第1話
この町はど田舎でも、都会でも、そのどちらでもない、『半田舎』だ。
例えば、そうだな
コンビニはあるが駐車場はバカ広いし、かといって田んぼだらけな訳じゃない。
俺は駅から徒歩10分ぐらいのところにある住宅街に住んでいる。近くにはまぁまぁ大きめな公園があり、セミやカブトムシ、その他昆虫などは夏になればたくさん取れる。しかし、害虫も多く出る
駅からはバスでショッピングモールに行ける。スーパーもある。しかし少し歩けば直売所もある。こんな感じで便利でもある。
田舎だけど田舎じゃない理由はわかっただろうか。この町は本当に中途半端な町なのだ。
そんなことを考えながら俺は、親父の墓参りに来ている。
俺の親父は優しい人だったが、ある日、事故で死んでしまった。今思えばほんとにすごい父親だったと感じる。家計を支え、まさに一家の大黒柱だったのだ。
俺が生きる意味を見出せなくなったのは親父が死んでからだ。
「親父、とりあえず今日も来たが生憎この町は退屈だよ。何もすることがないし、中途半端だ。なぁ親父、生きる意味ってなんなんだ?」
誰に問う訳でもなくただ、呟いた。
「何かを残して死ぬために生きてるんじゃないの?」
後ろからいきなり、知らない声に話しかけられた。
「誰だ?君は」
そこに立っていたのは、白いロングドレスを身に纏った、まだギリギリ小学生ぐらいの少女がそこに居た。
「あ、ごめんなさい!びっくりさせるつもりはなかったの!どうもはじめまして。私は……」
そこまで言うと少女は黙ってしまった。名前がわからないのだろうか。
「ごめんなさい!名前はある理由があって言えないんです……。私の名前は『レイコ』って呼んでください!幽霊なので……」
俺は幽霊であるという言葉に驚いてしまった。驚きすぎて水の入った桶をひっくり返してしまったぐらいだ。
「ゆ、幽霊?それは本当なのか?」
俺が聞くとレイコ(?)は
「はい!ほら、私の足元をよく見てください!影がないじゃないですか。」
言われればそうだ。影がない。しかも……
「なんかちょっと浮いてないか?」
「あ、よく分かりましたね!すごいです!あなた幽霊を見る目がありますよ!」
いや、幽霊に幽霊を見る目があるって言われても……
そして俺はふと、思った。
「こんなことを聞くのはダメかもしれないが、君はどうして死んだんだい?」
俺が聞くとレイコは困ったような顔をして
「ごめんなさい、それもまだ言えないんです。ある約束事があって。」
「……すまない。」
悪いことを聞いてしまったと思う。もし、レイコの言った約束事というやつがなくても死因は言いたくはないだろう。
「別にいいんですよ!そんな、気にしなくて。それよりも、あなたの名前が知りたいです!」
「俺の名前はシエル、
「シエル君!よろしくね!」
そうして俺は謎の幽霊少女、レイコに付き纏われることになったのだ。
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