そう、ですね……それじゃあ、サンダー&ファイヤー&レインズ、というのはどうですか?」

「…………、Mr.ミスターダレン、貴方が決めて下さい」

「あぁ、それが良さそうだ」

「えぇ⁉ な、なんで⁉」

「なら、そうだな……。俺たちはどこの誰とも知れない奴らの寄せ集め。なら、そんな俺たちにピッタリの名前を思いついたよ」

「どんな名前ですか?」

Nobody’sノーバディーズ。誰でも無い奴らだ」

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