4章 ~過去との決別を

プロローグ




 何十年も生きていれば、この道を進んだら駄目だということはなんとなくわかるものだ。

 これは能力じゃない。勘、ただの直感だ。

 エギルの初恋相手、ルディアナ・モリシュエに裏切られた時に襲われた、全身を冷たい無数の手で掴まれ、がんじがらめにされるような、あの気分の悪い感覚は今も忘れられない。

 だからエギルは、再び同じ感覚に襲われたときには、進む道を変えることにした。

 けれど、変えても変えても、進もうとする道をあの感覚が邪魔をしてきた。


 ああ、この道は駄目だ。

 ああ、この道も駄目だ。

 この道も、この道も、この道も。


 それでも、あの感覚に襲われない道が生まれることもある。しかし、いいと思って選んだ道ほど、あの嫌な悪寒が襲ってくるのだ。

 進まなければいけない道だからなのか。それはわからない。

 この先へ進めば──エギルは何か大切なモノを奪われるような気がした。

 せっかく手に入れた幸せ、みんなと共に掴んだ安寧を手放さなければいけないかもしれない。


 ──だけど。


 彼女たちは覚悟を決めたような力強い瞳をエギルに向け、彼の背中を押した。

 何が起きようとも、エギルと共にその道を歩こうと決めている。

 だからエギルも覚悟を決める。

 過去の自分と決別しなければいけない。

 たとえ苦しみの道を彼女たちと共に歩くことになるとしても──。

 もう、あの日のエギルとは違うのだから。

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