第二章 街の闇とつながる者
第一話 その頃の元家族
ガルゼン視点
「ようやくあの出来損ないを殺すことが出来た。これで、我が家唯一の汚点がなくなった。今後の我が家の繁栄に、乾杯!」
「「「「乾杯!!」」」」
俺は屋敷で家族と、さらなる繁栄を願って、乾杯した。
(この計画がここまで上手くいったのも、レイン様たちのお陰だな)
元々、この計画はレイン様、ハルス殿、ネイル殿の三人が、わざわざ俺の屋敷に来てくださり、提案して下さったものだ。
(それにしても、流石は次期皇帝様だ。まさか貴族が死んだのに、一切調査されないなんてな……)
視察で死ぬようなことがあれば、普通は領地の治安について、詳しく調査されてしまう。だが、今回はあやつが私たちが目を離した隙に古代の森に足を踏み入れたということにしてある。
更に、レイン様の口添えもあり、警備隊は俺の言葉を面白いぐらいに信じてくれた。
「さて、七時からはレイン様、ハルス様、ネイル様がこの屋敷にお
「それを言うなら父上もですよ。前にお会いした時に、敬語を使い忘れていましたよね? レイン様が
「はははっ そうであったな」
俺たちは笑った。家族とここまで楽しく会話をしたのはいつぶりだろうか……
やはり、あいつがいたから、我が家の空気は悪くなっていたのだろう。あいつがいなくなったおかげで、我が家はあるべき姿を取り戻せたのだ。
「やはりあいつはただの役立たずより
だが、あいつはもう死んだ。これ以上、あいつのことを考えたって意味がない。不愉快だ。
「では、そろそろいらっしゃるから、出迎えの準備をしろ」
「「「「はい」」」」
こうして俺たちは、出迎えの準備を始めた。
「お久しぶりです。レイン様、ハルス殿、ネイル殿」
俺たちは、屋敷に来てくださった三人に、挨拶をした。
「ああ、計画の成功。私は嬉しく思う・詳細を聞きたいから、中に案内してくれ」
「分かりました。レイン様」
そう言うと、家族と共に三人を、最上級の応接室に案内した。この応接室は、帝国一の建築家が作ったもので、きらびやかだが、派手すぎないという、絶妙なバランスをとっている。
ここに、俺、レイン様、ハルス殿、ネイル殿の四人が入ると、俺は人が入ってこないように鍵をかけた。
そして、対面式のソファに腰かけた。
「では、どんなことがあったのか、聞かせてくれ」
「分かりました」
私は、三人に、何があったのかを事細かに説明した。
「ぷぷ……く……哀れ過ぎる……」
三人は、あいつの最後を聞くと、吹き出すように笑っておられた。貴族として相応しい笑い方ではないので、貴族として、注意を入れなければならない所なのだろうが、流石にあれを聞いたら、こうなってしまうのも、無理はないだろう。
何せあいつは、最後まで己の無能さを理解できず、「何かしたのですか?」と言ったのだから。
「ふふふ……いい話が聞けた。こっちでも、対処はしてあるから、追及されることはないぞ」
「ありがとうございます」
そう言うと、私たちはグラスに果実水を入れて、乾杯した。
「では、ガルゼン伯爵。今日は良き会談だった」
「はい。私としても、一家の家宝と思い、大切にしまっておきます」
「ふっ そうか」
レイン様はそう
そして、馬車に乗り込み、三人は屋敷を出た。
「ふぅ……これでレイン様が皇帝になれば、更に俺のことを優遇して下さるだろう」
貴族の面汚しを追放でき、次期皇帝であるレイン様と親密な関係にもなれる。これこそまさに一石二鳥と言うものだろう。
「では、レイン様を失望させない為にも、領地経営に今まで以上に力を入れるとしよう」
私は両手に力を籠めると、執務室に戻った。
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マリア視点
「噓でしょ……」
私は部下らの報告を聞いて、思わずそう呟いた。
部下からの報告によると、二日前に
(どうしましょう……あの街にはもう裏組織が残っていない。だから、また資金源を作るとなると、一年はかかってしまう……)
無理やり作るのならば、一ヶ月ほどで出来るでしょう、しかし、それだと、家族に感づかれてしまう可能性が非常に高い。特に、ケイル兄上は鋭い為、厄介だ。
(それに、ハルス様に資金源が潰されたことを知られたら、婚約破棄されてしまう可能性も……)
私は、ガルド公爵の子息であるハルス様と共同で、この資金源を作った。そして、その後の管理は全て私がやっている。その為、資金源が潰されたことに対する怒りは、私に向けられるでしょう。
(……そう言えば、冒険者二人が潰したのですよね。なら、その二人を捕らえて、怒りの矛先を変えればよいでしょう)
良い考えが浮かんだ私は、部下に命令した。
「その冒険者二人を捕らえなさい。ただ、衛兵に捕縛するところを見られたら、父上に伝わってしまいます。なので、私もあの街に行って、衛兵を、一時的に私の護衛という名目で集めましょう。では、出発は明日。準備しなさい」
「御意」
部下はそう言うと、部屋を出て行った。
「さて、私を
私は悪魔のような笑みを浮かべながら、そう言った。
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