第18話 作業終了とパンチドラゴン
18話 作業終了とパンチドラゴン
スミフが作業にとりかかる。
(新しく買った一軒家の工房で武器を新しく出来るなんてワクワクしちゃうなー。フッフフ。)
聖一は武器が新しくなることに胸が高鳴っていた。
「合計1週間はかかるなぁ。」
「じゃあすまんが1週間後に帰ってくるよ。」
(1週間か。その間出来ることをした方がいいな。)
1週間の間に色々と準備作業をする事にした。
そして一週間後。
「ただいまー!」
「おかえりー!」
「あれ、聖一とマホとシャマだけ?」
他の仲間が見当たらない。
「うん、色々皆に頼んできたから俺たちだけだよ。」
「ただいま。1人にしてごめんね。」
「ただいまでありますです。」
全員で出かけたのに、聖一とマホとシャマだけが帰ってきたようだ。
(皆には色々頼んできたからな。)
「出来たよ聖一!」
「おー!見せてくれー!!!」
ドラゴンの素材を使って、ククリナイフの作成とミスリルダガーのパワーアップをしてもらう。そしてシャマの弓もパワーアップだ。
まずドラゴンの爪と世界樹で作ってもらったドラゴンククリナイフを見せてもらう。
持ち手に世界樹を使うことで魔力の伝達が効率的になり切れ味が増している。
「はいどうぞ。完成だよ。」
「すげー!輝いてるな。ありがとう!かっこいいー!!」
(いやーククリナイフかっこいいなー。ブーメランみたいに飛ばしたり出来そう。)
そして世界樹とドラゴンの眼球をミスリルダガーに加工してパワーアップしたものを見せてもらう。
「これだよ。でもまだ完成じゃない。」
「え?そうなの?」
「シャマお願い。」
「はいでありますです。」
仕上げに、風の精霊魔法をミスリルダガーにエンチャントする。
ミスリルという不思議素材に、世界樹とドラゴンの眼球という不思議素材を加工することで、精霊魔法をエンチャントできるようだ。
シャマが精霊弓に込めるような要領で風の精霊をミスリルダガーに込める。
「はいどうぞ。完全ー。」
「おおお!すげー!」
(ヒョホー!パワーアップしたミスリルダガーもかっこいいなー。切れ味もあがったし、ダガーを振れば斬撃を飛ばしたり、風を起こして風圧で相手を牽制したり出来るかも。)
次は、シャマの精霊弓にドラゴンの眼球を加工して魔力の通りを良くし、弓の威力アップしたものを見せてもらう。
近接での戦闘用にドラゴンの牙を加工してパワーアップしたようだ。
(離れて良し。近づいて良し。最強じゃないのシャマちゃん)
「スミフ!ありがとうございますですー!!」
「喜んでくれてよかったよ。」
ドラゴンの牙で新しいピッケルも2本作る。こちらも持ち手に眼球と世界樹を使う。
刺突に特化したうえで、凄く頑丈に作られているようだ。
そして、杭とロープもドラゴン素材で出来ている。
(おおー!これで大きい敵にも立ち向かって行けるぞ。)
「最高の出来だよ。スミフ。」
「ありがとう。僕は一回やすむよ。」
そう言ってスミフはさっと風呂に入って自室に戻っていった。
(相当頑張ってくれたんだな。ありがとう。)
そして、杖や防具も取りに行く。
「装備は整った。俺たちは少しでも強くなろう。」
「そうね。」
「はいでありますです。」
3人は身支度をして休んで次の日の朝を迎える。
「じゃあ行ってくるよスミフ。」
「行ってらっしゃい。僕は皆と合流しておくよ。」
「頼んだ。じゃあ、いってきます!」
3人はパワーアップのために旅に出る。
半日ほど旅をしたところでマホの索敵魔法になにかが引っ掛かる。
現れたのは城級モンスターのパンチドラゴンだ。
「聖一来るわよ!!」
「おう!って早い!!!」
パンチドラゴンは轟音と共に岩山を破壊しながら巨体を現した。
「あれは城級モンスターのパンチドラゴンよ!!」
「爪が隆起して拳を覆ってるでありますです!」
(爪がボクシンググローブみたいになってるな。ん?)
