7:ペット行方不明事件の進展

 今は放課後、美憂との恒例のおしゃべりの時間だ。


 「てか、美憂、なんでそんなに詳しいの?」


 何かしらどこからか、情報を仕入れてくるけど、早さにもびっくりだわ。美憂は会うなり早々、ペット行方不明事件について進展があったと教えてくれた。


 「ふふーん、いたるところに網張ってるからね!情報は新鮮なのが売り!あと人脈は大事なのよ~」


 と、美憂はドヤ顔になっていた。


 「まぁ、確かにそうなんだけど」


 言ってることは最もだとは思うけど、美憂は一体どこを目指しているのかと私は苦笑いになってしまった。


 「で、結局何がわかったの?」


 「うーん…まぁわかった?って言えば、わかったというか、眉つばな話しなんだけど…」


 さっきはドヤ顔だったのに、なんだか急に自信無さげになっている。しかも歯切れも悪いし。どうしたんだろう?


 「何?何か言いにくいことなの?」


 「うーん、まぁいいかな?茅乃の嫌いなジャンルの話になっちゃうんだけど…」


 あぁだから歯切れ悪いのか、私は妙に納得した。ホラー系なんだなってわかったから。


 「聞いた話だし、私もなんだか信じられない話なんだけど…でたんだって」


 「でたって…お化け的な?」


 私がそう言うと、コクンと美優は頷いた。私は怪訝な顔になっていたと思う。


 「ちょっとーそんな疑わしい目しないでよ!私だって聞いたことまんま言うだけなんだからー」


 「じゃ詳しく教えてよ。」


 「なんでもね、あるマンションに一人暮らしのOLさんが飼っていたペットの子犬が、化け物に食べられたんだって…」


 …化け物?…何をイッテルノカナ??


 「ちょっと!引かないでよ!!」


 あ、顔に出ちゃったみたい。


 「でも、なんでそんなこと知ってるの?」


 「網張ってるって、言ってたでしょ?うちの親戚の人がたまたまそのOLさんと同じマンションなのよ。で、詳しく言うとね。深夜にすごい悲鳴が聞こえたんだって。それでマンション中の人がびっくりして、そのOLさんの部屋に駆けつけたんだって。そしたらそのOLさん、腰をぬかしてたらしく、立てる状態じゃなかったらしくて、すごい取り乱していたんだって。OLの人が言うには化け物が‥化け物が…って、手が4本ある化け物に飼っている子犬を食べられたって号泣しながら言ってたらしいの。で何人かが部屋中犬を探したんだけど、確かに子犬はいなかったって…」


 …あれ?子犬?化け物の手が4本?なんか今の話にデジャブを感じたんだけど…


「…そうなんだ。」


 一瞬感じたことを話そうかと思ったけど、やめておいた。


 「嘘みたいでしょ?まぁそこに居た人が言うには、そのOLさんお酒飲んでたらしいから酔っ払って、夢でも見たんじゃないかって。ただ犬がいなくなったのは本当みたいで、あちこち探しても見つからなかったって。ただ、その部屋3階でね、子犬は階段降りられないこらしいから、逃げたとしても不思議な話で…そうなると後はやっぱり連れ去りって線になるわけだけど、何にしても余計に謎が深まった事件になっちゃったって感じだわー」


 美憂は机に頬杖をつきながら、溜息を交えて語っていた。


 「うん、ホント不思議な事件だね。わかんないね…」


 なんだろう?何かはわからないけど、何かが引っかかる。


 「もし、仮にだけど本当だったらお手上げだよね。そんなオカルトじゃ、警察も動けないし、まさか身近でこんな化け物が出たなんて話を聞くとは思わなかったよー」


 美憂も言いながら、少し不安そうな顔をしていた。










 そんな話を教室内で茅乃と美憂が話をしていたのだが、壁を挟んだ廊下側で例の転入生が側で聞き耳を立てていた。


二人は小声で


 「聞いたな?」


 「あぁ、割と近くにいるのな。」


 「そうだな、そろそろ尻尾をつかめそうだ。」


 令は表情を引き締めた。


 「可愛い如月さんに目を点けていて正解だったな。」


 玲央はニヤリと笑った。


 「さすが女性に対しては抜かりはないな。」


 令は呆れた顔をしていた。


 「・・・それ褒めてないよね?」


 「どう捉えてもらっても?」


 「はぁ~レイは硬いよなぁ」


 「レオと比べたら誰でも硬いだろう。」


 「うわー可愛い弟に対して冷たくない?」


 「…そうか?事実だろう。あと可愛くはないがな。」


 令は腕を組みながら、真顔で真面目に答えていた。


 「うわ、ひどっ!」


 玲央は、わざとらしくショックを受けているように振る舞っていた。


 「…レオは端正な顔をしているとは思うが、可愛い部類ではないだろう。」


 玲央は、想定外のことを言われて面を食らってしまった。


 「あーうん。いや、そういう事じゃなくて…まぁいいか。」


 玲央は視線をそらしつつ、ちょっと照れた表情をしていた。


 「それはともかく、通信できそうなら、向こうに確認と報告をしておこうか。」


 この意見には玲央も同意して頷いた。


 「そうだな、今の感じなら、ヤツも夜にしか動けないだろうからな。今のうちに報告しときますか、あいつ煩いからな。」


 玲央の頭には、アイスブルーの瞳を持つメガネをかけた、しかめ面の男が脳裏に浮かんでいた。


 「フフ、その割には仲は良さそうだが?」


 「んなわけ、あるか!」


 「まぁいい。時間は有限だ。行こうか。」 


 そして双子だと言われている男女はその場を後にした。

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