第40話 私の為にその名声を使え
「ぁ、カルストゥーラ様!」
「……?」
〔お知り合い?〕
〔見覚え……がない気もないがよく分からん。〕
しかし、真っ直ぐと此方に迷いなく走ってくる女性の竜種を見る限り、少なくとも向こうは此方を多少なりとも知っているのだろう。何よりあの明るい表情から察するに少なくとも向こうはこっちに対して友好的な人物だろう。
こっちは知らないが。
「失礼、何処かでお会いしましたか?」
「え、あ、そっか。すみません、名乗るのが遅れました。先日、妖狐の国でカルストゥーラ様に助けていただきました氷凍龍です。」
「あぁ~……。あの時の。」
「はいっ! ここで騎士団をしておりますミュシェル・フューラと申します。あの時は本当にありがとうございました。今までお礼にも伺えず、このような形になってしまって誠に申し訳ありません。」
「いえ、お気になさらず。」
少し前まで忘れてたぐらいだしな。
大体、フリューデも何となく気付いているかもしれないが私にとって名前等にあまり意味を成さない。自分にとって必要な者以外の名前を覚える気がないから。
正直、こいつも氷凍龍でなければ名前を忘れるぐらいだった。むしろ、今もそれでもこいつの事を私は次の捕獲対象以外に何も考えていない。
帝国を作ったら宮廷護衛にするという名目で城に入らせてそのまま引き摺り込むのも一興、か。
「それで……フューラ殿。今、騎士団と仰られましたかな?」
「はい、私は直ぐ近くにある騎士団で働いてます。」
またとない、好機。
「少し……団長殿宛てに国王陛下より伝言を預かっておりまして。宜しければご案内願えないでしょうか。」
「団長に、国王陛下が……? 了解しました。では、此方へどうぞ。」
❖
「さぁ、サインを。」
その為、上手くこの氷凍龍を利用してやってきた団長室に扉が閉まったのを合図に、直ぐさま魅了の魔法を容赦なく放った。
その結果、例の騎士団長とやらはあのアルグトール・フェフューカである事が分かった。
アルグトール・フェフューカというのはどの種族でも、子供でも知っている英雄様。過去に竜種との大戦争において優秀な戦果を挙げた事で知られており、かなり昔に軍隊を抜けて何処かに所属したとは聞いていたがまさかこんな所に居たとは思わなかった。
欲しい、と思わない訳がない。
ついでにと、獲物である事に変わりはないミュシェルにも魅了の魔法を掛けたが……此方は少し様子がおかしい。
魅了をしたにも関わらず大人しく従順である事は変わらないのだが “落ち着き過ぎている” ミュシェル。元々氷凍龍というのは魔法耐性が特に高く、何より極寒な土地や時刻にはかなりの強さを誇るとは聞くがそれにしても大人し過ぎるのが気になる。
とにかく、アルグトールとの契約内容は無論、私への忠誠と信仰。彼自身の人権の譲渡。生涯、死後を含み私への隷属の3項目。続いて、こいつが敵に回ると非常に危険なので後で傍に置く為にも〈
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