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ガラスのリノウへの応援コメント
美しい物語でした。和人さんの側に立って読んでいると、生々しい咳の描写の感覚と呼吸の中に彼が昌を見る特別な視線が自分に馴染んできます。長く苦しい状態は既にどこか慣れたものになっていて、か細い自分の残り僅かな生命を確かに感じている。それとは対照的に芯があって活力があって温かい昌。彼のことを考えている間、あるいは彼が目の前にいる間なら遠くない死を一時でも忘れられる。けれど、戦禍はあっけなくもうひとたびの桜を奪う。
印象に残ったのが光の描写でした。夕陽の生む樹影の中の桜は鮮明で、夕陽の色だけが溶け込んだ白黒写真のようで。最後に昌が和人さんのもとを訪れた時に桜がまだ花開いていなかったのは、夕陽が無かったからかもしれないと考えてしまいました。戦艦の背後に沈む夕陽、その時桜は開けど二人は同じ場所で見られない、と。二人のやり取りが手紙だったからこそ和人さんは脳裏に何度も昌の姿や声を描いたのかもしれません。リノウを絡めたガラス越しの光も見事で、レコード盤の反射から鱗一枚の反射まで細かく散乱するようで、思い出、幻想、悪夢とIFの夢、涙の全てが混ざったような光景でした。その中で着実に和人さんの時間は動いて、最後の場面へ。
軽くなる和人さんの身体が思い描いたひと時を表すのに「儚い」「美しい」といったありきたりな言葉しか思いつかないのが申し訳ないです。上手い下手ではなく二人で踊ることの意味が和人さんにとってはあったのだと思います。最後に昌の軍服の色が現実の色味に染まること、この描写が美しさに深みを出していると感じました。残ったのは悪夢のそれではなかったはず、和人さんの感覚が一つずつ消えていって、描いていた幸福だけがきっと残ったはず、そう思います。
大変遅くなり申し訳ありません。この度は自主企画にご参加いただきありがとうございました。
作者からの返信
お読みいただきありがとうございます。とても丁寧に読み込んでいただけて嬉しい限りです。
「リノウ」という字を見たときにキラキラした言葉だけどどんな意味なんだろうと思ったのですが、企画ページに造語であると書いてあったおかげで最初のイメージを最大限に活かすことができたと思っています。むしろあの注意書きがなかったらこのような話にはなっていなかったかもしれないです。
私もkinomi様が主催されている回に参加できて良かったです!
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ガラスのリノウへの応援コメント
読み始めて最初に感じたのですが、物静かで飾り立てない文章表現が染み入るように脳内に入り込んできて自然と物語の景色が見えてくる気がしました。
終盤の、悪夢にうなされる日々から一転して「和人」さんと「昌」少年の過ぎ去った日々の想い出に根差したイマジネーションが流れていくあたり、特に二人でいつまでもレコードに合わせて踊るシーンは異性同性関係なしに慕い慕われる者どうしの魂の交わりと言えるような、ただただ美しい景色に感動です。
この終盤の描写があるいは「和人」さんの末期の炎の熾りなのかなと思うと、美しくもなんとも物悲しい物語です。
末筆となりますが企画に参加いただきありがとうございます。
作者からの返信
控えめとは言ってもBLなので、企画的に求められてるものじゃなかったらどうしよう……と思いつつ参加したのですが、そう言っていただけて嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!