30話 ビッグバンベヒーモス③

30話 ビッグバンベヒーモス③


ビッグバンベヒーモスは総攻撃を受けて炎に包まれている。



(よしいいぞ。よしいいぞ。このままま、このまま倒れてくれ!)



皆の顔からは笑顔がこぼれる。


勝利ムードが仲間たちから漂っている。




一瞬大気の流れが止まるのを感じる。


(……なんだこの感じ…。)





「グゴォォォォォオオォォォ!!!!!!!!!!!!!!!」


ビッグバンベヒーモスの咆哮が半径10km辺りの空気を震わせる。


勝利ムードだった仲間たちは一瞬にして背中に冷や汗を伝わせる。



咆哮と共に炎が消し飛ぶ。


(く、圧倒的な圧力だな。…え?ちょっと待てちょっと待て。おいおい、嘘だろ。無傷じゃないか。)



ビッグバンベヒーモスは、なんと無傷である。


(少しはダメージがあったと信じたいねぇ。)




そして、炎で弱くなった足元の蔦を引きちぎり、鼻先で防壁をぶち壊す。


「力場!」



聖一の力場をビッグバンベヒーモスの足元に展開する。足止めをするのだ。



しかしビッグバンベヒーモスは、面倒くさそうに4本の腕でパンチの連打を力場に打つ。


一発一発打つ度に辺りに衝撃波が起こる。



なんとパンチ三発で力場が砕けてしまう。


「…り、力場が崩れた。まじかよ。」


(力場が崩れた事なんて今までなかった。え?嘘だろ?)


聖一も、聖一の仲間たちも動揺している。


(こ、こ、こんなやつに勝てるわけ……。)



数々の戦いをくぐり抜けて来た聖一。初めて体の芯から恐怖を感じる。




ビッグバンベヒーモスは岩山を抜けた所にあるもうひとつの防壁の前に近づく。




聖一は防壁の上に立っている。恐怖で体が硬直している。




ビッグバンベヒーモスはもうひとつの防壁をまた鼻先で壊そうとする。


最後の防壁である。



すると、聖一の頭から声がする。


……お兄ちゃん……


……大丈夫……


……作戦通りでしょ……


……元気出して……



頭から声が消える。



(そうだな。ふー。気を取り直さなきゃな。3歳児に励まされているようじゃ俺もまだまだだ。……ありがとう。からだの震えは止まったよ。)


「ここまでは作戦通りだっ!!」



聖一がビッグバンベヒーモスに向かって叫ぶ。



次は一撃で壊す、とでも言いたげにビッグバンベヒーモスは勢いをつけてタックルをしてくる。



「力場力場力場力場力場力場!」




聖一は槍のかたちの力場を何個も展開。



タックルの勢いのままビッグバンベヒーモスにズブズブと刺さっていく。


(よし!!いや、少し刺さりが甘いな。)



後方から様子を見ていたジャイが、一緒にいるムスメに話しかける。


「筋肉に邪素と魔素が混じっていているから凄く固いのかもしれんのう。かなり刺さりが甘いようじゃ。」





引き抜こうとするビッグバンベヒーモス。


「フフフ。させませんわ。」


ハイエルフ族が罠を発動させる。防壁から蔦が延びる。



腕や前足に絡まり、ビッグバンベヒーモスを防壁の方に引っ張る。



ズブズブとゆっくり深く刺さっていく。



再び岩山から仲間たちが総攻撃をかける。



ビッグバンベヒーモスは嫌がっている。



(良いぞ良いぞ。しかしタフだなこいつ。世界の災厄ビッグバンベヒーモスは伊達じゃねぇ。よし、俺がいく!!)


「トドメだ!うぉぉぉー!!!」


トドメを刺しに行く聖一。防壁から力場を使ってジャンプを繰り返してビッグバンベヒーモスの脳天を目指す。



エネルギーを溜め始めるビッグバンベヒーモス。


「なんかパワー溜めてるけど、俺の攻撃が先だー!!」


10秒ほどで脳天の手前に到着し、ククリナイフとダガーの二刀流で切りかかる。



聖一の攻撃が当たる直前、ビッグバンベヒーモスは

「ゴオォォ!」

という咆哮と共に高熱のエネルギーを体から放出する。







一瞬にして蔦や防壁が熱エネルギーで溶ける。




そして近づいていた聖一も吹き飛ばされる。


(…い、意識が遠退いてく。こ、これが死ぬって感覚か……。)




「聖一ぃぃーーー!!!」


防壁の斜め後方にいたマホが叫び声をあげる。



(……マホの声…)


マホの回復魔法でも、死んでしまうと回復することはできない。


薄れていく意識のなか聖一は冷静に考える。


(…か、体が高熱で溶け、エネルギーの勢いで吹き飛ばされた。…こ……このまま地面に叩きつけられたらさすがにしんじまうだろうな…。)

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