第11話 憧れ
『栄恵子さんへ』
くるりと手紙をひっくり返せば、そこには差出人の名が書いてあった。
『上浜かおる』
そのとき、スマホの通知音が鳴った。
驚いた拍子に携帯を手に取ると、ロック中画面にメッセージが浮き出ていた。
『上浜薫:
凛久、久しぶり!
クラスグルから追加させてもらったんだけどさ、今日空いてるか?』
俺は驚きのままに、スマホのロックを解除した。
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泡沫の人魚姫 第11話 憧れ
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「よ! 遅かったじゃん」
燦々と輝く太陽が、アスファルトを焦がすように照らし続けている。真夏の最も暑さを感じる時刻に、上浜は俺を呼び出した。
海へと続く階段前の安全柵に腰かけていた彼は、俺の来訪に気づいて立ち上がる。
「遅いってお前……ここに着いてから連絡なんてするからだろ」
「確かに、それは失策だったな」
俺がメッセージを返すや否や、『いつものとこ居るから、今から来いよ』と連絡をしてきたこいつには、呆れを通り越して笑えてくる。俺が支度に時間の掛かかる人間、もしくは外せない用事があった場合はどうするつもりだったのだろう。
上浜の服装を見れば、Tシャツにハーフパンツという少しこじゃれた格好をしてはいるものの、こちらへと向ける笑顔は相変わらず無邪気なままだった。
この前の気まずかった空気も、母との間に起こったであろう何かさえも、まるで感じさせない雰囲気だ。
さて、いつ話を切り出そうか。
突然の連絡に急いで家を出てきたため、こいつが母に送った封筒の中身を見る暇もなかった。
念のため持ってきたその手紙は、ズボンのポケットに忍ばせてある。
タイミングを見計らう俺の心情を知ってか知らずか、上浜は一歩俺の方に詰めてきた。
「そういやさ、夏休みの宿題終わったか?」
そうだった。こいつはそういうやつだった。
階段の踊り場に無理やり連れてこられたときも、緊張感をぶち壊す上浜の姿に俺は呆気にとられていた。
いや、今回は少し違うか。俺が母さんとの接点に気づいたことを、こいつはまだ知らない。
海での仲違いの後一発目で、この態度もどうかと思うが。
微かに肩の力が抜けた俺を気にすることなく、上浜は話し続ける。
「俺はまだ終わってない!」
そんな胸を張るように言われても仕方がない。
「そんでさ、現国で作文の課題あったろ? 確か、『自分の人生を変えた出来事』ってやつ」
「ああ、そうだったか」
最終日に渡された課題の一覧を思い返す。現国の欄には漢字テスト用の勉強と共に、作文の課題もあった。400字詰めの原稿用紙10枚分。結構、骨の折れる課題だと思う。クラス中からブーイングも出ていた。俺もまだ書く内容が定まっておらず、後回しにしていたものだ。
それはそうとして、こんな遠回りに話題を振ってくるのはどうしてだろうか。てっきりシレーヌの話になると思っていたため、拍子抜けした。
こいつは何を考えているのだろう。軽く様子を伺おうと、太陽を背に向けるように立つ上浜の方へ目を向ける。
