22.終わらない戦い

「……ラフードは、なんというか明るい奴だった。俺が聞いてもいないことを喋り出したりもした。最初はそれをよく鬱陶しいと思ったものだ」

「そ、そんな感じなんですね……」


 私は、少し笑ってしまいそうになった。なぜなら、ラフードのそんな様子がすぐに頭に浮かんできたからだ。

 彼なら、例え牢屋に入れられていても気丈に明るく振る舞っただろう。そして、そんな態度に対して、フレイグ様が辟易としている様も何故か容易に想像できる。


「だが、話している内に、俺達はだんだんと打ち解けていった。俺はいつしか、あいつのことを信用するようになっていたんだ」

「何かあったんですか?」

「どうだろうな……あいつが魔族の軍の弱点を教えてくれて、それが実際にそうだったから、という風に明確に理由をつけることもできるが、実際の所、俺はあいつをどうして信用できるようになったのか、自分でもわかっていないんだ」

「……まあ、そういうものなのかもしれませんね」


 フレイグ様が、どうしてラフードを信用できるようになったのか。それはきっと、言葉で説明できることではないのだろう。

 私だって、フレイグ様やラフードに対して好印象を抱いている理由を説明しろといわれて、すらすらと言葉が出てくる訳ではない。もちろん、理由はつけられると思うが、それが正しい気持ちなのかどうかは微妙な所だ。


「そして、ある時から俺はあいつと戦場に立つようになっていた。いつの間にか、背中を預けられる友になっていたのさ」

「そうですか……」

「俺達は協力して、魔族と戦った。あの時のことは、今でもよく覚えている」


 フレイグ様とラフードの絆は、人間と魔族との戦いの中で育まれたものであるらしい。

 だからこそ、それはとても固いのだろうか。そんな荒れ狂う戦乱の中で信頼できるというのは、かなり特別な絆であるような気がする。


「そうやって戦い抜いた結果、魔族と人間の戦いは終結したんだ。結果は、人間の勝利……魔族を奴らの住む世界まで撤退させることができたんだ」

「戦いが終わった? えっと……」

「ああ、人間の魔族の戦いはそこで終わったんだ。だが、俺達の戦いは、終わっていなかったんだ」


 フレイグ様の言葉に、私は驚いていた。てっきり、二つの種族の戦いの中で、ラフードがあの姿になったと思っていたからだ。

 だが、人間と魔族の戦いは終わった。そこから、さらなる戦いが二人を待っていたようである。

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