第2話
「あなたは私を弄んだのです。そう言うふうに捉えました。被害者である私がそう言うのだから、そうなのですよ」
彼を呆れてみつめる。
虐めもそうだが、やられた側が虐められたと思えば虐めだと私は思っている。
アルマーはやがて笑い始めた。
「何が楽しいのでしょう」
「君が勘違いしているから」
「勘違い?」
「俺は君を恋人だと思っている。君は弄ばれたと思っている。その場合、貴族というのは上の言うことがすべてだ。つまり俺の言うことが君にとっての全てだよ。君のそれは被害妄想と呼ばれてしまうさ」
――それの何が楽しいのかしら……。仮にそう周りが解釈したとして、それでも浮気した男ということは変わらないのだけど……。
「つまり?」
「君は意外と馬鹿だったんだな……俺が女性を弄んだ事実などない。君は俺の恋人。俺が汚名を着せられることもないんだ。君が何を言ってもね」
「はぁ……」
浮気は汚名ではないのだろうか。ないのだろう。彼の言動はすべてそう言っている。
「じゃあもうどっちでもいいですから、私と別れてくださいますね」
「どうして? 君も分かっただろう、君は俺の恋人。まっとうな関係だ。君が心配することはなにもないよ」
話が通じない。
まさかこんなに訳のわからない男だとは。
立ち位置が違うとこうも話が合わなくなるのだろうか。
「ちょっと、一旦整理させてください」
ここで一方的に別れを突きつけたら、伯爵家に何をされるかわからない。
ならば別の場所に助けを乞うことにしよう。
私は尚も何事かを言っている彼を放って、行動することにした。
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