想像以上の眩しさに思わず腕で目元を隠した。
上浜の顔は逆光で暗く照らされて、うまく表情が伺えない。
「俺、その作文にお前の母さんのことを書こうと思ってんだ。いいよな」
目を見開いて動揺する俺の姿を確かめるように、上浜の体はこちらに真っすぐ向き合っている。
俺は数秒間もの間、無言の姿勢を崩せずにいた。
「小さい頃、お前の母さん……恵子さんに会ったことがある」
正直、ここでこの話を持ってきたあいつの真意が分からない。
返す言葉の見つからなかった俺は、ポケットから一通の手紙を取り出した。
「これだろ」
何年も前のものだというのに、未だに色褪せず残り続ける青に上浜は話の手を止めた。
「まだ……残ってたのか。話長くなりそうだしさ、どっか座るか」
「ああ」
上浜に促されるままに、近くの安全柵に二人して腰かける。
ようやく見えたあいつの顔は驚きと喜びとを混ぜ合わせたような表情で。整った眉を下げて笑っていた。
俺は、なんとも言えない気持ちになった。
「父さんが保管してたらしい。母さんが手紙を貰った時、嬉しそうにしてたって」
「そっか……よかった」
俺が手に持つ青い封筒を懐かしそうに見つめるあいつの姿が、少しだけ恨めしく思えた。
こいつはきっと、母さんに助けられたあの少年なのだろう。溺れていた子供を恨むなど筋違いだとわかってはいるものの、上浜が間接的に母さんを死に追いやったという事実が頭を離れない。
別に、今更文句を言うつもりもない。もう終わったことだ。
それに、こいつは母さんが死んだことを知らないんだ。
母さんも、その子が罪悪感を抱かないようにと事実を隠すことを望んでいた。
十分納得したはずなのに、気持ちの悪い違和感が心の中に残る。
それが表に出てしまったのだろう。上浜に対しても悪意の籠った言葉を投げてしまった。
「お前、母さんに助けられたんだろ? ほんと人騒がせだよな、そういう子供。溺れるくらいなら、初めから泳がなきゃいいのに」
大抵のことは、言ってしまってから後悔が湧き出てくるものだ。
しまったと思った頃には、もう遅い。
呆気にとられた表情でこちらを見つめる上浜の視線が酷く痛かった。
なにか弁解をと口を開いたときには、既にあいつが話し始めていた。
「何か勘違いしてね? 俺、その場にいただけで溺れた奴じゃないんだけど」
上浜は少しだけ困ったように、気まずい視線を俺へと向ける。
「俺の友達が溺れたんだ。凛久からしたらさ、そんなの関係ないだろうけどな」
すまん。と悲し気に口を結んだあいつの様子に、俺も開きかけた口を閉じた。
「見てみろよ、その手紙」
俺の手にある青い封筒に視線を向け、上浜は手紙を開けるように促した。
俺は、ゆっくりと封筒の先を開いていく。
中から出てきたのは、小学生らしい元気な文字で綴られた数枚の便せんだった。
その一枚目から丁寧に目で追っていく。
『恵子さんへ
この間は、おぼれていた友だちを助けてくれてありがとうございました。
みんながいなくなっちゃいそうでこわかったぼくに、声をかけてくれてうれしかったです。
ぼくも、恵子さんみたいに誰かを助けられるようなかっこいい大人になりたいです。
あのあと、疲れて倒れてしまったとお母さんから聞きました。早く元気になってください!
