第31話 次なる獲物を求めて王都の切符を得たり

「主様、失礼します。」

「ん、どうした。ようやっと王からの使いでも来たか?」

「流石は主様。その通りでございます。第3王女、ユユアの身柄はお渡ししたのですが……主様とお話ししたいと騎士の方が。」


 種を蒔き、やるべき事を全て伝えたユユアは早速動いたらしい。

 彼女を王国に返してしばらくした頃、騎士らしき者が話と。何かを届ける為にこっちへわざわざ来たらしい。呼び出さない辺り、多少は恩義を感じていると見ても良いのだろうか。

 多少面倒ではあるものの、読んでいた本に栞を挟んで椅子から腰を持ち上げて。お客様は応接間に居るそうなのでそのまま足を進めていく。


「にしても、随分ととろい人達ですね。自分達の主人が消えたら少しは慌てると思いますし、それに比例して結果を残せると思うのですが。」

「まぁ所詮は第3王女、ギリギリ政治に口を出せる存在だ。しかも第6王女まで居ると来たんだ、1人くらい王女が減っても苦労しないんだろうさ。何なら王子も第7王子まで居るからな。」

「……随分と残酷な国ですね。」

「人間っていうのはそういうもんだ。お前も、私の元へ来る前は人間と契約をした事ぐらいあっただろう?」

「……さぁ。あんなにつまらない日常の事など、忘れてしまいました。ここに居る以上の幸福など、今の私にはございませんので。」

「そうか。」


 へぇ……これが。


「初めまして、お客人方。私がこの屋敷の主、カルストゥーラ=ルエンティクだ。」


 一応は私の事を知っている者も居るようで、5人程居る騎士達は誰1人として生意気な口を利く訳でもなく。横柄な態度を取る訳でもない。

 まぁそれもそうだろう。これまでに何度か人間達の国に手を貸した事も、知恵を貸した事ですらもあるぐらいは。多少、これぐらいの態度を取ってもらわねば此方もそれなりにアピールをしなければならないのかと疑問を抱きすらもする。


「ほ、本日は我らが国王陛下より書簡をお届けしたく、参りました。」

「書簡、か。何だ、話があるから来いとでも?」

「も、勿論出来る限り最大限のおもてなしをする予定でありまして、是非ともお越し頂けないかとお願いに参った次第です。特に、ユユア王女様も命の恩人であらせられる貴方様に、是非街をご案内したいと。」


 ……ふむ。


 正直いつ死ぬのか分からない老いぼれ国王なんぞに用はないが、その他の子供達。王子や王女には用がある。

 場合によっては少しばかり手を出してそのまま国ごと戴いてしまうのも良いかもしれない。


「了解した。では、1週間後に其方へ行くとしよう。」

「国王陛下より、其方の書簡の方へ記載されているとの事ですが……王城の応接間に宿泊していただく形になりますので、ご到着になりましたら門番に其方の書簡に同封されている許可証をお見せいただければと思います。」

「あぁ、分かった。」

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