10

 暗くなる前に、いろはとあゆみはあゆみの実家に電話をかけて、事情を話したあとで、二人で歩いてあゆみの実家まで移動をした。

 あゆみの家は二子山自由公園から歩いて二十分くらいのところにあった。

 とても大きくて立派なつくりをした家だった。

「大きなお家。お嬢様なんだね、あゆみさんは」といろはは言った。

「そんなことありません。普通です」とあゆみは言った。

 それからいろはは家から出てきたあゆみのご両親とお話をして、それからあゆみと一緒にあゆみの家の中に案内されて、コーヒーをご馳走になりながら、少しだけ、いろは、あゆみ、あゆみのお父さんとお母さんの四人で今日のできごとをお話しした。

 あゆみは怒られたりはしなかった。

 とても心配されてはいたけど、ご両親が家出をしたあゆみのことを怒鳴りつけたり、理由を激しく追求したりすることはなかった。(もしかしたらいろはがいたからなのかもしれないけれど、このあとであゆみがそんな風にご両親から叱られるような雰囲気は感じられなかった)

 あゆみのご両親はとても立派な人たちに見えた。

「じゃあ私はこれで」

 と言って、時計を見てからいろはは言った。

「いろは先生。先生は今日、これからどうするんですか?」とあゆみは言った。

「どうするって?」いろは言った。

「……お家に帰るんですか?」と(ちょっとだけ心配そうな顔をして)あゆみは言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る