第16話 ど、どうゆうことですの!?

「ちょっ!? いきなりかよ!? くそ―ミューイ!」

「え……?」


 驚く俺の声をよそに、迫りくる火球。

 手加減している、という割にはものすごい速さで距離を縮めてくる火球に軽く舌打ちしてみせると、ミューイを押しのけて魔法を撃つ構えを取る。


 避ける暇はない。

 もっと言えば、避けたところでもう一回撃たれてしまえばおしまいだ。


(学校一のエリート相手にどこまで通用するか分からないけど……こうなったら、本気で打ち消すしかねぇ!)


 そうして、ラングース先輩の放った火球を打ち消す為、俺も同じように火の魔法をその手に集め始める。今までに師匠から学んだものを全てぶち込む勢いで魔力を込めていくと、徐々にそれは大きなものへと変わっていく。


「………………………………………………はい?」


 ラングース先輩とは違い、師匠から習った青い色の炎の魔法……俺が得意としているその魔法を構えた途端、それを目にしていたラングース先輩を始めとした生徒達から何やら声が上がっていた。


 とはいえ、それにわざわざ構っている暇はない。

 俺は全力で青い火球をラングース先輩の放った魔法へと向けると、力の限り叫びながら魔法を放った。 。


「俺だって、あのぐうたら師匠の弟子の一人なんだ……田舎者とはいえ、やってやらあ!」


 周囲に困惑した空気が流れる中、せめて軌道を変えて直撃だけは防ごうと、消極的に撃った俺の魔法は徐々にラングース先輩の放った魔法へと迫ったのだが―次の瞬間、俺の火球にぶつかったラングース先輩の魔法が「ポンッ」という音と共に簡単に消え去ってしまった。


「………………………………………………あれ?」


 思いのほか簡単に消え去ってしまったラングース先輩の魔法に、呆気に取られてしまった俺は思わずそんな声がこぼれた。いや、確かに手加減してたって言ってたけど……こんな簡単に消えるか?


 さらに俺の魔法は全力で放ってしまった為、その勢いを消すことなくラングース先輩の方へと向かっていってしまう。


「ひっ!? な、何なんですの!?」


 すると、ラングース先輩は涙目になりながら再び火の魔法をその手に作り上げると、俺が放った青い火の魔法に何度も魔法をぶつけていた。


 しかし―


「き、消えない……? ど、どうゆうことですの!?」


 どうやらラングース先輩の魔法では俺の魔法を打ち消すことはできないらしく、絶望した彼女はぺたりと腰を抜かして地面に座り込んでしまう。


「やべ……」


 エリートが俺の魔法なんかに苦戦するわけないと思ってたけど……

もしかして、今日は不調なのか?


 理由は分からないが、ラングース先輩に火を放ったのは俺だし、このままじゃ彼女が危険だ。


 俺は師匠から教わった魔法の一つ、身体強化の魔法を使うと、座り込んでいたラングース先輩の前まで一気に距離を詰めた。

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