第10話 秋なのに

 衣替えが済んで夏物の服はクリーニングに出した。肌寒くなってきた。そろそろ焼き芋が美味しい季節かな。人は食欲の秋と言う。

 彼は二十歳のフリーター、自転車をこいでアルバイトに向かっている途中、なんだか様子がおかしいことに気付いた。

 秋なのに、暑いのだ。

 気温の変化? 体温の上昇? 自転車をこいでいるから?

 けれども、周りを見て何かの違和感を覚える青年。人々がこちらを指差している。

 青年は何気なく後ろを振り返る。

 髪の長いボサボサのニタニタと笑みを浮かべる女性が背後に居た。

 青年は気を失った。


 目が覚めたのは病室で。

 やっぱり肌寒く感じた青年。

 女性の影はどこにもなかった。

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