16.ならばあっちだ!
「これは一体どういうことだ‼ 何がどうしてこうなった⁉」
「どうしたんです、ルーク様?」
「どうしたもこうしたもないよエマ! エリナだよ。最近様子がおかしくないか? 今日だって夕飯を一口食べただけで『まずい』とか言って自分の部屋に戻っちゃったんだ。いつもならエマの料理がどんなにまずくても嫌な顔一つしないで食べ切るのに」
「……た、確かに最近らしくありませんよね。でも、それほど気になさらなくてもいいんじゃないんですか? 一時期的な反抗期だと思いますよ。それと私の料理がまずいんじゃなくて、ルーク様の単なる好き嫌いだと思います!」
「一時期的ならいいさ、でもこれがあと五年も続いたら最悪な事になる。クランベル家は終わりだ」
「そんな大袈裟な。(私の料理についても触れろや!)」
「仕方ない。守りはやめだ。こちらから打って出てやる」
「ん? (またよくわからない事を……)」
「エマ、この女の子を探してほしい。歳はエリナと同じ十歳だ」
俺はそう言って、ヒロインであるリーシャ・ワトソンの名前と外見の特徴を書いた紙をエマに渡した。
「リーシャ……ワトソン……、この女の子が一体なんだっていうんです?」
「ラスボスだ」
「らすぼす?」
「近い将来、エリナの人生に大きく関わってくる。そしてクランベル家の最大の敵となるだろう」
「本当に大袈裟な……(それに意味わかんない……)」
「大袈裟ならそれでいいさ。だけど、そうじゃなかった時の為にやれることは今の内にやっておきたいんだ。頼んだよ」
「は、はぁ……」
気の抜けた返事をすると、エマは部屋を出て行った。
そのあと俺は、
「リーシャ・ワトソン。いや、暫定ヒロインよ。この世界がお前の望む展開になると思うなよ。この世界の真のヒロインはエリナ・クランベルだ‼」
と、窓から夜空に向かって吠えた。
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