十二 尋問
取調室で、東条肇課長は早川修係長を椅子に座らせた。手錠は机の手錠固定部に固定されている。
「野村、手錠を出せ」
東条肇課長の指示に従って野村班長は取調室の机に手錠を置いた。
「早川の向いに座れ」
野村班長は早川係長の前に座った。
「手錠をはめて机に固定しろ」
「なんで私が?」
野村班長は自分の手首に手錠をはめて机の手錠固定部に固定した。
「野村。理由はお前がよく知っているだろう」
「わかりません」
「メモリーカードの内容を早川から確認しろ」
東条肇課長はボイスレコーダーを机に置いた。
「そのレコーダーに入っているのは若松の膝にあったメモリーカードのコピーだ。記録を消しても無駄だ。
尋問を始めろ。事実を聞き出すまで、この部屋から出るな」
東条課長は野村班長にそう指示して、その場に待機している二人の制服警察官に、
「飲み水と簡易トイレを持ってきてここに置け」
と指示して取調室を出た。
東条課長は取調室の隣屋に入った。ミラーグラス越しに取調室を見た。
二人の警察官が二人分の水のペットボトルと簡易トイレを二つ持ってきた。水を机の上に置いて、簡易トイレを取り調べ室の机の下に置き、取調室を出た。二人は取調室の外でドアの横に立っている。
東条課長は野村班長と早川係長の声を聞きながら、取調室の様子をミラーグラス越しに見た。
「早川。霧島が話した内容を説明しろ!」
「俺に言わせる気か?野村、お前が一番よく知っているだろう!」
「俺が早川に尋問してるんだ!霧島が話した内容を説明しろ!」
組織犯罪対策部が、捜査第四課の組織犯罪対策課だった当時、野村班長と早川係長は、組織犯罪対策課の霧島課長の部下だった。
早川は説明した。
臼田副総監と若松本部長は、本人たちが犯したスピード違反と駐車違反など交通違反を、何度も霧島に指示して早川係長と野村班長に揉み消させた。
麻薬売買組織はその事実を知って霧島を脅した。組織は霧島を通じて、変態趣味の若松と臼田に女をあてがい、見返りに組織の捜査を遅らせた。
その後も臼田副総監は麻薬捜査を遅らせる見返りに女を斡旋された。
臼田副総監と若松本部長は変態趣味が講じて、霧島を通じて組織から与えられた女を窒息死させた。
組織が臼田副総監と若松本部長に女を斡旋した現場に、霧島課長と野村班長と早川係長がいた。 霧島課長と野村班長と早川係長は、女が自殺した事にして後始末した。
取調室の隣屋で、東条課長は警護の警察官に早川係長と野村班長の逮捕を指示した。
霧島課長を通じて組織から女をあてがわれた臼田副総監と若松本部長は組織犯罪対策部に圧力をかけて、捜査の手を抜くように指示していた。組織犯罪対策部も組織から、何らかの見返りを与えられていたと見るべきだろう・・。
「組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課の課長を呼べ」
まもなく、組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課の課長が隣の取調室に座った。東条課長は霧島が語ったメモリーカードの録音を聞かせた。
「否定も言い訳もしません。上からの指示があれば、従わざるを得ませんでした」
「若松本部長からの指示はいつからだ?」
「組織犯罪対策部ができる前からです」
二〇〇三年四月一日、刑事部捜査第四課、暴力団対策課等に代わり、組織犯罪対策部が設置された。
いったい本庁にまともなヤツはいないのか?ここにいる者たちは信用できない。上司の圧力に負けずに、捜査をできる者を捜そう・・・。
東条課長に、稲妻の如き思いが閃いた。
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