本当にありがとうございました。
上浜かおる』
「な?」
いつの間に立ち上がったのだろうか。上から降ってきた上浜の声に俺は顔を上げる。
「俺、お前の母さんに憧れてんだ。結局水泳は向いてなくてさ、とりあえず筋肉付けとこうとテニス始めたら結構ハマっちゃって」
上浜はラケットを振り回すようなジェスチャーを見せ、軽く笑顔を浮かべている。
「それで、俺に近づいたのか?」
何でもない風に話しを進める上浜に、俺は切り込むような質問をした。
あいつは何と答えるだろう。
静かに、返答を待つ。
少しだけ、空気の凍り付く心地がした。
というのはほんの数秒で、
「そうじゃないけど、そうとも言えるかもな!」
またしても気の抜けた返事が返ってきた。
確かにな、と暢気に考え込む上浜の姿に俺の毒気も抜かれていく。
「俺、恵子さんの名字は知ってたし、手紙の返事で凛久って名前の息子が居ることも知ってたからさ、高校入ってびっくりしたんだよ。まさかクラスに居るとは思わないじゃん」
入学当初のことを思い返してみれば、思い当たる節がある。
適当に済ませる予定だった自己紹介で俺が名前を言った後、右の方から変に咳き込む声が聞こえた気がした。放課後には、上浜に不自然に絡まれた記憶もある。
「上浜さ、初めのほう凄い絡んできたよな。それでお前に対する苦手意識も増した」
「ひどくね? まあ、凛久は俺たちと関わるのがあんま好きじゃないみたいだったし、話せそうな時だけ話しかけるかってなったんだけど」
確かに、最近は話のついでに声を掛けられることが多かった。こいつなりに気を使っていたのか。
「テニス部の奴らと席も近かったから、あんまり頻度は変わってないけどな」
「ごめんて……」
形ばかりに両手を合わせて謝る上浜からは、少しの誠意も感じられない。
「けどさ、凛久も普通に話してたじゃんか。俺、悪くなくなくない?」
ほらな。
っていうか、なくなくないってなんだよ。二重否定に疑問でお前が悪いことになってんぞ。
「ただの付き合いに決まってんだろ」
渾身の呆れた態度で言葉を返せば、口を尖らせた上浜が追撃を始める。
「うわぁ……さすが凛久、捻くれてんな」
「……」
わざわざ言い返すのも面倒だからと無言を貫いた。
頑なな俺の様子に軽くため息をついた上浜は表情を緩め、俺の隣に座り直す。
「そんな時だったんだ。お前を海で見かけた」
空気が変わったのを感じ、俺は顔を上げた。
「凛久、シレーヌちゃんを探すのに困ってただろ? 俺さ、ずっと恵子さんみたいに誰かの力になりたいって思ってた。だから、今がその時だと思ってお前に声をかけたんだ」
「……」
「ちょっと強引すぎたかもしれねーけどさ……お前もお前で酷くなかったか!? 結構メンタル傷ついたんだぜ!」
「強引な自覚はあったのか。そんな風には見えなかったけどな」
苦手な相手に距離を詰められた時の対応として、俺の判断は間違っていないはずだ。
不服そうな顔でこちらに目を向ける上浜をスルーした。
しかし、それはなんてことなかったらしい。
「まあ、それは許す」
簡単に許されてしまった。
「許すのか」
あまりに早い手のひら返しに思わずツッコんでしまう。
上浜はその様子すら全く気にも留めず、笑顔を浮かべていた。
「結局はさ、シレーヌちゃんを一緒に探すことになっただろ? そんで、お前が彼女の為に動いてんのが、誰かのために行動する姿が」
「恵子さんと重なって見えた」
満足げに笑う上浜の姿が眩しく思えた。母さんの中にあった『何か』を俺の中にも見つけてもらえたようで、なんだかむず痒い。
「……そっか、母さんに」
「で、俺は叫んだ」
「は?」
唐突に話をぶった切った上浜の言葉に、思わず口が開く。
「俺、海に向かってあの時叫んでたろ? なんか気持ち高ぶったときとかやらねえ?」
どこの小学生男子だお前は。
思い返せば、声にならない声を上げていたかもしれない。感情が高ぶった結果だったかと納得する。しかし、奇行も奇行だ。普通は恐いからな。
「ああ、なんか奇声あげてたやつ?」
「せめて雄叫びとかにしてくれよ。とにかく、お前がいい奴で嬉しかった。それで、シレーヌちゃんのこと協力しようと思ったんだ。だから……」
また空気が変わった。
真剣にこちらを見据える上浜の姿に、思わず息をのむ。
「シレーヌちゃんと、もう一度話し合ってみないか」
物悲し気な彼の声音が、真っ直ぐに耳に入ってくる。そんな小説では大切なシーンであろう場面に似つかない演出が一つ。
自分の手元に視線を落とせば、なんと上浜の手が俺の腕を掴んでいた。
嫌な予感に背中の汗が流れていくのを感じた俺は、振り解こうと腕を振り回す。しかし、一向に剥がれない。
先ほどの悲しげな雰囲気はどこはやら、当の上浜はニッコニコである。
「んだよこれ!!!」
上浜につかまれた部分を指さして、キレるように叫んだ俺は悪くないと思う。
「何って、これからシレーヌちゃんとこ連れてこうと思って捕獲しただけだぜ?」
「今何時だと思ってんだよ……夜まで5時間以上もあるぞ」
「なら待つか」
「いや、待てるかよ……」
「なんだなんだ、凛久もそんなに待ち遠しいか!」
もはやツッコむ気力もない。仕方なくすべてを諦めた俺は、日陰を目指して歩き始めた。上浜は腕を掴んだまま、こちらについてくる。
なんだこれ……
水筒とか持ってきてないんだけど、どうしろと?
