第97話謝罪行脚(恐怖のデブるクッキー)前編
さて大量のデブるクッキーを持って謝罪行脚することになった。
お礼参りって報復、謝罪、感謝、仕返しを全部合わせた言葉じゃなかったのはちょっとショック。おかしい、姉に子供の頃に友人と一緒に教えられたんだがな、やられたら徹底的に潰すか、感謝しろと。まさか悪い意味でしか使われないとは・・・。どうりで中学のお世話になった先生に卒業式のときにお礼参りですと言って友人と一緒に感謝の花束を渡したら微妙な顔をされたはずだよ。
まあ秋夜姉さんの頭の中では同じことなんだろう。騙されたから仕返しするかって?あの暴君閻魔の姉にそんなことしたら死ぬから絶対にしない。湊と今なら眞子さんがお気に入りに入ったはずだから、この二人だけ許されると思う。俺達弟はたぶん庭の松の木に逆さで吊るされるぐらいが優しいほうだ。
週の初めの放課後に行脚することにしたのだが、クッキーを入れるためにバッグを一つ増やして持ってきた。
すぐに気づく友人に余分に作ったのを渡す。
貪り食う友人に眞子さんだけじゃなく六組の女子が俺に対して包囲網を作って来たので一言。
「あげてもいいが確実に顎と腹と二の腕に脂肪がつくほどのカロリーがあるけど欲しい?」
と言ったらサーと波のように引いていった。女子はカロリーに敏感だ。眞子さんはかなり悩んだ後に一枚を半分にして食べる。一口食べて目を見張ったあとに夢中で食べたから美味しかったのだろう。なので一枚のカロリーを教えたら絶望された。それを見て恐怖する女子達。
虚ろな目の眞子さんの横で何枚もクッキーを食べる友人が一族揃っていくら食べても太らない体質を伝えると、教室の角に女子全員に連れて行かれる友人。眞子さん主導でなにかされていたみたいだが喜びの悲鳴を上げていたからつまらない。ただ元具視達が羨ましそうにしていたのはよかった。
放課後、廊下で待っていると湊が綺麗な歩きでやって来る。
長身で細身の湊は男子の制服を着させれば更に女子のファンが増えそうだ。
「待ったかな?」
「いいやさっき来たとこ」
女性は準備がかかるもの、それに湊を待つのは全然苦にならないし。
「いや女子に囲まれてね、抜け出すのに時間がかかっちゃった。モテる女はツラいね」
「いやお前も女だし」
フッと余裕の笑みを浮かべて髪を掻き上げる湊さん。どこぞのモデルだろうか。
今は完全に外向けモードの湊、二人でいるときとは大違いだ。昨晩一箱消費しようかと笑顔で襲ってきたので、ちょっとお説教したときの怒られた子猫のような雰囲気は微塵も見れない。
化けるよな女性って。
「最初は誰から行く?」
「んー、やっぱ一番の被害者の生徒会長からか」
「なら生徒会全員に謝罪でいいんじゃないかな、副会長もみんなの前でいきなり周平に謝られても困るだろうし。でももう少しあとで行った方が全員集まっているかも」
謝罪リストが書いてある紙を見て選ぶ。生徒会長、書記、副会長、上村先輩、調理部先輩達、梅ちゃん、校長、大半は俺の謝罪相手なんだが湊は彼女としてついてくるとのこと。親同伴みたいで少し恥ずかしい。
「じゃあ調理部もあとだな、あそこも人数揃うのもうちょい後だし」
「なら大物から行こうか校長室にGOだね」
俺は校長室を知らないので湊が連れて行ってくれることに。
「それでは失礼いたします」
二人揃ってお辞儀をして退出する。
そしてしばらく廊下を無言で歩いてある程度離れた場所にきてから大きく息を吐いた。
「うわー俺校長の事舐めてたわ。たまに出す格みたいのが本気のときの槍ジジイと同じだよ」
「人が好さそうにしていても、一集団をまとめるだけはあるよね。私と違う人徳で人を引きつけるし」
さっき校長に迷惑をかけた謝罪とお詫びしたのだが、笑顔で迎えてくれたのだけど。体育祭でやり過ぎだった部分を指摘された。そのほとんどは校長、教師、生徒会が裏で動いてくれたから大きな問題が起きなかったことを伝えられる。その時の覇気は凄かった、そしてすぐに若いから悪いこと以外は大いにやれと激励された。
「あ、カロリー激高と言うの忘れてた」
「糖尿病にならないよね?」
後に湊経由でカロリー激高クッキーの催促がきたが俺は病気にしたくないのでローカロリーおやつをたまに進呈することになった。調理部でダイエット系は作るのでそこまで困らないし、なにより校内最高権力者と縁を結べたのは大きかった。
