第4話

「この家は江里ちゃんの為に建てたものだから、遠慮なく使って。実際の建物の大きさより、室内空間は広くできているからお部屋も沢山あるのよ」

「家電はあちらの世界の物で揃えているから、これまで通り何不自由なく生活できるぞ」

そう言われ、家の中を案内されれば、広々快適空間だった。

そして、台所には冷蔵庫やオーブン、電子レンジ。洗面所には洗濯機、風呂場にはシャワーとバスタブ。トイレは勿論水洗。

電化製品には当然コンセントに繋がれているが、果たしてこの世は電気なる物があるのか聞けば「雰囲気よ!雰囲気」と笑っている。

どのような仕組みで動くかは、取り敢えず詮索しない事にした。


一通り室内を見て終えると、今度は外へと連れて行かれた。

そして家の後ろに立つ大きな木を見上げ、この世界の事を説明してくれた。

「この木は、この世界の中心に立っていてね、世界樹と呼ばれているんだ」


この世は大きく分けて四つの国に分かれていて、種族ごとの国があると言う。

元々は、大きな大陸に沢山の国が散らばっていたこの世界。だが、戦争やら何やらで四分割し、その真ん中の森が此処なのだそうだ。

四大国の一つは竜人の国、アーンバル帝国。

一つは銀狼の国 ヴォールング王国。

そして、その二つの種族以外が住む国が獣人の国 キューオン王国。

最後に人間が住む国、アクアリス王国。

すべての国が友好だとは言わないが、国交はそれなりにあるらしい。


そしてこの世界は剣と魔法の世界。この家の室内の異常な広さも、空間魔法を使っているからだとか。

この世界で生きている竜だ狼だといっている者達は、通常は人の姿をし生活しているのだそうだ。

魔力が大きければ完璧な人型を取れるけど、そうでない者はどこか名残が出てしまうようで、狼でいえばケモ耳や尻尾がのこったり、竜で言えば身体のどこかにうろこが残ったり目の瞳孔が縦に細長かったりと様々。

中には姿は人にはなれないけれど、言葉だけは話すことが出来たりする者もいるらしい。

私にとって、実物と会ったことが無いけど漫画やアニメなんかで馴染みがある。でも、人間だけの世界では無い事がわかりちょっと動揺してしまうわね。

そして、この世界樹を狙っている輩も多いのだとか。

「この樹は私の分身そのものでね、誰かの手に落ちてしまったら大変な事になってしまうんだ」

なので、この樹を中心に半径五百メートルほど神様による結界が張られており、どんなに魔力が強い者でも破られる事は無いのだそうだ。

「この中は何処よりも安全だから、この世界に慣れるまでは此処に居た方がいい。それに、冒険者やら盗賊やらが世界樹を見つけようといまだにここら辺をうろつく時があるからね」


それは怖い・・・・


思わず身を固くすれば、大丈夫だよと優しく抱きしめてくれた。

「江里はもともと魔力も強いから、コツを掴めば悪党も退治できるくらいにはなるよ」

「え?魔力?私に?」

寝耳に水とはこんな事を言うのだろうか・・・・

ついさっきまで生きていた世界では、魔力なんてものは物語かアニメの世界でしかなかった。

それがここに来て自分にはに魔力があるという。


・・・・なにそれ、楽しいじゃん!!


「私にも使えるの?魔法」

期待に胸を膨らませ見上げれば、「勿論!基礎は教えてあげるよ」と言いながらも「あぁ・・・娘が可愛すぎる」とよろけ「ずるいわ!わたくしも抱きしめたい!!」と何やら言い合っているのは綺麗にスルーしたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る