第四話 鉱山に入る

 次の日の朝――


 コンコン


「お、ケインか。入っていいぞ」


 朝食を食べ終え、部屋でくつろいでいた俺は、そう言った。


「よう。情報を集めてきたぜ」


 ケインは部屋に入ってくると、空っぽになった革袋を俺に放り投げてきた。


「さて、これが空になったってことは、情報もいい感じに集まったんじゃないか?」


 俺はニヤリと笑った。


「もちろんだ。有名な情報屋を三つ回ったから、信憑性もある。じゃ、話すぜ。まず、例の裏組織と、ハルス様、ネイル様、そしてガルド様が繋がっていることが分かった」


 最初からとんでもねぇ爆弾が落とされた。


「まさか一家そろって繋がっているとはな」


 ハルス一人だけだと思っていたので、これには俺も驚きを隠せなかった。だが、よくよく考えてみると、納得できるところもある。


(もしハルスのみが裏組織とかかわっていた場合、ガルド公爵がいち早く気づいて、止めに入るだろうな……)


 俺は顎に手を当てて、考えた。


「で、その裏組織はそいつらの依頼で人員を古代の森に送っていたらしい」


「古代の森?」


 俺は首を傾げた。

 あの森にわざわざ人を送って何をするつもりなのだろうか?

 素材が欲しいのなら、こんな回りくどいことをしなくても、普通に金で買えばいい。


「……何をしに行ったのかは分かるか?」


「ぱっと見では調査をしているように見えるらしい」


「ぱっと見では?」


「ああ。奴らの様子を普通に見れば、ただ調査をやっているようにしか見えないらしい。だが、奴らが通った場所の地面中には真っ黒な石があったらしい」


「黒い石か……専門家じゃないから分からないな」


「ああ。情報屋の解析班の調査では、魔物の核って結論が出ている。だが、何かが違うと言っていたな」


 公爵家が何を企んでいるのかは分からないが、碌でもないことなのは確かだ。


「まあ、その辺はハルスとネイルを殺る時に聞き出せばいいな。ガルドは……わざわざ殺す必要もないな」


 悪いことをしているのであれば、ガルドも殺すべきだろう。だが、ハルスたちとは別行動をしているであろうガルドを、リスクを冒してまで殺す必要はない。

 それに、ガルドが死んだら、誰がこの街を治めるのだろうか?

 主要な街であるメグジスをめぐって、熾烈な統治争いが繰り広げられるのは目に見えている。そのせいで犠牲になる人のことを考えればなおさらだ。


「じゃ、俺は鉱山に行ってくる。ケインは寝とけ」


「ありがとよ。まだ三時間しか寝ていないからな」


 ケインはあくびをすると、部屋を出て行った。


「ノア、行くぞー」


「はーい」


 冒険者用の服に着替えたノアと共に、俺は宿の外に出た。


「え~と……一先ずここから一番近い鉱山に行ってみるか」


 俺は街を出てすぐの場所にある鉱山に向けて歩き出した。




「ここが鉱山か……」


 鉱山は、ぱっと見ではただの山だ。

 だが、この中には大量の鉱石が眠っているのだ。


 俺は鉱山の前にいる衛兵に近づくと、冒険者カードを見せた。


「中に入って魔物を狩ってきますね」


「分かった。ふさわしい数以上討伐しなかったら没収だからな」


 これで交渉は成立だ。


「ノア、中に入るぞ」


「分かったー」


 俺はノアと共に鉱山の中に入った。


「鉱山の中ってこんな感じなんだ~」


 鉱山の中は、緑光石によって明るさが保たれていた。そして、ここから見えるだけでも十本の坑道がある。


「こういうのは真ん中辺りのやつが、一番出たりするんだよな」



 俺は大した根拠のない考えで、どの坑道に入るのかを決めると、〈創造〉で鉄のつるはしを作った。


「戦力を上げる為にも、あの鉱石は取らないとな」


 俺は気合を入れると、ノアと共に坑道の中へと入って行った。

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