vsマクワ Turn‐2

 マクワもその全容を拝むのは初めてだ。シルクロードは指を動かし、肉体の感触を確かめている。


「フフフ、クハハハ。よくやった。これで我も完全復活だ。褒めてつかわす。では、手始めに羽虫の始末と行こうではないか」


「バトル! 《メガモルフォーゼ・シルクロード》で《ムーン・ウルフ》を攻撃!」


「気を付けろよ、アオバ! 《キャタピラートルーパー》の効果で《シルクロード》のパワーとガードも上がってるからな!」


「分かってる!」


 糸が《ムーン・ウルフ》の四肢に絡みつく。《シルクロード》が指をゆっくりと動かすとギリギリと糸が張り、悶えるほどに深く食い込んでいく。


「《メガモルフォーゼ・シルクロード》がバトルで相手アバターを破壊した時、ベースカードの数だけアオバのカーネルゾーンのカードを破壊する」


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……

《メガモルフォーゼ・シルクロード》

┣━━━━━━━━━━{アバタータイプタグ4コスト2クラッシュ6000パワー5500ガード

●〔ORオーバーライド:{タグ4コスト以下}アバター1体〕

■このアバターがバトルで相手アバターを破壊した時、発動できる:このアバターのカーネル以外のベースカードの数だけ相手のカーネルゾーンのカードを破壊する。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……


 アオバと《ムーン・ウルフ》を結ぶ糸は2本――――。


「マズッ……」



『ストリング・オブ・フェイト!!』



 《ムーン・ウルフ》が四散すると同時にアオバのカーネルも吹き飛ぶ。



(××◆◆◆◆)アオバ VS マクワ(★◆◆◆)



「があっ……」


「いいぞ、実に心地よい断末魔だ。もっと喚け、泣き叫べ。死よりも恐ろしい恐怖を味わせなければ我の気が済まぬ」


「…………マクワ、いつまでこんな奴に従うつもりだ?」


「ずっとだ。アオホシ園を守るために必要なら」


「それで、サバサキが持ってるカードを食わせる? たかが知れている!」


 「俺の全財産だぞ……」というサバサキの小言は無視して続ける。


「その後はどうする気だ? カードを持続的に供給しなきゃいけないんだろ」


。地の利はこっちにあるんだからそれくらい簡単でしょ。そう、イルミナティだ! イルミナティのせいにすればいい。犯罪組織の余罪が増えたところで誰も気に留める人なんていない」


 血眼になって訴えかける姿からはいつもの冷静さは失われていた。到底受け入れられない提案にアオバも呆れてしまう。


「今のマクワをババアが見たら、きっと悲しむぜ」


「うるさい! アオホシ園の子どもたちは僕が救うんだ。アオバだって例外じゃない。アオホシ園を飛び出して好きに夢を追いかければいいじゃないか!」


「オレのためだって言いたいのか?」


「そうだ!」


 アオバは握り拳を固める。


「…………勘違いするなよ、マクワ。オレはアオホシ園を捨てて、『七つの海を統べる者ワールド・ダイバー』を目指してるんじゃない。子どもたちにもオレの背中を見ていて欲しいんだ。こんな状態でオレだけのうのうと夢を追うだなんて虫のいい話、受け入れられるかよ」


 マクワは気圧される。


「……タ、ターンエンドだ。さあ、アオバのターンだよ」


「ターン終了時、《虎刈とらがぎつね》のステータスは元に戻る」


 《ムーン・ウルフ》の見るも無残な姿を前にしてポンっと術が解ける。ガタガタと震えながらその場に縮こまる。


オレアオバのターン、ドロー! 4コスト、《魔法少女まほうしょうじょ ねもね》!」


┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……

魔法少女まほうしょうじょ ねもね》

┣━━━━━━━━━━{アバタータイプ魔法タグタグ4コスト2クラッシュ5000パワー5000ガード

■【核醒】自分{《魔法少女まほうしょうじょ》}アバターがバトルで破壊される時、キャッシュゾーンのカード1枚を捨てて発動できる:そのアバターの破壊を無効にする。

┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━……


「主と共に歩む希望の一片ひとひら――――《魔法少女まほうしょうじょ ねもね》!!」


 スカートを揺らし、フィールドに降り立つ。強い味方に縋るように《虎刈とらがぎつね》は《ねもね》の太腿に隠れた。


核張カーネル・エクステンド!」


 アオバから受け継いだカーネルをそっと胸の奥に取り込む。



(◆◆◆★)アオバ VS マクワ(★◆◆◆)



「頼んだぞ、《ねもね》! 一発強いのぶちかましてやれ!」


「はい!」


「バトル、《虎刈とらがぎつね》と《魔法少女まほうしょうじょ ねもね》でマクワを攻撃!」


『シードバレッド』

『妖狐変化の術』


 光弾が舞う中、《虎刈とらがぎつね》は漬物石に変化して、上空から地面に押し潰す。



(◆◆◆★)アオバ VS マクワ(★×××)



「ターンエンド」


「どうして分かってくれないんだ…………」


 マクワは伏したまま土を握る。


「代わりに誰かがこのアオホシ園を支えなきゃいけない。それは僕がやらなきゃいけないことなんだ!」


「何故、全てを一人で背負い込む必要があるのでしょうか?」


「そ、それは…………」


「マクワさんはアオホシ園のために尽くされています。世話に料理に掃除。感謝してもしきれないほどです」


「…………」


「もっとみんなを頼れ。オレならそうする。マクワも頼るし、ババアも頼る。誰か一人に押し付けようなんて考えてない。むしろ、《シルクロードソイツ》にマクワが取られる方が困る!」


「そうか、一人で空回りしていただけなのか……。僕はてっきり……」


「だって、マクワが居なくなったら、オレがやる羽目になるからな」


 犬歯を見せるようにニシシと笑う。


「ハハハ、アオバらしいや。…………そうだな。もっと、みんなと話し合うべきだった」


 憑き物が落ちたように清々しさに包まれる。


「……………………もう、終わりにしよう」


 この戦いに意味は無くなった。マクワは降参サレンダーを示すためBCDに手を伸ばす。しかし、ピタリと動かなくなる。


「貴様はそれでいいのか?」


 《シルクロード》の糸が腕に食い込む。


「誰かを傷つけなくて済むなら、そっちの方がいいに決まっている」


「白紙に戻ったに過ぎぬ。より確実なプランが見えているのに現状維持を選択するとは、やはり人間は愚かだな…………仕方あるまい。ここからは我が引き継ぐ」


 糸を伝って黒いもやがマクワを覆う。


「てめえ、マクワに何する気だ!?」


「なに、抵抗されるのは面倒だから意識を奪ったに過ぎない。この戦いが終われば、用済みだ。合わせてそこの小娘も頂くとしよう」


 するりと糸が解けても、虚ろな目をして動かない。


「お前、マクワに手を出したらどうなるか教えてやるよ!」


「残念だが、次は我のターンだ――――」

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