第60話この二人くっつくかもしれないぜ


 眞子視点


 あの後、槍ジジイことお爺さんの圧倒的勝利で模擬試合は終わった。子供たちはお爺さんの強さに大興奮。お爺さんは子供達に称賛の声を掛けられて満足そうだった。


「先を目指したい連中はジジイの動きは見たな?あれが武を学ぶ者の道の一つだ。理解出来なかったとしてもいい今は見れたことが大切だからな」


 秋夜姉さんの言葉に何人かの子供たちの表情は変化していた。

 暴君の人は一石二鳥じゃなく何鳥獲ったんだろうか。


 その後はフルーツ食べたことで子供教室もそのまま終了。ただしお爺さんは何人かの子供に掴まって追加で教えることになった。


「ジジイは自己満足で教えていたのが追加で増えるのは嫌だろうが、技は伝えていかんともったいないからな。教室の開催も増やすぞ。子供相手にはふざけたことは出来んからなあの糞ジジイはくっくっくっ」


 十鳥は取ったんじゃないかなと思う。


 子供教室が終わった後、私達は母屋に移動して夕食の準備に入った。

 今回は私と湊ちゃんも周平君と調理することに。さすがに女子が何もしないのは後ろめたかったのもある。

 秋夜姉さんが大量に注文していたお魚を料理することになった。

 私は揚げ物系を、湊ちゃんはお刺身を作り、周平君は煮つけやご飯ものを、正直調理スピードが周平君についていけなかった。鯛めしってそんな簡単に家で作れるものなの?あとデザートデザートとか言いながらアロエを庭から取ってきてアロエヨーグルトを作るのは止めて。出来る彼氏いいでしょうと胸を張るのはいいから湊ちゃん。


 出来上がったのはお魚のフルコース。初日がお肉系が多かったのに今回は一切無し。ちなみに秋夜姉さんは一切手伝わずに座敷でテレビを見ながらお酒を飲んでいた。

 お爺ちゃんは子供を迎えに来た親御さんに誘われて外に飲みにでかけたらしい。秋夜姉さんが言うには子供いる場所で食べるご飯はお爺さんには真面目にしないといけないからかなりの苦行ということだ。


 新鮮なお魚は臭みが無くてどれも美味しい。湊ちゃんお造りはお店出せるんじゃないかと思うぐらいに綺麗に盛り付けてあった。もの凄い勢いで酒の肴に秋夜姉さんがお刺身を食べていく。

 湊ちゃんは周平君の横に陣取りときおり食べさせたりしていた。まだ甘々モードは抜けていないみたい。

 私はお刺身を食べたり、自分が上げた天ぷらを食べて自己評価したり、煮付けと鯛めしを食べて敗北感を味わったりして食べた。


「「「「ごちそうさまでした」」」」


 四人がお腹いっぱいになったところで夕食はおしまいになった。


「あとアロエヨーグルトがあるから適当に食べてくれ」


 テーブルの上を何度か台所と往復して片付けながら周平君が小さな器に入れたデザートを持ってくる。

 この人性別を間違えて生まれたんじゃないかな。


「俺は部屋で食べさせてもらうわ」


 秋夜姉さんは一つ取って出ていく。


「スマホ弄ってたからたぶん彼氏さんに電話するんだよ。やーね色ボケすると」

「湊ちゃんも片付けする周平君の後ろ付いていっているのは十分色ボケだと思うよ」


 首を傾げる湊ちゃん。そっか恋は自分の行動がわからなくなるんだ。


「湊は片付けを手伝え。今日はいろいろあって眞子さんは疲れただろうゆっくりしていてくれ」

「あ、お言葉に甘えます」


 正直脳を休めたい。美味しいご飯も食べたから体を使うのもおっくうだ。周平君の言葉は素直に嬉しい。


「ちょっと手間かけるけどその馬鹿が起きたらテーブル上に置いてあるのを食べろって伝えて」

「お願いね~」


 そう言って周平君は湊ちゃんを引き連れて部屋を出ていった。

 テーブルの上には一人分に綺麗にまとめられた先ほどの夕食が載っている。


 私はチラリと横を見た。

 そこには意識を失った友人君が横になっていた。


 お爺ちゃんに負けた友人君は疲労で動けなくなったらしく、秋夜姉さんが足首を掴んで母屋まで運ばれる。その途中で段差にゴンゴンと頭をぶつけてしまい気絶してしまった。


 そして私達が夕食を食べた今も失神中である。


 お爺さんと闘っている時は格好良かったのに、現在はうなされている普通のチャラそうな男子だ。糞ジジイ金のフンドシを履くんじゃねえとか寝言を言っているけど雨乞い2にお爺さんが参入しているのかな。


 横になっているのに支える枕が無いから首が変な角度になっているせいもあるかもしれない。


「しょうがないな」


 私は近づいて友人君の頭を持ち上げて脚を入れて膝枕をしてあげた。湊ちゃんにしてもらった時に癒されたので友人君にも効果はあるだろう。


 暇なので友人君の顔を見る。それなりに整っていると思う。描くとしたらどちらでもいけそうな顔立ちだ。もう少し真面目にしていれば学校でモテるだろうに、奇行が目立ち過ぎてお友達止まりになっているの聞いたことがある。


「まああんな本性だと知ったらお友達止まりじゃないと思いますけど」


 変な人だ。その本性が生来のものなのか閑名家で育てられたものなのかわからないけど世の中は生きづらいだろう。


「まあ私は友達同盟を結んでますから。湊ちゃん達が見捨てない間は付き合いますよ」


 私も疲れたので少し目を閉じた。



 第三者視点


 眞子が友人に膝枕して少し経った廊下。

 二人が生首で部屋の中を覗いていた。


「あれは付き合っているんじゃねえの?」

「う~ん違うよ。眞子ちゃんはただの親切で膝枕してると思う」

「いやいや普通彼氏以外にするか」

「私も眞子ちゃんの気持ちが完全にわかるわけでないけど、たぶん私が膝枕したから友人君にもしていいと考えたんじゃないかな」

「意味わかんね~」

「女の心は複雑だよ周平」

「それはいつも湊でわかるわ~」

「でも、友人君珍しいよね。人前であんな無防備晒してるの」

「いつもは白目状態で浅い眠りで警戒しているのに熟睡しているもんな。あいつにも春が来るのか」

「私達はゆっくり見守っていこうよ。交際するのもよし、友達のままでもよし」

「そうだな人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られろだったか?」

「そうそう、台所でお茶でもしようか」

「爺さんの羊羹があったよな。それを食べよう」

「さすがに太るよ~」


 生首二人は入り口から消えて忍び足で消えていった。



ーーーーーーーー

さすがに前の回で放置はいけないと思い書きました。

たぶん閑名家の話はこれで終わりかと。


眞子と友人はどうなるんですかね?タイトルは周平と湊のことだけだったのですが、この二人も釣り合っていくのかもしれません。

今はどちらも友達としか思っていませんが(;・ω・)

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