買い物

何故か、私は彼の母親になる事になった。


スーパーについて、カートに買い物かごを乗せる。


私達を、怪しむものは誰もいなかった。


「にんじんは?」


「食べれる」


にんじんをカゴにいれる。


「玉ねぎは?」


「食べれる」


玉ねぎをカゴにいれる。


「椎茸は?」


「食べれる」


お味噌汁の具に使う椎茸をカゴにいれる。


「豆腐は?」


「食べれる」


豆腐もいれた。


変な会話だけれど、誰も気にしてなかった。


お肉なども、カゴにいれてお会計をした。


10歳でも、男の子だ!


カゴを持って行ってくれる。


私と彼と袋に一緒につめる。


「楽しいよ、理名」


ずっと呼び捨てで笑える。


「初めて?」


「うん、初めてだよ。」


俊君は、袋を一つ持った。


「理名は、軽いの持ちなよ」


「あ、ありがとう」


って、言っても足が悪い私は車なんだけどね。


車まで、やってきた。


「荷物乗せるから、ちょうだい」


「はい」


「ありがとう」


私は、車に荷物を乗せる。


「後部座席」


バタン


助手席に乗るんだね。


私は、車を走らせる。


「理名」


「何?」


「毎日、行くから」


えっ?付き合いたてのカップルみたいな発言をされてる。


【理名、休みは毎日会いに行くから】


主人を思い出した。


「僕以外の男の事、考えていただろう?」


「そりゃあ、結婚してるから」


「どんな奴か見たる」


「晩御飯食べる時には、会えるよ」


何か、可愛いな。


面白い


戸建てに、ついて車を停めた。


買い物袋を、おろすとすかさず持ってくれる。


鍵を開けて、家に入る。


「お邪魔します」


「どうぞ」


二人になると、すかさずキスをしてくる。


ゴン


それが、何故かおでこをぶつけてくるから笑える。


「それは、何?」


「小さい子が、ママにするやつ」


そう言って、袋を持っていく。


「キッチンにもらうね」


私は、キッチンに案内した。


「これが、ミカエル?」


キャトタワーに鎮座するミカエルを見つめている。


「そうだよ」


白と茶のコントラストが綺麗なのだ。


「へー。可愛いな」


俊君は、ミカエルを見つめてる。


「手洗い、うがいだね。こっち」


洗面所に、連れてきた。


「ありがとう、理名もここ使ってるのか?」


「いやー。お風呂場だしね。当たり前だよ」


「お風呂一緒に入りたい」


「いやー。それは無理だよ。入るなら、優生とにしなね」


「誰だよ、それ?」


「旦那さんだよ」


私も、手を洗ってうがいをする。


この子の投げ掛ける真っ直ぐな言葉がおかしくて堪らない。


ママと結婚するーって言われてるみたいだね。


「料理、手伝いたい」


「ありがとう。先に、洗濯物畳むからリビングで待ってて」


旦那の花粉症が酷いから、一年中浴室乾燥機だった。


私は、浴室乾燥機から洗濯物を取り出してかごに入れる。


入れ終わったかごを何故か、俊君はリビングに持っていってくれる。


「僕も手伝いたい」


「じゃあ、畳み方教えてあげる」


「うん」


私は、俊君に畳み方を教える。


「えっとね、こことここを持ってね。こうするんだよ」


後ろから、手を持って説明した。


マジなのかな?


耳まで、真っ赤だ。


「やってみる」


「そうそう、上手だね」


「嬉しい」


ニコって笑った顔が、可愛かった。


まあ、いっか。


どうせ、そのうち飽きるだろうから…。


洗濯を畳み終わった。


「なおしてくるね」


「うん」


俊君は、ミカエルを撫でていた。


もどってきても、ミカエルをまだ撫でていた。


「可愛いね、ミカエル」


「ありがとう」


「料理作る?」


「うん」


「じゃあ、僕も手伝うよ」


「よろしくね」


俊君に、玉ねぎをむいてもらう。


私より、まだ小さい。


おばさんに、好きだなんて馬鹿な子だね。


きっと、君はお母さんに愛されたかったんだよね


「はい、出来た」


「上手だね、ありがとう」


「にんじんの皮むく?」


「うちはね、こうやって剥くんだよ。」


小さな包丁を俊君に握ってもらった、その背でゴシゴシと皮を剥く。


「理名、近いよ」


「えっ?あっ、ごめんね」


「いい。こう?」


「そうだよ、上手。怪我するから、もういいよ。椎茸の軸はずそうか?」


「うん」


楽しそうな笑顔を見てると、俊君は本当に愛情が欲しいのだとわかる。

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