第23話 闇商人との開梱

 深い空掘の底にあるスラムにも太陽の恵みはもたらされる。自分達の頭上を通り過ぎる通行人に全く謂れのない苛立ちを抱えていても、ゴミの山から物を探すには光が必要なのだ。


「…」


 目覚めたエリーゼは、案の定スラムで生きる術を持っていなかった。


 一度助けたのだから、このまま捨て置く気はない。俺はエリーゼを連れて、スラムの顔役である闇商人の元へやって来た。


「おう、新入りか?」


 ガタイの良い長身の男が、白蓮たちの姿をみとめると威勢良く呼びかける。


「ああ、はい。ダットさん…昨日から面倒見てますエリーです」


 そう言ってエリーゼに顔を向ける。


「…」


 エリーゼは、言葉を紡がずに一礼して見せる。


「それで……服を買いに来たのか?」

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