炎天下の中ずっと待てばいいのか……?
加えて気温はとても高く、掴まれている部分は既に汗だくだ。肌がべたついて気持ち悪い。
非難の気持ちを込めて上浜を睨むも、どこ吹く風だった。
ひっそりと腹を立てた俺は、上浜に聞こえないギリギリの音量で文句を言うことにした。
「このクソ腕力ゴリラ……腕折れたらお前のせいだからな」
「もう喉乾いてきたし……本当なら今頃クーラーの効いた部屋で……」
「ったく、はなからシレーヌには会うつもりだったのに……」
「それ、マジ?」
気づけば目の前に上浜の顔があった。
野郎の顔面ドアップに驚いた俺は、距離を取ろうと体ごと後ろに引いた。が、俺を引っ張っていた上浜ももれなくついてきた。
二人してバランスを崩した俺らは何とか支えあいながら、倒れる寸前で踏ん張り切った。
「もしかして、俺の握力無駄遣いしただけ?」
「ほんとにな」
残念そうに、上浜は俺の腕を解放する。
掴まれた部分が少しばかり痛んだ。
赤くなった場所をさするように腕を撫でると、傍で脱力していた上浜を睨みつける。
事実、あいつの行動は本人が嘆く通り無駄足そのものだった。
けれど、もし俺一人であれば、
『シレーヌに会う』
この決意は揺らいでいたかもしれない。
俺の決意が確固たるものになってしまったのは間違いなく、目の前のこいつのせいだ。
「……りがとな」
上浜の耳に届かないことを願って、一言小さく呟いた。
*
あれから近所のファミレスで時間を潰した俺たちは、夜の九時を過ぎた頃に海へと戻ってきた。
シレーヌが現れるのは『夜』という漠然とした情報の中、俺たちは待ち続ける覚悟でいる。
そもそも、今日現れるのかも定かではない。以前だって何日も見ない日があった。
だとしても待つだろう。
以前だってそうしたはずだ。
海へと続く階段を降り、暗がりの中、砂浜に足を下ろす。
堤防に沿って立ち並ぶ街灯の光を頼りに、あたりを見渡した。
シレーヌの名前をいくら呼ぼうとも、返ってくるのは波の音だけだ。
俺たち二人は場所を変えながら、あたりを捜索した。
捜索からしばらくして、後ろをついてきていた上浜の足音が聞こえなくなった。
不思議に思った俺は振り返ろうと体を傾ける。
そのとき、代わりに背後から喜びの色を乗せた声が聞こえた。
「おい、凛久! あれ!」
振り向けば、嬉しそうに笑みをこぼした上浜が階段の上の方を見つめていた。
ゆっくりとその視線を辿っていく。
海へと続く階段の上に、白い影が一つ。
揺れる長髪をたなびかせ、虚な顔でこちらを向く彼女の姿があった。
「シレーヌ……」
声が届いたのだろうか。
ぼんやりとしていた彼女の表情は一瞬のうちに活気を取り戻した。目を大きく見開いた驚きの表情を浮かべ、勢いのまま階段を駆け降りていく。
「凛久……? 凛久!!」
裸足で駆け抜ける、彼女の足は止まらない。
砂を蹴るようにして、こちらへと向かう彼女の顔は美しく歪んでいた。
「凛久!!」
抱きつくように俺の元へと駆け込んできたシレーヌの体重を全身でしっかりと受け止める。
「凛久……」
俺の肩に顔を埋めるように張り付く彼女をどうするべきかと、困惑する手が右往左往する。二巡くらいしてようやく、シレーヌの背に手を回すことができた。
