僕の彼女は積極的な可愛い幼馴染。

さとうはるき

第1話 朝

「……隼人。朝だよ。起きて〜」


 自身の体がぶるんぶるんと揺れる。その振動で目が覚めた。


「ルカちゃん、おはよ……ふぁぁ〜」


 あくびをしながら時計を見る。いつもの起きる時間よりかなり早い。


「今日は超早いね。どしたの?」


 ベッドで寝ていた僕は上半身を起こした。ルカちゃんは何故かモジモジしている。恥ずかしそうにしているのは珍しい。


「あのね、ルカと隼人が付き合ってもうすぐ一ヵ月だよね」


 ルカちゃんは生まれた時からの幼馴染。同じ病院、同じ日に生まれた。しかも家は隣。親は幼稚園の頃からの仲良し友達だったらしい。


「もう一ヵ月かぁ。早いね」


「うん。だからね、一ヵ月記念にチューしよ。んっ」


 ルカちゃんは目を閉じて、柔らかそうな唇を俺に向けた。


「それは、ダメです!」


 枕をルカちゃんの顔に押し付けた。


「むぐぐ……ぷはっ。どうしてチューしないの!」


「ルカちゃん。僕達はまだ中学二年生だよ。まだ十四歳だよ。チューは早いよ」


「う〜。隼人の真面目馬鹿ぁ。あざと可愛くすれば絶対チュー出来ると思ったのに〜」


 ルカちゃんは頬を膨らませ僕を見つめている。


「あざと可愛くしても効果はないよ。だって、ルカちゃんは可愛いからね」


「それって、ルカが可愛いすぎるってこと?」


「うん。そうだよ。ルカちゃんは世界一可愛い」


 ルカちゃんが笑顔になった。天使の笑顔だね。


「えへへ。嬉しい。じゃあ、私のこと、好き?」


「もちろん、大好きだよ」


「ルカはもっと好き」


「僕の方が百倍好き」


「私の方が恒河沙こうがしゃ倍好き! だから、チューしよ!」


「それは無理!」


「ぶうぶう!」


 ルカちゃんが口を尖らせている。エンドレスになりそうな雰囲気だったけど、タイミングよく時計のアラームがなった。


「おっと、起きる時間だね。今日も学校がんばろ〜」


 僕はベッドから降りた。座っているルカちゃんに手を差し伸べ、ルカちゃんを立たせる。


「隼人、いつチューしてくれるの? ルカはいつでもオッケーだよ」


「チューは二十歳になってからかな〜」


「とおっ! 遠すぎるよ!」


「そんなことないよ。あっという間に二十歳になるよ。だから勉強がんばろ〜ね」


 ルカちゃんはお世話にも頭が良いとは言えない。いつも赤点ギリギリ。


「はいはい。勉強頑張ります。高校受験もあるから、いつまでもこのままじゃダメだしね。あっ、そうだっ、決めた! ルカちゃんは決めました!」


「何を決めたの?」


「三年生になる前に隼人とチューします!」


「何故にそうなるの!」


「三年生になったら勉強に集中したいからです!」


 ルカちゃんは親指を立ててドヤ顔している。


「よし、顔を洗いに行こうかな。学校に遅刻しちゃうね」


 僕は扉の方へ歩き出した。


「はう。渾身の笑顔をしたのに無視ですか! 待って待って、隼人、待ってよ〜」


 ルカちゃん、僕達にチューはまだ早い!

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