今でも、あなたが…。

三愛紫月

結婚式

「誓います。」


私、大河内理名おおこうちりなと夫の大河内優生おおこうちゆうきは、結婚式に出席していた。


新郎の朝比奈俊あさひなしゅんとは、もう20年の付き合いになる。


私と夫は、その姿を見つめながら泣いていた。


実のご両親と絶縁していた彼は、私達を両親の代わりに招いてくれたのだ。


「理名さん、優生さん、俺を支えてくれてありがとうございました。俺には、二人が本当の両親です。本当に、ありがとうございます。そして、これからも妻と俺を見守って下さい。未熟な俺達ですが、宜しくお願いします。」


俊から、花束を受け取りながら泣いた。


結婚式が、無事に終わって家に帰宅した。


「よかったわね。あなた」


「ああ、素晴らしかった。もう、20年かぁー。早いな」


主人は、アルバムをとってきてパラパラと捲っていた。


「本当に、早いわね」


私も、笑いながらアルバムを覗き込んだ。


俊が結婚したい人がいると、私達の前に彼女の望月茜もちづきあかねさんを連れてきた。


彼女は、元は男性で女性にかわった人だと話をされた。


彼女が、帰った後、俊が私達に尋ねた。


「どう思いますか?」


「いいんじゃないのかな」


「俺もいいと思うよ」


「よかった」


俊が、ニコニコ笑った。


「理名さんと優生さんに出会ってなかったら、俺は茜と結婚していなかったと思う。」


「なぜ?」


「やっぱり、子供を強く望んだから…。」


そう言って俊は、目を伏せた。


「仕方ないわよね。子供が、欲しいのはみんな同じよね」


私は、笑った。


「俺は、理名さんと出会った事嬉しかったよ。両親に愛されてない俺にとって、二人は俺の親代わりだった。だから、中学あがってからは何かあったら迎えに来てもらったりしてた。この先の俺の人生も二人には、見届けて欲しいし。俺も、二人の人生を最後まで見届けたいと思ってる。だから、これからも宜しくお願いします。」


深々と俊は、頭を下げた。


血の繋がりがなくても、愛せるのを私と優生は、俊に出会って知った。


「俊、頭あげろ。今日は、飲もうか」


「はい」


「でも、俊。よく、決断したな」


「はい」


俊は、優生に肩を叩かれながら泣いていた。


「二人を見ていたら、二人で生きてく人生は素敵なものだってわかってるから」


俊は、ニコニコ笑った。


俊は、出会ってから20年間。


毎日、家に来た。


両親に怒られないからと、俊は晩御飯を食べた。


主人と一緒に、俊の家まで送り届けた。


ご両親にご挨拶をしたら、「俊が、いない方が助かってますからお気になさらずに」と言われた。


俊は、5歳離れた兄と3歳離れた姉が可愛がられてるから大丈夫って言ったのにと私と優生に、ぶう垂れた顔をした。


俊は、土日は私達の家で丸一日過ごした。


土日も、時々は泊まっていた。


そして、夏休みや冬休みなどの長期の休みは、我が家でよく長期間泊まった。


旅行にも一緒に行った。


子供のいない私達が、子供代わりに育てている猫のミカエルとも仲良くなって、よく遊んでくれた。


まるで、子供が出来たみたいだった。


中学生になると、俊は父親から暴力をさらにふるわれていた。


その時は、夜中でも私達の家にやってきた。


「ここの子供にして欲しい。お願いします」


そう言って、私達夫婦によく泣きついたのを覚えてる。


そう言われる度、私達もどうにかしてあげたいけれど難しいよねと話し合った。


俊は、高校を卒業すると我が家に住みにやってきた。


もう、この頃には私への感情はかわっていた。


多分、あの時も母親が欲しかったんじゃないのかなと今でも思っている。


俊は、それから25歳になるまで、私達と住んでいた。


その後、近所のマンションを借りた。


その頃には、今の奥さんとお付き合いしていたと思う。


気づけば、私達はまた夫婦二人の生活に戻った。


でも、私と優生は、俊がいなくなった後、子育てをしたような不思議な充足感に包まれていた。


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