「手が4本?いや羽か!羽が手のようになってるぞ!」
パンチドラゴンの羽はまるで手のようにしなやかになっていて、手が4本あるように見える。
(手が4本って反則だろ!しかも50mはあるぞ。でっかいな~。)
パンチドラゴンはこちらに気づいて4本の手でパンチのラッシュを繰り出してきた。
「くっ!!り、力場力場力場!!」
一発一発がすごい重みだが、なんとか力場を盾のように使って拳をいなしている。
苦戦しているとマホとシャマから提案がある。
「聖一!手が4本って大変よね?」
「そうだな!大変だっ!くっ、凌ぐのでやっとだよ。」
「マホさん!羽の方の手が少し脆いでありますです!」
「そうねシャマ。聖一!私たち2人があの腕をなんとかする!!だから少しだけで良い、隙を作ってちょうだい!!」
「え?……わかった。引き付ける!」
聖一が前に飛び出してジャンプ。さらに力場を使い空中へ舞い上がる。
「こっちだよー!」
パンチドラゴンが聖一の方を邪魔そうに見て4本の腕で掴もうとする。
「ギャァア!!!!」
「力場ぁ!力場ぁ!力場ぁ!力場ぁぁ!!!」
突き出してきた4本の腕の前に力場を作る。
腕が力場に当たる。体ごと4本の腕を出していたからか、パンチドラゴンの体は0コンマ数秒だけ硬直する。
(よし止まった。)
「ナイス聖一!!ピンポイントブラックホールアタック!!」
マホが杖をかざすと先端から黒い光を放つ。
するとパンチドラゴンの羽の方の手の付け根の部分に黒い光が現れる。
拳大ぐらいの大きさの黒い光は付け根の腱の部分をえぐり取る。
(うお!拳大の大きさの空間を削り取った!!)
それと同時にシャマも精霊弓を放つ。
「刺突と爆発に特化!!で、ありますでぇす!!」
レイピアのように先端が鋭くて光った矢を三連発で放つ。
3本とも羽の付け根に刺さり、爆発する!
(すげー!刺さった矢が内部から爆発したぞ!!)
あっという間にパンチドラゴンの羽は、ぶらーんとしてパワーを完全に失ってちぎれかけている。
(3本目と4本目の腕として使われていた羽がまったく機能しないみたいだ。これはグッジョブすぎる)
「2人ともナイスすぎるぞ!!」
「えへへ。」
「うふふ。」
聖一が誉めると2人は体をくねらせて喜んでいる。
それを見たパンチドラゴンは、なめるなという勢いで空中にいる聖一に右ストレートを打ってくる。
「力場!」
力場を踏み込んで空中でストレートをかわす。
そして左フックを打つパンチドラゴン。
「甘い!力場!ほっ!」
槍状の力場を出して、鉄棒の要領で勢いをつけてさらに空中へ飛び出す聖一。
その左フックは勢いよく槍状の力場に吸い込まれる。
勢いの乗った左フックは爪のグローブを突き抜けて拳まで到達。勢いは衰えず肘から力場が突き抜けた。
拳の先からも肘からも鮮血が吹き出す。
痛みでのけぞるパンチドラゴン。
杭をロープに通したものをブラックホールから取り出す聖一。
「通れ!」
拳から肘まで抜けた穴に投げて通す。
ロープの反対の端っこにピッケルをくくりつける。
そしてロープの杭の方を掴んで、腕の上を走り抜けて顔に近づいていく。
ロープの端っこは拳から抜けずに、ピッケルがつっかえ棒のように引っ掛かる。
「自分の腕で、はだか締めだ!」
ぎゅゅー!とロープを引っ張り、顔を通りすぎて肩から聖一が飛び降りる。
パンチドラゴンは穴の空いた腕をロープで引っ張られて、自分の腕で自分の首を閉めている。
そして後頭部に槍状の力場を出す。
「突き抜けろぉぉ!!!」
自分自身に首を絞められて崩れ落ち、後頭部に槍状の力場が刺さる。
飛び散った脳しょうはマホの方へ飛んでいくが、マホは慌ててかわす。
「危ない!いつもいつも私ばっかり汚れる訳にはいかないんだか………ら゛ーー!!!!!」
遅れて飛んできた血の濁流に乗り込まれるマホであった。
パンチドラゴンのエネルギーが3人に流れ込む。
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