ゲーム2:電話でいいトークできるか対決②

 健吾が夢中で話している時、伊織は陰でクスクスと笑っている。

 ――だから男子って、さ。

 早織も上手くやってくれているし。早織は一樹かずきと結婚することが決まっている。

 なのに、そんなことを知らずに奮闘する三人の男が面白くてたまらない。後々赤っ恥を搔くことになるだろうに。

 だが、ここまでやってくれたら後々かわいい妹はこれだけモテたということの自慢にもなる。見るのも面白いし。

 ――やっぱり、早織が一番だよ。


 時間が来て健吾との通話が終了したようだ。

「伊織先輩……ありがとうございます!!」

「へ?」

 伊織は驚いた。私はただただ楽しんでるだけなのに? 何が。でも、まあ健吾から見れば……。

「伊織先輩のおかげで早織ちゃんと電話できたし。盛り上がれた。やっぱり俺は早織ちゃんが大好きなんだなぁって心拍数が十倍くらいになってるのから思いました。せっかく伊織先輩がチャンスをくれたんだ。早織ちゃんの彼氏になりたいです! 頑張ります!!」

 健吾はこれまでイメージを覆す顔でこう言ってきた。真っ赤っかで話してるし、そもそも呂律が回ってない。

 ――これは面白いね。

「そう、それならよかった。頑張ってね♪ じゃあ、私は次行ってきま~す」

 伊織はほくそ笑みを浮かべて健吾宅を出た。




 勝太はしっかりプランを考えていた。

 早織の性格はめちゃめちゃ明るいから、早織の良いところをたくさん行って褒めて、どうやったらそんな人間になれるのみたいなことを訊く。早織なら照れながらそんなことないよとか言って、俺のことも褒めてくれるのだろう。それで、俺がどう思われてるのかがわかる、はず。

 そこから、早織の話題に合わせて色々ワイワイ。最後に、とどめを刺してやろう……。

 ピーンポン♪

 お、インターホンが鳴った。


「ハロー、勝ちゃん! 調子はどう?」

「あ、伊織先輩。コンディション最高です」

「おお! それは嬉しいね。早速やってもらおうかな」

 そう言って、伊織はスマホを操作する。

「もしもし、早織? 今ね、生徒会の企画で色んな子と電話を繋いで仲良くなろーみたいな企画やってんの。あ、行ける? そう、分かった! ありがと。さっきからありがとね。じゃあ、代わる。ん? 誰にか? それは、出たら分かるよ」

 伊織は俺にスマホを渡してきた。いよいよ。作戦通りにやったら上手く行くはずだ。告られる人間は恋愛について分かってる、はず。


「もしもし? 早織ちゃん? 元気にしてる? 今何やってんの」

『あ、もしもし。おっ、この声は……勝太君じゃない?』

「お、正解! 良く分かったな。さすがクラス委員長」

『いやいや、関係ないよ。まあ、みんなと喋るから大体分かる』

「そっか~。でもさ、クラス委員なんかどうやったらなれんの? 怖くない?」

『クラス委員は、まあ目立ちたがりだからかな』

「俺と一緒じゃん。俺も次なろっかな。早織ちゃん委員長で俺副委員長」

『それいいね』

 ここまでは、いいぞ。


「ところでさ、水泳やってるって言ってたけどどこ習ってんの?」

『富田スイミングスクールだけど』

「え?! 一緒じゃん!!!! いつの時間?」

『水曜の五時から』

「うわ、俺四時から」

 今度サプライズで行ってみようかなぁと思った。


 そこから先も、褒めて褒めて褒めまくって、彼女をどんどん引き込んでいく。

『なんか私ずっと褒められてない?』

「良いじゃん」

『そういうところ勝太君良いよね。尊敬』

「ありがと」

『勝太君もスポーツ万能だよねぇ。話題も会うし、目立ちたがりで人気者だからなんか似てる』

「誰と?」

『私とに決まってるじゃん』

 いやぁ、好きだ。めちゃめちゃ好きだ。


『あ、もう少しで終わりだね』

「本当だわ」

『じゃあまたね。そうだ、またどこかで一緒に遊ばない?』

 ドキッ

 勝太はビックリした。本当は俺が誘うつもりだったのに、なんでか先に誘われてる。

「え、良いけど。どこで」

『海とか?』

「いや、それは難しいんじゃない」

『まあいいや。それはまた今度会って決めようよ。じゃあね! 会って話すの楽しみにしてるね~』

「え、あ、うん。バイバイ」

『バイバ~イ』

 電話はあっちが切った。

「よし、勝太君良いね。じゃあ、家戻るわ。早くLINEに入ってよ?」

「了解です」

 伊織は帰っていった。

 ――で、ところで一緒に遊ぶってデートってことか?




 伊織『よし、それじゃあ結果発表!!』

 弘人『パチパチパチ』

 健吾『ヤッター』

 伊織『それぞれ三人に早織と音声通話してもらいました。この中で一番早織と良い会話をできた人を発表します!!!!』

 伊織『ちなみに、点数は独断と偏見で……ね』

 勝太『了』

 伊織『それでは、点数はっぴょ―!』

 伊織『一、勝太三十点 二、健吾二十五点 三、弘人十五点』

 伊織『しょーちゃん断然よかった。会話もすごい出来てた。早織本当に惚れたかもよ?』

 弘人『うそー』

 伊織『二位の健吾君は普通。だけどまあ楽しんでたし……それと、最後私と喋ったのが効いてボーナス』

 弘人『え、待って健吾何したの?』

 健吾『ヒミツだ』

 伊織『弘人君は……なんか暗い。以上』

 弘人『(涙)』

 伊織『それじゃあ、現在の点数はコチラ☟』




 一位、勝太・六十五点

 二位、健吾・四十三点

 三位、弘人・三十三点

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