朝御飯

結局、いっぱい泣いて俊君は寝てしまった。


「終わったよ」


優生は、布団を片付けてくれた。


「連れてくか」


「うん」


優生は、床にひいたカーペットの上に俊君を寝かせた。


私達は、また川の字で眠った。


.

.

.

.

.


「理名、大好きだよ」


私は、その声に目を開けた。


10歳の男の子に、頭を撫でられていた。


「おはよう、理名」


「おはよう」


「おめでとうって、言ってくれる?」


「おめでとう」


よくわからなかった。


「理名、僕ね。誕生日なんだ」


「えっ?!ええー」


「うるさいぞ、理名」


「ごめん。俊君が、今日誕生日なんだって」


「えっ?それは、起きなきゃいけないな」


優生は、起き上がった。


私も、ゆっくり起き上がった。


「俊君、誕生日のお祝いしようか?」


「おっちゃん、やってくれんの?」


「当たり前だ。その前に、洗濯回してくるわ」


時計を見ると、8時を回ったところだった。


おっちゃんってのに、笑いそうになった。


「理名、どうした?」


「優生は、おっちゃんで私は、呼び捨てか」


チョップを軽くした。


「ごめん。理名さん」


「いいよ、別に。洗顔しにいくけど、行く?」


「うん」


私は、洗面所に向かった。


私は、顔を洗ってうがいをした。


俊君も、同じようにしていた。


「優生さん、ごめんなさい」


布団を浴室乾燥機で、干してる優生に俊君が謝った。


「おっちゃんやめたのか?別にいいよ。気にしてない。誰だってやるよ。小さい頃は」


「あ、ありがとう。」


俊君は、照れていた。


私は、キッチンに行って朝御飯の支度をする。


いつも、子供だからって、どこかしら許せなかった。


従姉妹の子供がやってきて、大切にしていた花瓶を壊された。


子供のする事だからって言われた。


優生の従兄弟の子供に、「子供できないって変なんだね」って言われた。子供の言った事だから気にしないでと言われた。


いつの間にか、子供だからって許してって言葉が大嫌いになって、子供だからって多めに見れなくなった。


苦しくて、不自由だった。


断崖絶壁で目隠しで、綱渡りで歩いてるような感覚だった。


いつでも、落っこちれた。


最初は、子供はゆっくりでいいと思ってた。


流産してからは、信じられない程にしがみついた。


欲しくて、欲しくて、堪らなくて、あっち側に行きたかった。


「沸騰してるよ、理名」


「ごめん、ありがとう」


火を止めて、お味噌をといた。


私をあっち側に、この子は連れて行ってくれた。


もぎ取った羽根の一枚を私に渡してくれた。


「理名、大丈夫?」


「なんで?」


「泣いてるから」


「えっ?あっ、本当だね」


俊君は、私の手を握りしめてきた。


「僕が、守ってやるから!心配するな。理名」


「ありがとう」


精神ヤバいじゃん、私。


泣いてるのにも、気づかないなんて


「向こうで待ってて、朝御飯するから」


「うん、待ってる」


「はい」


ニカって笑って向こうに行った。


君の好きが、何かはわからない。


それが、恋なのだとしたら一線だけは越えないようにしなくちゃいけない。


って、11歳は対象外だわ、普通に


ただ、あの子も大人になっちゃうもんねー。


そう考えたら、ちゃんとしなきゃいかんよ!わたし


私は、ハムを並べて卵をそこに割っていく。


小さな小鍋を出して、冷凍のブロッコリーを湯がいた。


まだ、俊君の手は小さかった。


可愛すぎるぞ


ちょうど、ご飯が炊けた。


家族が、もう一人いたらこんなんだったのかな?


私は、ワンプレートに盛り付ける。


何だかんだいって、ワンプレートが楽なのだ。


トマトとブロッコリーとレタスに、ハムエッグとご飯。


マグカップにお味噌汁をいれて持ってく。


口の広めのマグカップを我が家では、味噌汁いれに使用してる。


味噌汁の茶碗は、熱くてもてないから二人とも苦手だった。


優生と私は、優生のもうアプローチから付き合い半年で結婚した。


結婚してから、私も優生にどんどん惹かれていった。


優生は、噛めば噛むほど、味がでるスルメみたいな人だった。




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