第3話
「イザベラ、久しぶりね。とっても似合ってるわ」
「ふふん! そうでしょ。おばさま、だーいすき!」
「わたくしもイザベラが大好きよ」
『白雪が寂しがってるぞ』
鏡の一言に、慌てて白雪を見ると今にも泣きそうな顔をしている。
「イザベラ、わたくしの娘を紹介するわ。マルガレータ・フォン・ヴァルデック。白雪と呼ばれているわ。世界一大切な娘よ。仲良くしてあげてね」
イザベラはまだ六歳。きっと、白雪と仲良くなれるわ。
「はじめまして。イザベラ様。マルガレータと申します」
幼い子どもにも礼を尽くす。さすが白雪だわ! 白雪を誉めようとしたら、イザベラがテーブルにあるドリンクを手に取り白雪にかけようとした。
「白雪、危ないわ」
慌てて白雪を庇う。白雪は無事だったけど、わたくしは頭からドリンクを被ってしまった。
「……あ……おばさま……」
イザベラが真っ青な顔で震えている。白雪に危害を加えるなんていくら可愛い姪っ子でも許せない。
初めて、イザベラを睨みつける。
『落ち着け。周りが騒ついてる』
鏡の言葉で……落ち着いた。お兄様も、心配そうにしているわ。そうよ、わたくしは世界一美しい白雪の母親なんだから、これくらい美しく収めてみせるわ。
「イザベラ、白雪。怪我はない?」
「はい。わたくしは大丈夫です」
「……私も……平気です」
優雅に微笑む白雪と、怯えてオドオドしているイザベラ。
「イザベラは、白雪に飲み物を渡してあげようとしたのよね?」
「……え……あ……」
「ああそうだ。娘がすまなかった。白雪姫様、お怪我はありませんか?」
さすがお兄様!
ナイスフォローよ!
「なんともありませんわ。それより、お母様はご無事ですか?」
「ああもう! こんな時にもわたくしの心配をしてくれるなんてなんて可愛いの!」
心で思うだけのつもりだったのに、思わず声に出てしまったわ。そしたら、お兄様が吹き出した。
「カタリーナ、とりあえず着替えてこないか?」
「平気ですわ。これくらいなら魔法で汚れを落とせます」
魔法で汚れを落とすと、お兄様が目を見開いた。
「……魔法を、堂々と使って良いのか?」
そういえば、以前は魔法を隠れて使っていたわね。お兄様とイザベラしか、わたくしが魔法を使えると知らなかったわ。
フリッツ様が笑顔でお兄様に説明して下さる。以前の腑抜けた様子はない。やるじゃない国王様。
「カタリーナが魔女だと、国中の者達が知っております。問題ありませんよ。私の姉も魔女でしたから、我が国は魔女への偏見はほとんどありません」
「お母様は凄いんです。本当に必要な時しか魔法をお使いになりませんし、自分の為には滅多に使わないんです。お母様が魔法をするのは、いつも誰か困った人の為なのですわ」
もう! 白雪ってば過剰評価し過ぎよっ!
可愛いわ! うちの娘が世界一可愛いわっ!
「そうか。妹を大事にしてくれて感謝するよ。良かったなカタリーナ。いい人と結婚できて」
「素敵な娘ができて、とっても幸せなんです。白雪は世界一可愛くて、美しいのですわ。それに努力家ですし……」
いつものように白雪を誉めると、周りは苦笑いをしている。だけどお兄様は嬉しそうで、イザベラは悲しそうだった。
「イザベラ様、パーティの後に良かったらわたくしとお話しませんか? お母様のお話を、たくさん聞かせて下さいな。もちろん、お母様もご一緒に」
白雪の優しい提案に、イザベラはコクリと頷いた。
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