66.不思議な再会(フレイグ視点)
「……」
「……」
ラムフェグが消滅してから、俺はラフードと目を合わせていた。
その肉体は、俺にもはっきりと見えている。本当に、奴は蘇ったのだろう。
なんというか、少し不思議な感覚だ。一度は、明確な別れを経験したというのに、こうしてまた顔を合わせることになるとは。
「感動の再会の中、悪いんだけど、少しは僕の存在も気にしてくれないかな?」
「む?」
「あっ……」
そんな俺達に、話しかけてくる者がいた。それは、ウェリッジである。俺達は、こいつの存在を忘れていたのだ。
「……ウェリッジ、今回は助かったぜ。まさか、お前が俺達に力を貸してくれるとは思っていなかったが」
「まあ、君達に恨みがない訳ではないが、それはラムフェグへの恨みに比べれば、些細なことさ。君達の思考は、理解できない訳ではないけど、あの狂気はわからないし、僕自身も被害を受けたからね」
「まあ、あいつの思考を理解できる奴なんて、そんなにいないだろう」
「そんな巨悪は滅びた訳だ。これで、人間も魔族も安寧を得られたら、いいだろう」
俺達とウェリッジは、かつての敵同士である。
だが、どちらも戦いを望んでいるという訳ではない。人間と魔族が敵対すれば、俺達はまた戦うことになるだろう。
しかし、何も起こらなければ、わざわざ争う必要もないのだ。それを望んでいたのは、ラムフェグくらいだろう。
「さて、そろそろ僕は帰らせてもらうよ。ああ、ちなみにクーリアにも肉体を渡しておいたから、楽しみにしておくといいよ」
「色々とありがとうよ、ウェリッジ」
「構わないさ」
ウェリッジは、それだけ言って去って行った。
その場には、俺とラフードが残される。すると、再び沈黙が訪れる。
「……なあ、フレイグ。色々とあったけどよ」
その沈黙を破ったのは、ラフードだった。
この再会まで、本当に色々なことがあった。それを思い出しながら、俺は友の言葉を待つ。
「こうやって帰って来られて本当に良かったと、俺は思っているぜ?」
「……ああ、そうだな」
ラフードの言葉に、俺はゆっくりと頷いた。
こうして、こいつが帰って来てくれたのは、確かに良かったことだ。
あの時、あんな別れ方をして、俺はずっと引きずっていた。だが、それもやっと終わりそうだ。
「さて、そろそろ俺達も帰るとするか。お嬢ちゃんやクーリアが、心配しているだろうしな……」
「……そうだな」
俺は、とある人のことを考えていた。
その人物は、この俺に寄り添ってくれた。彼女の言葉があったから、俺はこうしてここに立っている。
その人との約束を、俺は果たさなければならない。だから、俺は帰るのだ。待っている人がいる場所へ。
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