第4話

 最近、詩は霊に取り憑かれやすい人間の特徴をインターネットで調べた。

 あるサイトでは、過去になんらかのストレスを抱えていた人物と載っていた。詩には心当たりがあった。

 5年間住んでいた海外の日本人学校で、生徒や教師にいじめられていてそれがストレスで自殺を考えていた時期があった。これが原因なのではないかと詩は考えていた。


「一実坊弁存!一実坊弁存!」

 そう早太郎の声がして電車の中で寝ていた詩が目を覚ますと近くの席で2人の中年男性が喧嘩をしていた。

「一実坊弁存!目が覚めたか!」

「何?電車の中なんだけど」

 詩は怪しまれないように声を顰めた。

「早く止めに行け!また逃げたりするな!」

「いやいやいやいや!今回はどう見てもアウトでしょ?おじさんだし」

「いいから行け!馬鹿!」

 詩と早太郎がそう言い合っていると電車が駅に停まり、ドアが開くと駅員が入ってきて中年男性達の喧嘩を止めた。

 その様子を見た詩は

「ほら、駅員さんいるから大丈夫だよ」

 早太郎はガッカリして舌打ちをした。

「え?舌打ち?」

 駅員の仲裁により喧嘩は収まり2人の中年男性は電車から降りた。

 詩はほっとして自分が降りる駅まで電車に乗った。

 同時に詩は早太郎から解放されたいとも思った。


 喧嘩やいざこざがある度に、早太郎に体の自由を奪われる日々が続き、気がつくと8年も経っていた。詩は19歳になっていた。

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