「さてさて次は梅ちゃんだ」
「・・・あれは絶対に周平の仕業でしょう」
んー何を言っているのかな?梅ちゃんの場合は進んで協力してくれたぞ食べ物につられて。職員室に行き我がクラスのミニマムティーチャーの所に行く。
「おや時東君に、穂高さんじゃないないですか。む、怖くないっ!ついに私は穂高慣れしましたよっ」
一人で盛り上がり拳を振り上げる残念なマイティーチャー。そのお姿は体育祭の準備聞中の昼休み、放課後の殆どを二年と三年クラスに餌付けされるいう大任を任されていた。たぶん梅ちゃんいなかったらまとまらなかった可能性は高かった。おかげで俺の作戦は成功したのが梅ちゃんには多大な被害を被ってしまったのだ。
体育祭も調理部や生徒達から餌付けされまくっていた梅ちゃんはまるまると太った子ブタちゃんになってしまった。
湊が顔を逸らす。わかるよ憐れじゃなくてまたその子ブタが可愛いんだよな。ウチのクラスなんか写真を撮って全員が見られるようにネットに上げている。秘匿されてて六組の連中しか見れないけど。
「体育祭でご迷惑をかけたお詫びにクッキーを焼いてきました」
「クッキーっ!」
子ブタちゃんが目の色を変えた。
この人自分の体形が丸くなっても生徒から何か貰って食べているんだよな。体育祭のせいで上げる生徒が格段に増えたせいで食べる量が増えても全然気にしてないし、原因を作った俺としては結構心配。ほら近くの先生達がこれ以上ペットに餌をやるのは止めてくれませんかという顔をしているよ。
「ちょうどお腹が減ってきたところなんですっ。くださいっ、糖分をっ」
俺が持っているクッキーが入った袋を椅子に座ったまま取ろうとする子ブタ。ウキームキーと貴方は一応教師ですよね。なに外見子ブタ中身モンキーになっているの。
「ウチにまだ空き部屋あるから・・・」
こらこら飼う算段を立てるな湊よ。それは彼氏が許しません。だって世話するの俺になるもの。
しょうがないちょっと梅ちゃんを絶望させてこの場は濁して退散だ。
「このクッキー、一枚食べるとお腹に肉が付き、二枚食べると二の腕に直垂が、三枚食べると顎下にもう一つ顎が出来ますが食べます?」
周囲の教師がなんちゅうものを持ってきてんだと驚愕の顔をしている。
いやこのクッキー編み出した時、ウチの女性陣、湊と母ズが美味しい美味しいと食べたのよ。この三人太りにくい体質なのに見事お肉が付いちゃってダイエットメニューを考える羽目になったいわくつきのものなのだ。湊でも一日二枚が限度、それ以上は運動するか食事の量を減らさなくてはいけない。別名悪魔の誘惑クッキーと言われている。
「ん?ああこれですか」
子ブタ・・・いや梅ちゃんは自分のプニプニボディを指で押す。
「大丈夫ですよ。もう少し大きくなったら勝手に元の体形に戻りますから、だから早くそのクッキーをください」
「「「は?」」」
何か変なことを言ったぞこの食欲の塊。俺と湊だけじゃなくて教師の特に女性の方が謎の言葉を聞いたよう顔していらっしゃる。
「私太りにくいんですけどある一定以上食べると太り始めて、そしてある一定まで太ったら勝手に痩せていくんですよね」
ナニヲイッテイルノカナ?
「たぶんそのクッキーを十枚食べれば今週中には痩せていくと思うので早くくださいっ」
うん、よくわからないけど五枚入りを二つ進呈、すぐに夢中になって食べ始める梅ちゃんに断りを入れて職員室を退出する。
「可愛いペットだと思っていたら頭部に無数の線が入ってグパァと開かれた気分・・・」
湊がかなりの精神的ダメージを負ってしまった。湊も体形維持にはそれなりに気を使っているから梅ちゃんの言葉はザ〇かデ〇くらい即死魔法に近いものがあったのだろう。だって女教師の方達はレベル5デ〇くらって死んでいたもの。
恐ろしや我が担任梅ちゃん先生よ。
ーーーーーーー
眞子「友人君が恨めしい」
友人「何故かクッキー食べただけで女子にイタズラされた(泣)」
周平「たまに作って持ってこよう」
湊「私以外の女子に刺されるよ」
謎の生物、梅ちゃん先生。
筆者が書いているんですけど出てくるたびに何か付加されていっているような・・・(;・ω・)
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