待ち合わせに何故か遅れる、橘川さん
篤永ぎゃ丸
集合場所・新宿駅
『もしもし、駅に着いたとこなんだけど、どこにいるのー?』
〜♪ ——まもなく 一番線に 湘南新宿ライン東海道線直通——特別快速小田原行きが参ります——危ないですから、黄色い線までお下がりください——この列車は 四つドア 十五両です——
『待ち合わせ場所……新宿駅って言っても——初めて降りるし、どこ行けばいいか分からないよ。とりあえず南口改札に向かってるとこなんだ。そこで、合流でいいかな?』
ピロリンピロリーン ピロリンピロリーン——新宿——新宿——。ご乗車 ありがとうございます——
『——探すの面倒臭いって? あのね、クラスTシャツの申込用紙はそっちが持ってて、私が代金預かってるんだよ? 一緒に行かなきゃダメでしょ!』
〜♪ ——はい、発車しまーす。次の電車のご利用をお願いしまぁす。ドア閉めまーす。お身体、お荷物強くお引きくださぁい。駆け込み乗車はおやめくださぁい。
『今、階段降りてる所だから……うっわあ、人多過ぎだよ……待ってよ、電話切らないでッ! メッセージだと、どこ行けばいいか余計分からなくなっちゃうからあ!』
エスカレーターは 駆け上がったり 駆け降りたりしないで下さい ご昇降の際は 足元にご注意下ガタン、ゴトン……ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトンガタンゴトン!
『ああもう、電車の音でなぁんも聞こえないよ! 待ってね、待ってね……ちょーッと待ってね。あっ! あれだ、南口改札!』
ピ——ン ポ——ン ピ——ン ピッ ピッ ポ——ン……ピピッ ピンポオォンッ! チャージして下さい
『うっそ、残高足りてない⁉︎ ごめんチャージしてこないと。ここだよね、南口改札って……いいから、絶対にそこから動かないでね! お互い迷子になったら嫌だよ!』
——チャージ金額を入れて下さい——————チャージ金額を入れて下さい——————チャージ金額を入れて下さい——
『ああもう、分かったから待ってよ、うるさい精算機なんだからッ!』
——ただいま 処理中です————カードを動かさないで下さい ピローン ——チャージが完了しました——ありがとうございました 自動改札機をお通り下さい——
『ごめんね、今すぐに向かうから!』
————ピ——ン ポ——ン ピ——ン ポ——ン ——ピピッ!
『おまたせ! 今、改札出たよ! そっちの私服とか知らないから、手振ってみてよ!』
————ピ——ン ポ——ン ピ——ン ポ——ン——
『えー……っとぉ。多分電話から聞こえてくる音的に、同じ改札なんだろうけど……見つからないや……え。私の服の特徴?』
————ピ——ン ポ——ン ピ——ン ポ——ン——
『えへへ〜。今日の私は、張り切っておしゃれしてきたんだぁ。え? 浮かれてなんかないしッ、都会に溶け込めるようにコーデしただけだしッ!』
————ピ——ン ポ——ン ピ——ン ポ——ン——
『胸元のリボンが特徴の、真っ白なトップスと——ピンクのフレアスカートを着てみたの、見つけやすいと思うけどなー……女子なんて、みんな同じに見える? はぁ……相変わらず、なーんも分かってない……ッ!』
ママー、早くでんしゃ乗りたいよぉ〜 きっぷさん、わたしにもたせて! もーたーせーて!
『んー……男子の私服の方が、どれも同じに見えるんだけど……。ちょっと右手を高く上げてみてよ。そのまま手を振り続けてね!』
マーマーッ! きっぷさんちょーだい! きっぷさんちょーうーだーいッ! はやく、はーやーくーッ!
『うーん……人混みで全然見えない……。ねぇ、分かりやすくする為にさ、私の言う通りに手を動かしてみてよ! はい、グーパー、グーパー……あッ! 見つけたかも! そのまま腕曲げてチョキ出したまま腕振って!』
ママー、あのひとなんで、一人でジャンケンしてるのかなあー?
こらッゆーちゃん、指ささないのッ ほら、こっち来なさいッ!
『……クッ、アハハハ! ちょっと待って、子供の声が電話越しに聞こえてくるんだけど! 超恥ずかしいやつじゃん!』
マーマ、なんでジャンケンしてるの? ねぇ、なーんーでー!
ほらッ! きっぷさんあげるから、早く来なさいッ! す、すみません……ほら。ゆーちゃん、お兄ちゃんの邪魔しちゃダメなの!
「ブフ……ッ笑ってごめんね、私の為に真剣にやってくれてるっぽいの、面白くて——」
————ピ——ン ポ——ン ピ——ン ポ——ン——
『今、身振り手振りして貰ったけど、見つけられなかった。アハハ、怒らないでよぅ。しょうがないじゃん、こんなに人いるんだもん!』
————ピ——ン……ポ——ン……ピ——ン…… ポ——ン……——
『ねぇ、このままお互い探すのも大変だしさ。合流する場所、別にしない? どっかのカフェとかゲーセンの前とかさ』
ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ……
『さっきから柱にいるっていったって、どれの事言ってるか分かんないってば! 駅構内のカフェでいいじゃんって? すっごい行列だったし、人混み嫌だし、駅から離れたい! 私はもう、横断歩道渡っちゃったよ!』
ブロロ……ッブウゥウウウウン——ッ!
『うん。……うん、そうだよね、ごめんね。待たせちゃったの私だし、カフェで合流したらチョコレートフラペチーノ代くらいは出すよ!』
プップ——でさぁ——今日……いつも——はい、はい——マジ——けど〜——アハハ——ちょ——ブオォオォ——待たせ——カシャッ——
『えー? 女子に奢らされる訳にはいかないって——そんな事、気にしなくていいのに〜。ここは、私の面子立てるのに協力してよぅ〜」
キィイッ——あの……——お疲——プァーッン——キャハハ——駅は——はい、そうで——次どこい——ブロロ……あっちじゃ——おはよ——もしもし——おう——
『そういえばさ。クラスで私の事、
ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——
『どうせなら、
ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよぴよ——ぴよ ぴよ……
『ねぇ——合流するまで、このまま通話してようよ。……そっちが嫌だったら……いいけどさ』
ブロロ……ッブウゥウウウウン——ッ!
『……うん。え……本当? いいの⁉︎ だって一人で歩いてるだけじゃ寂しいから、すっごい嬉しい! さっきメッセージに地図と写真送ったけど、そのカフェに着くまで、色々おしゃべ——』
ピロンッ……!
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