軽い気恥ずかしさを覚えた俺は、上浜に茶々を入れられる前にシレーヌを引き剥がそうと考えていた。
「嫌われたかと思ったの。もう会えないんじゃないかって」
その言葉につい、引き剥がそうとした手が止まる。
「……よかった、凛久は私に気づいてくれた」
シレーヌが小さく呟いた一言が違和感となって残った。
「俺は? もしかして、何か思い出したのか?」
様子を伺うように優しく声をかける。
シレーヌはゆっくりと顔を持ち上げると、キョトンとして首を傾げた。
「……私何か言ったかしら?」
「……いや、気のせいか」
「……ふふっ」
いつも通りに微笑むシレーヌの姿に、少しの違和感は吹き飛んだ。
彼女の笑顔に安堵した俺は、シレーヌの肩を掴んで少し距離を取った。
さて、ここからが本題だ。
なぜ、シレーヌは神谷碧の名を恐れたのだろうか。
一度拒絶されてしまった話題を掘り返すのは難しい。遠回りをして話を持っていくべきか、それとも単刀直入に理由を聞くか。
考えを深める俺をよそに、シレーヌはせっかくあけた距離を一歩詰めてきた。
「ねえ凛久、この前言っていた少女の話がしたいんでしょう」
眉をハの字に下げたシレーヌは、申し訳なさそうに言葉を続ける。
「本当は、凛久の話を聞きたいところだけれど……サイレンと同じなのよ」
サイレンと同じ。
唇を真っ青にして、何かに怯え続けるシレーヌ。
あのとき公園で見た彼女の姿が頭の中にフラッシュバックする。
「その子の名前を聞いたとたん、頭が割れるように痛くなったの」
「痛みを堪えようと、顔が強張ってしまったみたいで……ごめんなさい。けれど、貴方の頼みは聞けそうにないわ」
白いワンピースの裾を握りしめる彼女の白い手に力がこもる。きっと事実なのだろう。
彼女の正体を知るための手掛かりとして有用だと思ってはいたが、シレーヌ自身に悪い影響を与える存在を、無理に探る必要性は見いだせない。
神谷碧、思い出のシレーヌについてはいったん諦めるしかないのだろう。
結局、振り出しに逆戻りだ。
そんな俺の落胆が目に見えたのだろうか、上浜が励ますように肩を叩いてきた。想像以上に強い力で叩くものだから、前方に倒れかけた。
バランスを戻そうとする俺の様子が面白かったのか、シレーヌはくすくすと笑いだす。
その横では上浜も白い歯を見せている。いや、お前のせいだからな。
なんだか気が抜けてしまった。
軽く笑いをこぼし、二人に目を戻すと、上浜は靴を脱ぎ始め、シレーヌはワンピースの裾を結んでいた。
一体何をと思う暇もないまま、二人は大きく水しぶきを上げて、海へと駆けていく。
一人その様子を眺めていると、脛まで海に浸かった二人が同時に振り返った。
「「凛久も早く!!」」
自由な二人の様子にあてられてしまったのだろうか。
次の瞬間、裸足で駆けだす俺がいた。
夜の海に響き渡る、三つの笑い声。
決して忘れることのないシレーヌとの思い出。
今もなお鮮明に、記憶の中に残り続けている。
彼女との別れが、足音を立てて近づいていることも俺たちはまだ知らなかった。
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